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アジアに関する論文

平壌という北朝鮮民衆の悪夢

2010年9月号

マーカス・ノーランド ピーターソン国際経済研究所シニア・フェロー

北朝鮮の経済は今後も停滞を続け、人々は食糧不足に苦しみ、2004~2005年以降の反改革路線もおそらくは継続されるだろう。憂鬱な停滞が続くはずだ。平壌は、人々を奈落の底に突き落とすような政策をとりつつも、それでも権力を維持していくだろう。これは北朝鮮の悲劇だ。現在の北朝鮮の体制はとにかく秘密主義だし、民衆を悲惨な目に遭わせるという点では無限大の能力を持っている。・・・だが、北朝鮮に対する金融制裁はそれなりの効果を期待できる。各国の金融機関が自行のイメージが傷つくことを恐れて、北朝鮮との取引を自主的に制限し始めることは過去のケースからも明らかだし、中国政府も金融制裁については、中国の銀行がアメリカ市場へのアクセスを失うことを恐れて、積極的に協力するからだ。今後の鍵を握るのは、制裁とともに、大きな変化をもたらすポテンシャルを秘めている北朝鮮の非公式経済がどうなるかだ。もちろん、北朝鮮政府は、今後も、この国における経済活動の多くを直接的な管理下に置こうと試みるだろう。だが問題は、経済を運営する能力を政府が持っていないこと、人々が食卓に食事を並べるための食糧を提供できないことだ。

新たな核拡散潮流を阻止するには
――北朝鮮、イランよりも、周辺国への核開発の連鎖を封じ込めよ

2010年8月号

グレゴリー・シュルテ 前国際原子力機関・ ウィーン国際機関米政府代表部大使

核拡散を阻止しようとする国際的な試みは、多くの場合、北朝鮮やイランの核の野望を封じ込めることに焦点が合わせられている。だが、このやり方を続けてもおそらくうまくはいかない。制裁や交渉をさらに試みても、北朝鮮やイランの現在の指導者たちの計算を変えることはできないからだ。むしろ、今後、核開発を試みかねない諸国に対する監視と説得を重視し、北朝鮮とイランに対しては、外交、制裁措置を、内からの変革を促すように戦略を再設計する必要がある。認識すべきは、いまや、特定国による核開発だけでなく、多国間による核開発の試みに備えていく必要があることだ。これ以上の核拡散を阻止するには、核施設の有無を突き止めるだけでなく、核開発の動機、核武装の模索の決断を促した計算についても解明を試みなければならない。核兵器を保有することによって得られると一般に考えられている恩恵と価値を引き下げ、新たな核の脅威に直接的にさらされている国が安心できるような安全保障環境を提供すれば、拡散のリスクを低下させることができるだろう。

CFR朝鮮半島タスクフォース・リポート Part2
外からの変革ではなく、北朝鮮の内からの変革を促せ

2010年8月号

共同議長
チャールズ・プリチャード 朝鮮半島経済研究所会長
ジョン・H・ティレリ 元在韓米軍・米韓連合軍最高司令官
ディレクター(リポート執筆者)
スコット・スナイダー 米外交問題評議会非常勤シニア・フェロー

アメリカと韓国は、民主的で市場経済志向の統一された朝鮮半島を実現していくためのそれぞれの責務を特定するための議論を深め、北朝鮮の体制が崩壊した場合に介入が必要になる基準について合意を形作っておかなければならない。両国は北朝鮮の体制、制度、国家破綻というシナリオに対してどのような対応を取り得るかについての政治的協力を模索し、米韓の政治、軍事指導者が協力する「包括的同盟」枠組みを設計する必要がある。・・・アメリカの同盟国であり、朝鮮半島の不安定化への軍事的対応をめぐって後方支援を提供する立場にある日本も、早い段階から協議に参加させる必要がある。・・・一方、朝鮮半島の未来に関する米韓の目的が何であるかに関する明確な了解を基盤に、アメリカは北朝鮮の将来について、・・・中国とのハイレベルでの戦略対話を試みるべきだ。

