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アジアに関する論文

イスラム国のアジアへの拡大

2014年11月号

ジョセフ・リョー・チンヨン ブルッキングズ研究所シニアフェロー(東南アジア研究担当

東南アジア諸国がもっとも警戒しているのは、国内のイスラム教徒がイスラム国のイデオロギーに感化されて中東に渡り、イスラム国の一員として戦い、最終的にその過激思想をアジアに持ち帰ることだ。すでに、世界最大のイスラム教徒人口を抱えるインドネシア政府は、50人以上がシリアとイラクで戦闘に参加していることを確認している。マレーシアからは30―40人がイスラム国に参加しているとみられる。しかも実際の数はこれよりもはるかに多い可能性がある。なぜ彼らはイスラム国に魅了されるのか。一つには、イスラム国の活動に「終末のカリフの国」が誕生するというコーランの予言とのつながりを彼らが見いだしているからだ。「(黒い旗を掲げて戦うとされるイスラムの救世主)イマーム・マフディと(偽の預言者)ダッジャールの間で終末戦争」が起きるという予言に彼らは現実味を感じている。・・・・

論争 北朝鮮の崩壊を歓迎すべきか
―― 半島統一の理論

2014年11月号

ジョン・デルーリー 延世大学助教授
チャンイン・ムーン 延世大学教授
スー・ミ・テリー 元米中央情報局(CIA)上席分析官

スー・ミ・テリーは「「北朝鮮の崩壊を恐れるな―― リスクを上回る半島統一の恩恵に目を向けよ」(2014年7月号)で、朝鮮半島の統一が韓国を経済的・社会的に押しつぶすわけでも、アメリカ、中国、日本に受け入れがたいリスクを作り出すわけでもない」と主張し、「朝鮮半島の統一はドイツ統一以上にコストがかかり、多くの課題を伴うこと」を認めつつも、「北朝鮮の崩壊と半島の統一を回避すべきだと考えるのは間違っている」と結論づけた。これに対してジョン・デルーリーとチャンイン・ムーンは「決して実現することのない北朝鮮崩壊という仮説」に備えるのではなく、むしろ、段階的統合を模索すべきだと批判する。・・・

対ロ経済制裁と日本のジレンマ
――制裁で変化するアジアのパワーバランス

2014年9月号

イーライ・ラトナー /ニューアメリカンセキュリティ研究所シニアフェロー
エリザベス・ローゼンバーグ/ニューアメリカンセキュリティ研究所シニアフェロー

ウクライナ危機がさらに深刻化すれば、ワシントンはモスクワに対する制裁措置をさらに強化するかもしれない。しかし、ロシアを孤立させるための経済制裁は、必要以上に大きなコストをヨーロッパだけでなく、アジアの同盟国にも強いることになる。そうした対ロシア関係のバランスの崩壊にもっとも苦しんでいるのが日本だ。ワシントンは、ウクライナ危機をきっかけにロシアと中国が関係を深めていくことを懸念している。しかし、そのような事態を避けたいのなら、インド、日本、ベトナムなどの中国を潜在的敵対国とみなしている諸国が、ロシアと良好な関係を育んでいけるように配慮すべきだ。いかなる尺度でみても、「弱体化した日本」と「強固な中ロ関係」という組み合わせが、アメリカにとって好ましいものになることはあり得ないのだから。

中韓は戦略的パートナーになれるか
――北朝鮮、日本、アメリカと中韓関係

スコット・スナイダー 米外交問題評議会シニアフェロー

東京では、「韓国はアメリカや日本との関係よりも中国との関係を優先させるのではないか」と考えられている。だが、両国の経済関係の深化をバックに、習近平と朴槿恵が今後の中韓関係をどのように形作っていくつもりなのか、そしてその目的をどこに据えているのかは、依然としてはっきりない。韓国は半島統一に向けた主導権をとりたいと考え、一方、中国は北朝鮮を完全に見捨てるのを躊躇っている。日本の歴史問題をめぐっても、中国は韓国との共闘路線に前向きだが、韓国はむしろ日本との問題はアメリカを交えて対処したいと考えている。・・・

北朝鮮の崩壊を恐れるな
―― リスクを上回る半島統一の恩恵に目を向けよ

2014年7月号

スー・ミ・テリー 元米中央情報局(CIA)上席分析官

朝鮮半島の統一が韓国を経済的・社会的に押しつぶすわけでも、アメリカ、中国、日本に受け入れがたいリスクを作り出すわけでもない。たしかに、朝鮮半島の統一はドイツ統一以上にコストがかかり、多くの課題を伴うだろう。例えば、北の崩壊シナリオとしてもっとも現実味があるのは北朝鮮が内破し、体制が崩れていくことで、この場合、核兵器の安全な管理をいかに確保し、人道的悲劇を回避して大規模な難民が発生しないようにすることが大きな課題となる。だからといって、半島の統一を回避すべきだと考えるのは間違っている。崩壊を経た半島統一の最大の恩恵は、北東アジアにおける主要な不安定化要因が消失することだが、特に韓国は大きな経済的恩恵を手にできる。これまで各国は、平壌が挑発的行動を前にしても、北朝鮮を不安定化させることを懸念して、経済制裁の強化や、対抗策をとることを躊躇ってきたが、今後はそのような配慮をすべきではない。統一の恩恵はリスクやコストを遙かに上回るのだから。

