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中国に関する論文

Classic Selection 2009
台頭する中印とインド洋の時代
――21世紀の鍵を握る海洋

2009年3月号

ロバート・D・カプラン アトランティック・マンスリー誌記者

世界の人口の75%が沿岸から200マイル以内の陸地で生活していることを思えば、世界の軍事的未来は遠大な海域で活動する能力をもつ海軍力(と空軍力)によって左右される。しかも、海軍の場合、空・陸軍以上に経済利益、貿易システムを守る上で大きな役割を果たせる。……1890年、アメリカの軍事理論家のアルフレッド・セイヤー・マハンは「海上権力史論」で、「商船を守る海軍力が世界の歴史を形作る大きな要因になる」と指摘したが、現在、中国とインドの海軍戦略家は、マハンの著作をむさぼるように読んでいる。……いまやインドと中国のインド洋をめぐるライバル競争は、あたかも海洋版「グレート・ゲーム」の様相を呈している。

CFRインタビュー
保護主義の台頭と地政学リスクを考える

2009年3月号

ウォルター・ラッセル・ミード 米外交問題評議会アメリカ外交担当シニア・フェロー

「中国のアメリカへのアプローチはより手堅くなり、われわれが世界における目的とみなすものの多くを共有しだしている。しかし、これは『開放的な貿易システムと国際協調は、中国が豊かさと大きな成果を手にする機会をもたらしてくれる』という中国側の認識を前提としている。危機を前にわれわれが門戸を閉ざすか、そうでなくても、『アメリカやフランスは貿易の門戸を閉ざしつつある』と中国が考えるようになれば、これは、ジョージ・ブッシュの路線よりも、はるかに大きな危険を伴う外交的大失策となる。アジアと中国を疎外し、その結果、相手の反発やライバル意識をかき立てるとすれば、その後数十年にわたって世界はその禍根から逃れられなくなる。中国に対して門戸を閉ざすことは、現状においてもっとも大きな危険を伴う選択肢だ」。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

21世紀を制するのは中ロか、欧米か
――権威主義的資本主義国家の復活という虚構

2009年2月号

ダニエル・デューデニー  ジョンズ・ホプキンス大学政治学教授
G・ジョン・アイケンベリー  プリンストン大学教授

ネオコンサーバティブの理論家が提言するように、権威主義国家の復活に対して、リベラルな民主国家が団結して封じ込め、軍事競争、排他的なブロック形成という路線で対抗しても、そうした国々における非自由主義的なトレンドを強化するだけだ。対照的に、地球温暖化、エネルギー安全保障、(感染症などの)疾病などの、世界が共有するグローバルな問題に彼らと協調して取り組んでいけば、権威主義国家が現在のリベラルな秩序に見いだしている価値をさらに高めることができる。つまり、民主主義国家は、相手とのイデオロギー上の違いに注目するのではなく、現実の問題、共有する問題に実務的に協調して取り組んでいくべきなのだ。政治体制ではなく、共有する利益に基づく連帯を模索すれば、反自由主義的な権威主義国家がブロックとしてまとまっていくのを回避することもできる。何よりも、リベラルな民主主義国家は歴史の流れが依然として自らの側にあることを忘れてはならない。

金融危機を前に、世界の多くの国は歴史的な転換点にさしかかりつつある。これまでとは逆に、国の役割が大きく、民間の役割が小さくなる時代へと向かいつつあり、アメリカのグローバルなパワーも、アメリカ流の民主主義の訴求力も弱まりつつある。こうした危機の一方で、バラク・オバマが大統領になり、広く希望が持たれていることは幸運だが、それでも、「歴史の流れ」と「2008年の危機」の双方が、世界をアメリカの一極支配構造から遠ざけていくことは避けられないだろう。今回の金融危機が、世界の中枢がアメリカから離れていくという歴史的な潮流と重なり合っているからだ。中期的には、アメリカの世界における影響力は低下し、中国を中心とする他の諸国がより早いペースで台頭するチャンスを手にすることになる。

