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2025.7.1 Tue

中国とアメリカ
―― どちらが優位を手にするのか

20年後に中国を担うのは、今よりも開放的な時代を青春期に経験している、現在40代の若いエリートたちだ。民主的でも、リベラルでもないかもしれないが、未来の中国はそれでも世界に「権威主義的繁栄」という政治・経済モデルを提供できる国に進化しているかもしれない。(ミッター)

中国の人口危機が本格化し、現在から2030年にかけて生産年齢人口は7000万程度減少し、高齢者人口が1億3000万増えると予測されている。これほど多くの課題に直面している国が、世界の富裕国からの断固とした反対を前にしても、独自の国際秩序を長く維持できるとは考えにくい。(ベックリー)

習近平思想のカギは、マルクス主義と儒教を結びつけていることだ。現代中国はマルクス主義を「魂」とし、素晴らしい中国の伝統文化を「ルーツ」と考えるべきだと習は語っている。(ミッター)

中国の未来を考える
―― 「権威主義的繁栄」の影響力

2025年7月号 ラナ・ミッター ハーバード大学ケネディスクール 米アジア関係チェア

習近平体制は、欧米と対立する一方で、ロシアを助け、国内では監視体制を強化し、少数民族を抑圧してきた。だが、現状から直線的にとらえて中国の将来を考えるのは、今も昔も間違っている。20年後に中国を担うのは、今よりも開放的な時代を青春期に経験している、現在40代の若いエリートたちだ。民主的でも、リベラルでもないかもしれないが、未来の中国はそれでも世界に「権威主義的繁栄」という政治・経済モデルを提供できる国に進化しているかもしれない。地政学的・経済的大国を目指し、その過程で、「中国の本質」を見失わないという、清朝期の二つの願いを実現することに北京は成功するのかもしれない。もちろん、それには条件がある。

秩序の崩壊と再生
―― 生き残るのは米中どちらの秩序か

2022年5月号 マイケル・ベックリー タフツ大学准教授(政治学)

ストレスの多い仕事をし、太った喫煙者の習近平は2030年代初頭には、生きていたとしても80代だ。中国の人口危機が本格化し、現在から2030年にかけて生産年齢人口は7000万程度減少し、高齢者人口が1億3000万増えると予測されている。これほど多くの課題に直面している国が、世界の富裕国からの断固とした反対を前にしても、独自の国際秩序を長く維持できるとは考えにくい。だがアメリカが主導する民主的秩序が維持されるという保証もない。2024年の米大統領選挙で憲政危機が起き、アメリカが国内闘争に陥る危険さえある。そうならないとしても、アメリカとその同盟国は立場の違いによって分断されていくかもしれない。よくも悪くも、明らかなことが一つある。それは、中国との競争が新しい国際秩序を形成しつつあることだ。

習近平思想と中国社会
―― マルクス主義と儒教の出会い

2024年4月号 ラナ・ミッター ハーバード大学 ケネディスクール教授

過去1世紀における中国の政治思想家たちは、未来の繁栄のためには、過去と完全に決別する必要があると考えがちだった。初期におけるマルクス主義の思想家たちは、「序列や儀礼、理想化された過去への回帰を重視する儒教思想」を激しく批判した。だが、中国の思想家や市民は、中国の伝統に即したやり方で政治環境の変化に対応することが重要だと、一貫して考えてきたようだ。実際、習近平思想のカギは、マルクス主義と儒教を結びつけていることだ。現代中国はマルクス主義を「魂」とし、素晴らしい中国の伝統文化を「ルーツ」と考えるべきだと習は語っている。中国社会が経済的停滞と没価値状況に苦しんでいるだけに、この、イデオロギーと国家アイデンティティーの再定義は、大きな意味合いをもつことになるかもしれない。

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2025年7月号(2025年7月10日発売)

Contents

  • 「アメリカの世紀」の終わり
    ドナルド・トランプとアメリカパワーの終焉

    ロバート・O・コヘイン、ジョセフ・S・ナイ・ジュニア

  • 米同盟諸国は自立と連帯を
    トランプに屈してはならない

    マルコム・ターンブル

  • 中国の未来を考える
    「権威主義的繁栄」の影響力

    ラナ・ミッター

  • 中東での壮大なパワーゲーム
    核合意とイスラエル覇権の間

    バリ・ナスル

  • イラン・イスラエル紛争のエスカレーションリスク
    ドキュメント(6/13/2025)

    ダニエル・シャピロ

  • トランプと金正恩
    同盟国は悪辣な米朝取引に備えよ

    ビクター・チャ

  • 朝鮮半島のデタントを実現するには
    変化した北朝鮮にどう向き合うか

    ジョン・デルーリ

  • それでも、ドルの覇権は続く
    他に選択肢はない

    エスワール・プラサド

他全11本掲載

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