北朝鮮はなぜチョナン号事件への 関与を否定しているのか

2010年7月号

チャールズ・プリチャード 朝鮮半島経済研究所(KEI)会長

チョナン号沈没事件は、北朝鮮と韓国の同海域で2009年に起きた衝突事件に対する、北朝鮮の直接的な報復攻撃と考えるべきだ。・・・北朝鮮側は報復作戦を命じていた。平壌が事件への関与を否定しているのは、一つには中国との関係をうまく管理していくためだろう。また、国際社会の(不当な)批判の生け贄にされた犠牲者と自己規定することで、ナショナリズムを高揚させる意図もあるかもしれない。この戦術は国内的には成功だった。北朝鮮の後継体制への移行をスムーズにし、国内の連帯を高めるために利用されている部分もある。後継問題をめぐっては、金正日は張成沢を国防委員会副委員長に昇進させ、事実上、北朝鮮のナンバー2にした。これは、金正日が死亡するか、あるいは、表舞台から姿を消した場合に備えて、張成沢が権限を握って後継問題をスムーズに管理していくための短期的措置だが、三男が北朝鮮を支配する第3世代として自らの地位を確立するまで、彼が権力を中・長期的に管理していくことになるのかもしれない。(C・プリチャード)

21世紀は新興市場国の世紀に
― G20、世銀、IMFの未来

2010年7月号

スピーカー
スチュワート・M・パトリック 米外交問題評議会シニアフェロー国際機関およびグローバル統治プログラム責任者
司会
デビッド・E・サンガー  ニューヨーク・タイムズ ワシントン支局長
パネリスト
ホイットニー・デベボイス 元世界銀行 理事
アルビンド・サブラマニアン ピーター・ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー
アントニー・フォン・アットマール 新興市場マネジメントLLC会長兼チーフ・インベストメントオフィサー

最終的には、アメリカ、ヨーロッパ、日本のような、すでに確立されたパワー、中国、インド、ブラジルのような新興大国、さらには新興のミドルパワーの間でタフな取引と交渉が行われ、その結果、新しい秩序が形成されていくことになる(S・パトリック)

G20は新しいG7に至る通過点にすぎない。新しいG7は、アメリカ、EU、日本、BRICs諸国で構成されることになるだろう(アットマール)

CFR朝鮮半島タスクフォース・リポート Part1
北朝鮮に対する巻き返し策を

2010年7月号

共同議長
チャールズ・プリチャード 朝鮮半島経済研究所会長
ジョン・H・ティレリ 元在韓米軍・米韓連合軍最高司令官
ディレクター(リポート執筆者)
スコット・スナイダー 米外交問題評議会非常勤シニア・フェロー

われわれタスクフォースは、アメリカと韓国は、一体感のある同盟の形成に向けた議論を深め、この枠組みができたら、北朝鮮の政治的不安定化に迅速に対応できる態勢を強化するために、日本、中国、ロシアを取り込んで枠組みを拡大させていくことを提言する。朝鮮半島の将来を議論するために、アメリカは中国との戦略対話を試みる必要もある。

これまで北朝鮮は、核実験を含む、アメリカが定義するレッドラインをことごとく公然と越えてきたが、それでも懲罰措置の対象とされることはなかった。・・・残された唯一のレッドラインとは、「北朝鮮がNPTの枠組みに復帰しない限り、非国家アクターによる核テロが起きた場合に、アメリカは北朝鮮のことを主要な容疑者とみなし、アメリカの即時報復攻撃の対象とする」と警告することだ。・・・オバマ政権にとっての課題は、アメリカの警告の信頼性をいかに高めるかにある。

