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中国に関する論文

北極圏の未来
――北極圏サークルの立ち上げを

2013年6月号

スピーカー オラフル・ラグナル・グリムソン  アイスランド大統領、 プレサイダー スコット・G・ボルガーソン  前外交問題評議会シニア・フェロー

アイスランドの氷河はヨーロッパ最大の規模をもっているが、この氷河の後退は地球温暖化がたんなる理論ではなく、現実に起きていること、それが大きな変化をもたらしていることを物語っている。海面の上昇によって、世界の都市と経済はいずれ大きなダメージを受けると思われる。中国の研究者たちは、・・・グリーンランドや南極の氷床の溶解による海面上昇によって、上海を始めとする多くの都市が水没するというシナリオを想定している。・・・われわれは北極評議会を越えたより大きなプレイヤーを内包するフォーラム、北極圏サークルも立ち上げようと試みている。これは、北極圏諸国だけでなく、アジアやヨーロッパ諸国の科学者、活動家、企業、政治指導者たちが参加するフォーラムだ。

Foreign Affairs Update
北京は近く経済改革に着手する
―― 改革の必要性が障害を克服する

2013年6月号

エバン・A・フェイゲンバーム/シカゴ大学ポールソン研究所副所長
ダミアン・マ/シカゴ大学ポールソン研究所フェロー

「経済改革に踏み切れば、パワフルな既得権益層の抵抗と反発はさけられなくなる。環境汚染問題や土地接収問題を前に民衆の不満が高まりをみせていることも改革を難しくしている。改革は短期的には経済を不安定化させ、社会不安をさらに高める危険を伴うからだ」。多くの専門家がこう考え、中国における経済改革の可能性を否定的にとらえている。だが、90年代末に中国が経済改革を実施していることを思いだすべきだ。朱鎔基が手がけた改革のケースからみても、「政治への信頼性の危機、世界の経済・金融危機に対する脆さへの認識、そして変革の必要性を認識する指導層の存在」という三つの条件が揃えば、中国は大胆な改革に踏み切る可能性があるし、いまやこれらの条件が満たされつつある。習近平と李克強は改革が必要であることをすでに明確に認めている。おそらく、2013年秋の中央委員会第3回総会で改革アジェンダが公表されることになるだろう。

CFR Meeting
習近平の中国にどう対応すべきか

2013年4月号

エリザベス・エコノミー  米外交問題評議会シニア・フェロー、チェン・リ ブルッキングス研究所中国センター リサーチディレクター、エドワード・N・ラトワック 戦略問題国際研究所シニアアソシエート

中国側の言葉、主張、行動を前に、近隣諸国はまとまりつつある。中国の優位をある程度受け入れつつあるかにみえる韓国はこのグループに入っていないが、(日本、フィリピン、インド、ベトナムを含む)他の近隣諸国は、明確に中国の覇権を拒絶し、連帯を組織しつつある。(E・ラトワック)

現指導層が進めている反政治腐敗キャンペーンは、共産党を再生させることが目的だと私はみている。つまり、政治改革を進めるつもりはなく、党を再生するための党内民主化を図っているにすぎない。(E・エコノミー)

中国のリベラル派は習近平のことを新たな鄧小平とみなし、保守派は新たな毛沢東とみている。外国の専門家のなかには、彼のことを中国のゴルバチョフになると予測する者もいる。だが、私の予測は、彼が中国の蒋経国、(つまり、民主化に踏み切る指導者)になることだ。(チェン・リ)

H7N9型インフルエンザの謎とリスク

2013年04月

ヤンゾン・ファン
米外交問題評議会シニア・フェロー
(公衆衛生担当)

現状ではH7N9の人から人への感染のリスクはそれほど高くないかもしれないが、すでにかなりの変異を遂げ、動物から人への感染が起きている。H7N9の感染例3件のうち2件が、2万頭を超える豚の死骸が川から引き上げられた上海で報告されていることに注目する必要がある。豚がインフルエンザを人へと感染させる混合容器の役目を果たすことを考えれば、死亡した豚とH7N9という新型ウイルスの登場を関連づけてとらえてもおかしくはない。すでに死亡した27歳の上海の男性は、豚の販売ブローカーだったと報道されている。さらに、犠牲者の一人には二人の息子がおり、息子二人も急性症状を発症し、すでに一人は死亡している。家族のうちの3人が急性症状を発症するという事態、つまり、人から人への感染が生じている可能性を前に、WHO(世界保健機関)の中国代表は「憂慮すべき事態だ」とコメントしている。

中国が日本との戦争を望まない理由

2013年3月号

アレン・カールソン
コーネル大学准教授

「日本との紛争で自国が敗れ去る」とは北京は考えていないが、「いかに圧倒的な軍事的勝利を収めても、武力行使は副作用が大きすぎる」とみている。武力衝突という事態になれば、経済成長を維持し、国内のナショナリズムの激化を抑えるという、北京にとってきわめて重要な二つの基本的国益に悪影響が出るからだ。いかなる抑止力にも増して、こうした国内的な自制要因ゆえに、習近平が、尖閣をめぐって武力行使を認めることはないだろう。もちろん、北京が「気晴らしの戦争が自分たちの権力を維持する唯一の方法だ」と考える危険もある。だが、戦争によって誰も勝者になれないことを理解すれば、中国は日本に対する瀬戸際作戦を回避するはずだ。

