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中国に関する論文

対途上国ワクチン供給の覇者
―― 中国は途上世界の救世主へ

2020年12月号

エイク・フライマン オックスフォード大学博士候補生  ジャスティン・ステビング インペリアル・カレッジ・ロンドン教授

世界保健機関(WHO)は、途上国の重症化リスクがある人々に20億回分のワクチンを提供するイニシアティブを促進しているが、中国とは違って、アメリカは構想への参加を拒否している。実際、世界人口の半数以上が暮らし、国がワクチン接種費用を負担するのが財政的に難しいアジアやアフリカそして中東の新興国では、中国メーカーのワクチンが圧倒的なシェアを握りそうだ。2021年、世界の注目を「健康シルクロード」に向けることで、中国は世界の技術大国かつ公衆衛生の擁護者として自らを「リブランド」しようとしている。これに成功すれば、一流の技術大国という名声に加えて、中国は、途上世界のパートナーとの友好関係を強化し、「グローバルリーダー」の称号への国際的支持を得ることになるだろう。

米台湾戦略の明確化を
―― 有事介入策の表明で対中抑止力を

2020年11月号

リチャード・ハース 米外交問題評議会会長
デビッド・サックス 米外交問題評議会リサーチフェロー

台湾有事にアメリカの介入があるかないか。これを曖昧にするこれまでの戦略では抑止力は形作れない。むしろ、「台湾に対する中国のいかなる武力行使に対しても、ワシントンは対抗措置をとる」と明言すべきだ。「一つの中国政策」から逸脱せず、米中関係へのリスクを最小限に抑えつつ、この戦略見直しを遂行できる。むしろ、有事介入策の表明は、抑止力を高め、米中衝突の危険がもっとも高い台湾海峡での戦争リスクを低下させることで、長期的には米中関係を強化することになる。アメリカが台湾の防衛に駆けつける必要がないようにする最善の方法は、中国にそうする準備ができていると伝えることだ。

米覇権の解体
―― アメリカパワーの衰退と中ロの台頭

2020年10月号

アレクサンダー・クーリー  バーナード・カレッジ教授(政治学) ダニエル・H・ネクソン  ジョージタウン大学外交大学院准教授

中国とロシアの台頭に伴い、「独裁的で非自由主義的プロジェクト」が米主導の「リベラルな国際システム」に対する代替策として浮上している。途上国、さらには多くの先進国でさえ、欧米の援助や支援に依存し続けるのではなく、別のパトロンによる支援を頼ることができる。こうして、アメリカのグローバルリーダーシップは単に後退しているだけではなく、解体しつつある。アメリカの衰退は、循環的というよりも、むしろ、永続的なものだ。軍事費をいかにつぎ込んでも、アメリカの覇権解体を促している流れを止めることはできない。考えるべきは、米覇権の解体がどこまで進むかだ。

民主世界と中国の冷戦
―― 北京との共存はあり得ない

2020年10月号

アーロン・L・フリードバーグ プリンストン大学教授(政治・国際関係)

欧米の期待に反し、政治体制の締め付けを緩め、開放的政策をとるどころか、習近平は国内で異常なまでに残忍で抑圧的な政策をとり、対外的にもより攻撃的な路線をとるようになった。アメリカに代わって世界を主導する経済・技術大国となり、アメリカの東アジアでの優位を切り崩そうとしている。北京は、民主社会の開放性につけ込んで、相手国における対中イメージと政策を特定の方向に向かわせようと画策している。だが、北京は、中国市民を恐れている。自分たちが「社会の安定」と称するものを無理矢理受け入れさせるために大きな努力をし、国内の治安部隊やハイテク監視プログラムに数十億ドルを費やしている。共産党が絶対的な権力をもつ中国が、リベラルな民主世界が強く団結している世界において快適に共存できるとは考え難いし、民主世界が団結を維持できれば、中国が変わるまで、ライバル関係が続くのは避けられないだろう。

迫りくる米中ハイテク冷戦
―― 北京による対抗戦略の全貌

2020年10月号

アダム・シーガル  米外交問題評議会シニアフェロー

ワシントンは、中国ハイテク大手のサプライチェーンからの排除にはじまり、そうした企業との取引禁止、テレコミュニケーションが依存する海底ケーブルの規制にいたるまで、近未来における対中技術戦略のアウトラインをすでに定めている。中国も対抗策を準備し、半導体その他の中核技術の国内開発に取り組んでいる。ハイテク企業を動員し、一帯一路イニシアティブに参加する国々とのつながりを強化し、サイバー空間での産業スパイ活動も続けている。「ハイテク冷戦」の輪郭はすでに明らかだが、この競争から誰が恩恵を受けるのかは、はっきりしない。ドイツ銀行の報告書は、米中ハイテク戦争のコストは今後5年間で3・5兆ドルを上回る規模に達すると試算している。それでも、両国の指導者は、ハイテクを国家安全保障問題とみなすことで、国内の技術開発を最速で進めたいと考えている。