中ロは本当に現状変革国家か? ―― 現状をどうとらえるべきか

2014年6月号

G・ジョン・アイケンベリー プリンストン大学教授

プーチンは局地的な勝利を手にしたかもしれないが、大局的には敗北を喫しつつある。ロシアは台頭しているのではなく、最大規模の後退を余儀なくされている。中国も民主国家に取り囲まれている。中国とロシアがアメリカのリーダーシップに強く反発し、それに対抗する路線をとることでより大きな地域的影響力を確立したいと望んでいるのは事実だろう。しかし、中国とロシアはせいぜいパートタイムのスポイラーに過ぎない。アメリカにときに反発しつつも、基本的には現秩序のロジックを受けいれている。両国とも国益を現秩序に依存しているからだ。たしかに、中ロは現秩序内で自国の立場を強化しようと試みているが、それを別のシステムに置き換えようとはしていない。

民主化から遠ざかる東南アジア
――タイのクーデターだけではない

ジョシュア・クランジック 米外交問題評議会フェロー(東南アジア)

タイが軍政へと逆戻りすることが運命づけられていたわけではない。むしろ、専門家の多くは、1980年代末から2000年代末まで、東南アジア諸国の多くを「途上世界における民主化の優等生」とみなしてきた。だが、この時期以降、東南アジアの民主化プロセスは停滞し、この地域で経済的、戦略的にもっとも重要な諸国が民主化からの逆コースをたどり始めた。この10年で、タイは急速に民主化からの逆コースをたどり、いまや軍事政権がこの国を支配している。マレーシアの民主的制度と文化もこれまでの民主化の流れから逆行している。カンボジアとミャンマーでも、劇的な民主化への期待はいまや色あせつつある。

命運尽きた、タイの政治

2014年6月号

ダンカン・マッカーゴ 英リーズ大学政治学教授

インラック・チナワット首相の解任は予想外の出来事ではない。特定の見方をすれば、近年在任中にポストを追われたこの国の4人目の首相となったに過ぎない。退陣を余儀なくされた首相たちは、すべて同じ政治派閥の出身者たちだ。インラックの兄、タクシン・チナワット元首相は、2006年9月、軍のクーデターで政権の座から追放された。他の2人、サマック・スントラウェートと、ソムチャーイ・ウォンサワットは、2008年に憲法裁判所の判決によって失職している。こうした追放劇がこの国の政治課題の解決に役立つはずはない。その結果、国内の対立を悪化させる正当性を欠いた政権を誕生させ、抗議運動の下地を作ることになる。インラックの失脚も、これと同じ展開をたどるだろう。

CFR Update インド経済とインフラプロジェクト

2014年5月号

ベイナ・シュウ オンラインライター・エディター

新興経済としてのインドの経済パワーは、中国経済同様に、過去数十年間の大きな経済成長によって支えられてきた。しかし、インフラ投資が十分ではない状況が長期的に続いたために、交通システムと送電網がうまく機能しなくなり、いまやインフラの不備が経済を停滞させかねない状況にある。効率に欠けるインドの港湾施設は急拡大する貿易取引にうまく対処できず、信頼性の低い送電網と水道ネットワークも急激に進展する都市化に対応できずにいる。交通・輸送インラフも大きな不備を抱え込んでいる。しかも、規制と政治腐敗がインフラ投資には不可欠な外資を遠ざけている。・・・・多くの制約と障害を克服し、インドはインフラの修復と整備を進めることができるか。これが21世紀のインド経済を大きく左右することになる。

アジア重視戦略の本質

2014年5月号

カート・M・キャンベル
前米国務省国務次官補
(東アジア・太平洋担当)イーライ・ラトナー
新アメリカ安全保障センター シニアフェロー

東シナ海での問題を超えて、日本の安倍晋三首相は、日本を数十年に及ぶ経済停滞から解き放ち、市民に国にもっと新たなプライドと、影響力ある国としての自覚をもたせたいと考えている。安倍首相は、第二次世界大戦の戦犯を含む戦没者を称える靖国神社を2013年末に参拝した。その国際的コストは高かった。日本と韓国の関係はさらに険悪になり、中国は安倍首相が権力ポストにある限り、日本との直接交渉には応じないという路線をさらに固めた。・・・・外交的緊張が高まっているとはいえ、アメリカは、日本がもっと地域的にも世界的にも積極的な安全保障上の役割を担えるように、自衛隊との協力関係を強化していくだろう。実際には完全に合理的な措置であり、むしろもっと早く手をつけてもおかしくなかった「日本憲法の再解釈と軍事的の近代化」を「反動的で軍国主義的だ」と批判する中国のプロパガンダに対抗していくことも必要だ。一方で、アメリカは日本と韓国の関係を改善するためにかなりの政治資源を投入する必要がある。・・・

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