追い込まれた中国共産党
―― 民主改革か革命か

2013年1月号

ヤシェン・フアン マサチューセッツ工科大学教授

これまでのところ、中国が民主体制へと近づいていくのを阻んできたのは、それを求める声(需要)が存在しなかったからではなく、政府がそれに応じなかった(供給しなかった)からだ。今後10年間で、この需給ギャップが埋められていく可能性は十分ある。一人あたりGDPが4000―6000ドルのレベルに達すると、多くの社会は必然的に民主化へと向かうとされるが、すでに中国はこのレベルを超えている。さらに、今後、中国経済がスローダウンしていくのは避けられず、社会紛争がますます多発するようになると考えられる。さらに、中国の政治・経済的未来へのコンフィデンスが低下していくのも避けられなくなり、資本逃避が加速することになる。この流れを食い止めなければ、相当規模の金融危機に行き着く危険もある。政治改革に今着手するか、壊滅的な危機に直面した後にそうするかが、今後、中国政治の非常に重要なポイントになるだろう。

Foreign Affairs Update
中国の経済諜報活動

2013年1月号

ジェームズ・A・ルイス
米戦略国際問題研究所シニアフェロー

中国は、経済諜報活動を、政府系のスパイだけでなく、ビジネスマン、研究者、学生を動員して展開している。そのターゲットには、技術情報はもちろんのこと、企業の契約、合併吸収計画の情報も含まれている。中国だけが経済諜報を行なっているわけではないが、この領域でもっともアクティブな国が中国であるのは間違いない。通信、航空、エネルギー、防衛といった中国の重要産業は、この戦略をうまく追い風にしている。中国が途上国だった当時はこうした国際ルールを無視した行動もある程度は許容できたかもしれない。だが、中国が世界第二位の経済大国となり、軍事的なライバルとなる可能性を秘めている現状では、技術諜報を許容できるはずはない。明確な警告をして報復策をとる必要がある。経済技術諜報という手法が、中国の国際的なリーダーシップと国内の技術開発に悪影響を与えることを北京に理解させる必要がある。

2013年、世界は中国発の数多くの問題に直面していくと考えられる。CFRのアダム・シーガルは、習近平は政治腐敗対策など国内統治領域の改革に前向きな姿勢を取りつつも、現在進められているサイバー空間の国際的ルール形成をめぐって、より閉鎖的で、主権をベースとするインターネットを促進しようと試みており、欧米との対立は避けられないだろうと予測する。エリザベス・エコノミーは、政治腐敗対策をとり、社会格差の問題に対処し、(輸出・投資主導型)経済のリバランシングを試みることを含めて、中国の新体制は多くの国内課題を抱えていると指摘しつつも、近隣諸国と抱えている領有権問題への対応を余儀なくされるとみる。世界は、習近平が「平和的台頭」や「ウィンウィン外交」にコミットしていると信じる根拠が欲しいと思っていると彼女は言う。

一方、ミンシン・ペイは、(いくぶん緩和されてきているとはいえ)とかく評判の悪い一人っ子政策、そして、治安当局が治安を乱した人物を裁判も経ずに勾留し、強制労働を命じることができる「労働教養」政策を廃止するかどうかが、習近平の改革路線の試金石になるとみる。ヤンゾン・ファンも共産党政府の正統性を維持し、国内消費を刺激するために、中国の新指導層は今後、医療保険制度を含む、社会的セーフティネットの構築に力を入れていかざるをえず、その途上で政治改革が不可欠になると予測している。

習近平政権の内憂外患

2012年12月号

ダミアン・マ ユーラシアグループ・中国アナリスト

経済成長の必要性を政治的コンセンサスで支えた胡錦濤と彼の側近たちは、他の新興国でさえもうらやむ経済成長を実現した。だが、その結果、余りに多くを外需に依存する経済、そして経済成長だけを重視するエリート文化を作り上げ、一方で、市民の生活の質を犠牲にしてしまった。そしていまや経済成長は鈍化し、民衆の抗議行動は増え、中間層は中国政府に対する不信感を募らせている。中国のジニ係数は0・5に近づいており、社会が不安定化するといわれる警戒数値の0・4をすでに上回っている。格差の増大だけではない。政治的自由が制限されていることに対する人々の不満も高まっている。いまや中国共産党は、中間層を犠牲にして、経済的機会へのアクセスを独占する政治エリート集団へと変化している。しかも、この2年間に、中国が地域的な強硬策に転じた結果、近隣国との関係も不安定化している。日中関係を含めて、中国が10年をかけて構築した安定した地域環境はいまや崩壊の瀬戸際にある。習近平を待ち受けているのは不満を募らす国内社会、そして、崩壊の瀬戸際にある地域秩序だ。

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