CFRコラム
中国の景気刺激策が 今後のアメリカ、
世界経済を左右する
――中国が米国債の購入をやめることはない

2008年12月号

ブラッド・セッツァー 米外交問題評議会(CFR)の地政経済学担当フェロー。

中国による2007年の米国債月間平均購入額が約150億ドルなのに対して、ここ数カ月間、中国は米政府機関債の購入を見合わせつつも、財務省証券の購入規模を大幅に拡大しており、結果的に、月平均の購入額は150億ドルを優に超えていると考えられる。
大枠でとらえれば、中国の財政出動は、国内投資の落ち込みを埋め合わせる効果はあっても、米国債の購入を減少させることにはならないと思う
中国がアメリカからの製品の輸入が増えていない状態で、米国債の購入を突然停止するとすれば、これは恐ろしいシナリオになる……しかし、そのような事態になるとすれば、それは中国の経常黒字が急激に落ち込むか、あるいはドルの購入をやめ、他の通貨を購入し始めた場合だが、どちらにも潜在的なリスクはあっても、ただちに現実になるとは思えない。
アメリカの経常収支の調整が世界の経済成長とともに進んでいくには、(中国など)慢性的な経常黒字を抱える国の需要が大きく増えることが前提になる。新政権は、大規模な経常黒字を恒常的に計上している国の存在は(世界の貿易と経済にとって)問題であるというジョン・メイナード・ケインズの認識を世界に定着させるように試みる必要がある。相手国の経常黒字ゆえに特定国が経常赤字を長期的に抱え込めば、ほぼ確実に金融危機へとつながっていく。このシナリオを回避するには経常黒字国が内需を拡大しなければならない。中国政府が今週初め(2008年11月9日)に発表した財政出動プログラムは、たんなる始まりにすぎない。オバマ政権は、保護主義をもてあそぶのではなく、「グローバルなインバランス」の是正に力を入れていく必要がある。この課題に取り組むための当面の政策は、各国政府、特に経常黒字国による大規模な財政出動を促すことだ。
十分な規模の多国間外貨準備の蓄積がないという問題に関して何の手も打たないとなれば、将来に深刻な問題を残すことになる。この金融危機から抜け出したとき、多くの国が、輸出を重視し、為替レートを管理するために外貨準備を蓄積しようとすれば、現在の金融危機の核心である需要の不均衡がさらに悪化することになるだろう。

グローバルに統合された企業
―― アジアからアメリカへの貿易は停滞する

2008年12月

サミュエル・J・パルミサーノ IBM取締役会長

どこまでグローバル化できるかについての企業の認識が変化した結果、企業の関心は、どのような製品をつくるかよりも、いかにそれを生産するか、どのようなサービスを提供するかよりも、どのようにサービスを提供するかに移っていった。いまやアウトソーシングが一般的になり、企業は自らを、調達、生産、研究、販売、流通などの特定部門が並列するネットワークとみなしている。ここにおける真の技術革新とは、新しい製品を開発し、生産するための創造力だけに左右されるわけではない。いかにサービスを提供し、ビジネスプロセスを統合するか、いかに組織やシステムを管理し、知識を移転するかでその多くが左右されることになる。

メラミンが混入したペットフードや乳製品に始まり、ジエチレングリコールが混入した歯磨き、汚染された透析薬や殺虫剤が混入した餃子などの食品に至るまで、世界各地で汚染された中国製品が見つかっている。今後、中国は食糧その他の消費財の生産をどのように管理して規制していくつもりなのか。国内的にも国際的にも中国政府の動向に関心が集まっている。中国政府は自国の食糧安全基準を擁護しつつも、一方で規制当局の監視体制強化を試みている。一方、汚染食品が国内市場に出回るのを阻止するために日本や香港はアメリカ以上の努力をしており、見習うべき部分も多い。中国からの製品輸出に関わっている多国籍企業は、自分たちが扱っている製品が安全なものかどうかを確認すべきだという声も挙がっている。専門家の多くは、政府の安全基準を地方レベルで徹底していくのが役人の汚職・腐敗ゆえに難しいこと、膨大な規模に達する輸出量ゆえに検査が部分的にならざるを得ないことに加えて、「熾烈な競争を勝ち抜いて生き残るにはルールを破っても仕方がない」という風潮が中国でみられることを汚染問題の背景として指摘している。問題は、いくら検査体制を強化しても100%の安全確保が期待できないことだ。

