Dedraw Studio / Shutterstock.com

2024.3.28 Thu

何が人々の世界観を左右するのか
―― 文化と民主主義の未来

民主国家と独裁国家の戦いの結末は文化に大きく左右される。人々が世界をどうとらえるかは、どのような音楽を聴き、いかなる本を読むか、鑑賞する映画、テレビ、美術品、訪問する美術館、学習する教科書によって形作られるからだ。(ノッセル)

ハンチントンはポスト冷戦時代を、イデオロギー対決の時代から、宗教、歴史、民族、言語など文明対立が世界政治を規定する時代になると予測し、集団をとりまとめる求心力は文化や文明となり、紛争の火種もまた自らの文明に対する認識の高まりや文明の相違から生じるだろうという見解を示した。(ハンチントン)

かつてユーラシア主義の思想家たちは、2世紀に及んだモンゴル支配が現代ロシアに与えた影響を検証し、現代のリーダーもチンギス・ハンにならい、ロシア人を統合して、ヨーロッパとアジアにまたがる新しい帝国を建設すべきだと主張した。秩序が揺れ動くいま、より多くの人が、ヨーロッパの外側に存在した数多くの政治・経済的中枢地域の歴史を学ぶべきタイミングだろう。(ハンセン)

文化と民主主義の未来
―― 何が人々の世界観を左右するのか

2024年4月号 スザンヌ・ノッセル PENアメリカン・センター 会長

戦争、経済競争、政治対立に引き裂かれた世界では、文化の役割などサイドショーにすぎないと思えるかもしれない。だが、民主国家と独裁国家の戦いの結末は文化に大きく左右される。人々が世界をどうとらえるかは、どのような音楽を聴き、いかなる本を読むか、鑑賞する映画、テレビ、美術品、訪問する美術館、学習する教科書によって形作られるからだ。独裁国家は、自分たちの立場を外国に拡散するために、まず、国の物語やイデオロギーを自国の民衆に押しつけるために、テクノロジーを駆使したトップダウン型の努力を続けている。こうした独裁国家の試みにもっとも効果的に対抗できるのは、欧米政府の文化担当官ではない。むしろ、リスクのある環境で日々仕事をしている作家、芸術家、キュレーターたちだ。・・・

文明の衝突
――再現した「西欧」対「反西欧」の対立構図

1993年8月号 サミュエル・P・ハンチントン ハーバード大学政治学教授

ポスト冷戦時代の「X論文」とも評されるこの「文明の衝突」は、ハンチントンがそもそもハーバード大学のオケーショナル・ペーパーとして書き下ろしたものを、「フォーリン・アフェアーズ」に掲載するためにまとめ直し、その後の大反響を受けて『文明の衝突』という著作として加筆出版されたという経緯を持つ。発表と同時に世界各地でマスコミに取り上げられたこの壮大なスケールの論文は、政治家、歴史・政治学者にはじまり、人類学者、社会学者に至るまで広範な分野の専門家を巻き込んでの大論争となった。ハンチントンはポスト冷戦時代を、イデオロギー対決の時代から、宗教、歴史、民族、言語など文明対立が世界政治を規定する時代になると予測し、集団をとりまとめる求心力は文化や文明となり、紛争の火種もまた自らの文明に対する認識の高まりや文明の相違から生じるだろうという見解を示した。

国際関係はいつ動き出したのか
―― ウェストファリア秩序とチンギス秩序

2022年10月号 バレリー・ハンセン イェール大学歴史学教授

ウェストファリア秩序に代弁されるヨーロッパ中心の歴史観が、国際関係の専門家の世界観を依然として形作っている。だがモンゴル帝国以降の「チンギス秩序」をウェストファリアに並ぶ重要性をもつとみなすこともできる。13世紀以降、チンギス・ハンとその後継者たちが統治したモンゴルは、西はハンガリーから東は中国までの大草原地帯に世界有数の地続きの帝国を建設した。かつてユーラシア主義の思想家たちは、2世紀に及んだモンゴル支配が現代ロシアに与えた影響を検証し、現代のリーダーもチンギス・ハンにならい、ロシア人を統合して、ヨーロッパとアジアにまたがる新しい帝国を建設すべきだと主張した。秩序が揺れ動くいま、より多くの人が、ヨーロッパの外側に存在した数多くの政治・経済的中枢地域の歴史を学ぶべきタイミングだろう。・・・

Current Issues

Focal Points アーカイブ

Focal Points

過去のトップページ特集

Focal Points アーカイブ

最新のSubscribers' Only公開論文

論文データベース

本誌最新号紹介

2024年4月号(2024年4月10日発売)

Contents

  • イスラエルの自滅を回避するには
    紛争管理からパレスチナとの共存へ

    アルフ・ベン

  • イスラエルはどこに向かうのか
    ネタニヤフとの決別を

    エフード・バラク

  • プーチンとロシアの未来
    浪費される資源と帝国の野望

    アンドレイ・コレスニコフ

  • ビジネスエリートの地政学
    企業と外交政策

    ジャミ・ミシック、ピーター・オルサグ、セオドア・バンゼル

  • 経済安全保障とラテンアメリカ
    中国に代わるサプライチェーンの確立を

    シャノン・K・オニール

  • 習近平思想と中国社会
    マルクス主義と儒教の出会い

    ラナ・ミッター

  • 文化と民主主義の未来
    何が人々の世界観を左右するのか

    スザンヌ・ノッセル

  • ドイツ経済の試練
    改革を阻む構造的要因

    スダ・デービッド=ウィルプ、ヤコブ・キルケガード

他全9本掲載

Page Top