大中国圏の形成と中国の海軍力増強
―― 中国は東半球での覇権を確立しつつある

2010年6月号

ロバート・カプラン アトランティック誌記者

陸上の国境線を安定化させ、画定しつつある中国は、いまや次第に外に目を向け始めている。中国を突き動かしているのは、民衆の生活レベルの持続的改善を支えていくのに必要な、エネルギー資源、金属、戦略的鉱物資源を確保することだ。だが、その結果、モンゴルや極東ロシアに始まり、東南アジア、朝鮮半島までもが中国の影響圏に組み込まれ、いまや大中国圏が形成され始めている。そして、影響圏形成の鍵を握っているのが中国の海軍力だ。北京は、米海軍が東シナ海その他の中国沿海に入るのを阻止するための非対称戦略を遂行するための能力を整備しようとしている。北京は海軍力を用いて、国益を擁護するのに軍事力を使用する必要がないほどに、圧倒的に有利なパワーバランスを作り出したいと考えているようだ。しかし、中国の影響圏の拡大は、インドやロシアとの境界、そして米軍の活動圏と不安定な形で接触するようになる。現状に対するバランスをとっていく上で、今後、「米海軍力の拠点としてのオセアニア」がますます重要になってくるだろう。

アジア諸国の指導者たちは、科学、産業、政府、市民社会へと送り込む優れた人材を育成する場として、世界でトップクラスの大学がもっとも適切な訓練機関であることをすでに理解している。そうした教育機関は、問題を解決し、技術革新を促し、社会をリードしていくのに必要な、思想的な奥行きと建設的・客観的な批判的思考(クリティカル・シンキング)を持つ人材を生み出すことができるからだ。これまでのように、専門知識を与えることばかりを重視し続ければ、広い視野を身につけさせぬまま学校から社会へと学生を送り出してしまう。伝統的な暗記中心の教育法では、社会的創造力を生徒たちに与えられないことをアジア諸国は明確に認識しだした。自分のために考え、議論を体系的に行い、新しい情報や正当な批判に直面した場合には、自分の立場を擁護するか、見直すことを学んでいかせなければならない。これが、21世紀の社会で成功していくための大学教育の基本であることをアジア諸国は強く認識し始めている。

核不拡散と原子力の平和利用を両立させる道はあるか

2010年3月号

チャールズ・ファーガソン 米科学者連盟会長

非核保有国が原子力発電用の原子炉を調達すれば、その分、核不拡散のリスクは高まっていく。原子力発電に切り替えるだけでは、有効な地球温暖化対策とはなり得ないが、原子力発電を新たに試みるに適した国が、厳格な安全基準、管理体制、核不拡散のガイドラインを受け入れるのであれば、核拡散のリスクを伴うとしても、原子力の平和利用を認めざるを得ない。また、核拡散を防ぐには、核能力を獲得することが自国の安全保障問題への解決策だと考えている国の安全保障上の不安を取り除き、核兵器を保有すれば国際関係において大国と同等の立場を手に入れられるとする間違った認識を正していく必要もある。この観点から、国連安保理の常任理事国に日本のような核を保有していない地域大国を迎え入れることも考えるべきだ。国際コミュニティは地域大国が抱く不安を取り除き、核を保有することで得られる過大な名声を剥ぎ取り、原子力エネルギーに非核保有国が抱く不合理な期待を引き下げていくように努力すべきだろう。そうすることで、核廃絶のビジョンを支えていくことができる。

2010年1月13日にハイチのポルトーフランスを直撃した大地震による犠牲者は10~20万人に達し、その災害の復旧には少なくとも100億ドルの資金と、数十年単位の時間が必要になると言われている。クリントン政権で米平和部隊のディレクターを務めたラテンアメリカとカリブ海地域の専門家、マーク・L・シュナイダーは、今回の地震災害を「西半球地域における史上最大の国家災害」と描写し、グローバル規模の支援活動が必要になると強調する。「最初に必要なのは、建物と家で、もう一度すべてをやり直さなれればならない」。ハイチの復興にはおそらく数十年はかかり、その支援にはばく大なコストがかかるが、復興の目的は過去のハイチを再現することではない。それは、新しい教育システム、公共サービス機能を持つ「新しいハイチ」を建設することでなければならない。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティングエディター)

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