民主国家連盟か、中ロを含む大国間協調か
 ――ブッシュ後の世界秩序の試金石

2008年11月号

チャールズ・A・クプチャン ジョージタウン大学教授

民主国家が、今後の世界が多極化と政治的多様性に特徴づけられていくことを理解しないままに、民主国家連盟構想を実現しようと試みても、期待するような「歴史の終わり」という局面への道を切り開いていくことはできない。結局は行き止まりに遭遇するだけだ。新しいグローバルな秩序を誕生させるには、ワシントンとヨーロッパは、台頭する権威主義国家への認識を変えるとともに、北京とモスクワも欧米に歩み寄る必要がある。ワシントンは多様な政体から成る多極世界において、辛抱強く、しかも穏やかに行動していくことを学んでいかなければならない。そのためには、地域内の危機に対処できるように地域機構の能力を整備して強化し、世界の新たなパワーバランスを反映するように国連安保理を改革するとともに、また、主要経済国のフォーラムであるG8を、アメリカ、EU、日本、ロシア、中国、インドで構成されるG6とし、大国間協調の枠組みへと変化させていく必要がある。民主国家連盟構想では、解決策にならない。

米中戦略経済対話の継続を

2008年9月号

ヘンリー・M・ポールソン
米財務長官

「意思決定権を持つ指導者との直接交渉ほど関係を深化させるうえで有効な手立てはないし、特に、敬意と友情を重視する中国の場合、そうした高官レベルでの接触が大きな意味を持つ。……中国がアメリカに取って代わるのではないかと心配する声もあるが、それは杞憂というものだ。真に懸念すべきは、北京が重要な改革をしないかもしれないこと、そして、北京が改革の途上で重大な経済的困難に直面するかもしれないことだ。中国経済が大きなトラブルに見舞われれば、アメリカとグローバル経済の安定も脅かされる。……米中戦略経済対話は、グローバル経済の成長を維持する戦略原則から、米中関係を再定義へと向かわせた。(この対話枠組みは)両国の政策立案者に前向きなインセンティブを与え、両国関係の基盤をたんなる協調から共同運営へと進化させ、最終的には純粋なパートナーシップとして開花させていく機会を提供している」

宗教と中国の将来
――宗教と市民社会、経済を考える

2008年9月号

スピーカー:アダム・ユエット・チャウ ロンドン大学社会人類学教授、リチャード・マッドセン カリフォルニア大学社会学教授、ロバート・ウェラー ボストン大学人類学教授、司会:スーザン・R・ウェルド ハーバード大学リサーチ・フェロー

世界各地では宗教が社会に悪影響を及ぼし、民族間の対立意識や地方の不満に火をつけることにもなりかねないが、……台湾では世界の他の地域とは正反対のことが起きている。台湾の宗教は、特定民族間の対立を和らげ、中国本土との懸け橋の役目も果たしている。(R・マッドセン)

 中国では、現地のカルト宗教と地方当局との間で共生関係が生まれつつあり、北京の宗教に関する指令が、地方において文字通りに実施されることはほとんどない。(A・チャウ)

 台湾の場合、宗教的な経験によって民衆レベルでの民主的資源がすでに存在したことが、上からの民主主義を開花させていくうえで貢献した。したがって、中国がこの種の(民主的資源としての)宗教の存在を容認するかどうかが、重要になってくる。だが、それを認めたとしても、民主的な変化が必然になるわけではないだろう。(R・ウェラー)

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