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CFRコラム
中国の景気刺激策が 今後のアメリカ、
世界経済を左右する
――中国が米国債の購入をやめることはない

ブラッド・セッツァー 米外交問題評議会(CFR)の地政経済学担当フェロー。

China’s fiscal stimulus doesn’t necessarily mean that it will stop buying Treasuries

Brad Setser 1997年~2001年の米財務省時代に国際金融構造の改革、国家債務繰り延べ、アメリカの対国際通貨基金(IMF)政策を担当。以後、IMF客員研究員、RGEモニターのシニア・エコノミストを経て、米外交問題評議会(CFR)の地政経済学担当フェロー。

2008年12月号掲載論文

中国による2007年の米国債月間平均購入額が約150億ドルなのに対して、ここ数カ月間、中国は米政府機関債の購入を見合わせつつも、財務省証券の購入規模を大幅に拡大しており、結果的に、月平均の購入額は150億ドルを優に超えていると考えられる。
大枠でとらえれば、中国の財政出動は、国内投資の落ち込みを埋め合わせる効果はあっても、米国債の購入を減少させることにはならないと思う
中国がアメリカからの製品の輸入が増えていない状態で、米国債の購入を突然停止するとすれば、これは恐ろしいシナリオになる……しかし、そのような事態になるとすれば、それは中国の経常黒字が急激に落ち込むか、あるいはドルの購入をやめ、他の通貨を購入し始めた場合だが、どちらにも潜在的なリスクはあっても、ただちに現実になるとは思えない。
アメリカの経常収支の調整が世界の経済成長とともに進んでいくには、(中国など)慢性的な経常黒字を抱える国の需要が大きく増えることが前提になる。新政権は、大規模な経常黒字を恒常的に計上している国の存在は(世界の貿易と経済にとって)問題であるというジョン・メイナード・ケインズの認識を世界に定着させるように試みる必要がある。相手国の経常黒字ゆえに特定国が経常赤字を長期的に抱え込めば、ほぼ確実に金融危機へとつながっていく。このシナリオを回避するには経常黒字国が内需を拡大しなければならない。中国政府が今週初め(2008年11月9日)に発表した財政出動プログラムは、たんなる始まりにすぎない。オバマ政権は、保護主義をもてあそぶのではなく、「グローバルなインバランス」の是正に力を入れていく必要がある。この課題に取り組むための当面の政策は、各国政府、特に経常黒字国による大規模な財政出動を促すことだ。
十分な規模の多国間外貨準備の蓄積がないという問題に関して何の手も打たないとなれば、将来に深刻な問題を残すことになる。この金融危機から抜け出したとき、多くの国が、輸出を重視し、為替レートを管理するために外貨準備を蓄積しようとすれば、現在の金融危機の核心である需要の不均衡がさらに悪化することになるだろう。

  • 中国は景気刺激策の財源をどこから調達するのか
  • 中国が米国債を買い続ける理由
  • グローバルなインバランスを是正せよ

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