米中対立の本質とは
―― イデオロギー対立を回避せよ

2020年10月号

エルブリッジ・コルビー  元米国防副次官補(戦略・戦力展開担当) ロバート・D・カプラン  外交政策研究所の地政学チェアー

ワシントンの中国批判は的外れではない。アメリカは中国との非常に深刻な競争を展開しており、多くの面で強硬路線をとらざるを得ない状況にある。だが、米中間の問題の根底にイデオロギー対立が存在するわけではない。経済、人口、国土の圧倒的な規模とそれがもたらすパワーゆえに、 たとえ中国が民主国家だったとしても、ワシントンはこの国のことを警戒するはずだ。逆に、これをイデオロギー競争とみなせば、対立の本質を見誤り、壊滅的な結末に直面する恐れがある。中国に対抗する連帯を構築するのさえ難しくなる。大国間競争では、イデオロギー的な一致を求めたり、完全な勝利を主張したりすることなど無意味であり、むしろ、壊滅的事態を招きいれることを理解する必要がある。

一国二制度の終焉
―― 私たちが知る香港の終わり

2020年9月号

ジェーン・ペルレス   前ニューヨーク・タイムズ紙 北京支局長

2019年の混乱を前に、習近平は香港がもつ特有の権利を憂慮するようになった。こうして彼は、香港を中国の主権内の問題と定義することで、アメリカやその同盟国が中国に反対することのコストを引き上げ、現地での抗議行動を封じ込めるための迅速な動きをみせた。6月30日に導入された国家安全法によって、香港は北京のいいなりにならざるを得なくなり、実際、香港の抗議運動は抑え込まれている。分離主義、テロ、破壊・転覆工作、そして「外国パワーとの共謀」は、国家安全法ですべて犯罪と定義されているために、大陸に引き渡されるリスクを冒すことなく、香港の民主活動家が共産党の指令に反対することはいまやほぼ不可能になった。次期米大統領が、中国共産党による世界有数の活気ある社会の乗っ取りという事態を覆すのは容易ではないだろう。

揺らぎ始めたアジアの世紀
―― 米中対立とアジア諸国の選択

2020年8月号

リー・シェンロン  シンガポール共和国首相

アメリカはアジア地域に死活的に重要な利害を有する「レジデントパワー」だが、中国はわれわれの目の前に位置する大国だ。当然、われわれアジア諸国は、米中のいずれか一つを選ぶという選択を迫られることは望んでいない。ワシントンが中国の台頭を封じ込めようとするか、北京がアジアにおける排他的な勢力圏を構築しようとすれば、米中は何十年も続く対立の道を歩み始め、待望久しい「アジアの世紀」の実現は脅かされる。アジアの成功とアジアの世紀の実現は、米中が互いの相違点を克服し、相互信頼を築き、平和的で安定した国際秩序に向けて建設的に取り組めるかどうかに左右される。しかしいまや、米中関係はギクシャクし、アジアの将来と新秩序の行く手には大きな暗雲が立ち込めている。両大国は、特定分野では競争しつつも、ライバル関係で他の分野での協調が抑え込まれないような行動様式を見出す必要がある。

外交的自制をかなぐり捨てた中国
―― 覇権の時を待つ北京

2020年8月号

カート・M・キャンベル  元米国務次官補(東アジア・太平洋担当) ミラ・ラップ=フーパー  外交問題評議会 シニアフェロー(アジア研究)

北京は事実上すべての外交領域で前例のない外交攻勢に出ている。香港(の民主派)を締め上げ、南シナ海の緊張を高める行動をとり、オーストラリアに対する圧力路線をとっているだけではない。インドとの国境紛争で軍事力を行使し、欧米のリベラルな民主主義への批判をさらに強めている。そこに、かつてのような慎重さはない。もちろん、北京は「外交に熱心でない米政権が残したパワーの空白」を利用しているだけかもしれない。しかし、より永続的な外交政策上のシフトが進行中であると信じる理由がある。世界は、中国の自信に満ちた外交政策がどのようなものか、おそらく、その第1幕を目にしつつある。北京はいまや自国がどう受け止められるか、そのイメージのことをかつてのようには気にしていない。おそらく、力の路線をとることで、ソフトパワーの一部を失うとしても、より多くを得られると計算している。・・・

香港の次は台湾か
―― アメリカは北京の思惑にどう対処すべきか

2020年8月号

マイケル・グリーン  ジョージタウン大学外交大学院 教授(アジア研究) エヴァン・メデイロス  ジョージタウン大学外交大学院 教授(アジア研究)

北京が「アジアの将来における・・・自国の立ち位置を新たに定めようとしているときに」、ワシントンは、香港問題を現地情勢だけでとらえる狭いゲームに自らを押し込んではならない。習近平がリスクテイカーで、紛争も辞さず、領有権の主張にこだわりをもっていることは明らかだし、ワシントンは、台湾への余波を考慮した上で、十分に考え抜いた香港問題への対策をとる必要がある。アメリカは(ヨーロッパ同様に)アジア太平洋地域においても地域的覇権国が支配的優位を確立するのを阻止することをこれまで長く目的に掲げてきた。香港の状況は、この目的を維持していくのが急速に難しくなりつつあることを示している。ワシントンは外交的圧力を通じて、そこに中国に反対する国際的連帯が存在することを知らせる必要があるが、過度に危機意識を植え付けるのを避け、北京がアメリカとその同盟諸国の分断作戦に出ないように配慮する必要がある。

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