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経済・金融に関する論文

関税が揺るがした同盟関係
―― サプライチェーンの混乱と米防衛産業の衰退

2026年1月号

シャノン・K・オニール 米外交問題評議会 上席副会長(研究担当)

必要とされているのは、国内価格を押し上げ、外国のパートナーを遠ざける包括関税ではない。ワシントンが、同盟国に配慮し、戦略的産業に焦点を当てた限定的な関税へと移行すれば、重要なサプライチェーンを守り、国家安全保障にとって重要な製造業を促進できるようになる。だが、信頼できる国々への関税を縮小あるいは撤廃し、主要産業を再生させる包括戦略に立ち返らない限り、アメリカの防衛産業は衰退していくだろう。実際、自国の防衛産業の強化を望み、もはや、対米貿易を信用できなくなった同盟諸国は、アメリカ製の兵器購入を躊躇し始めている。

中国経済モデルの致命的欠陥
―― 過剰生産を促す重層的構造

2026年1月号

リジー・C・リー アジア・ソサエティ政策研究所 フェロー

中国経済にとっての本当の問題は、国内需要の弱さや過剰な補助金ではない。それは、異常かつ制御不能に思える過剰生産能力に他ならない。2024年半ば以降、北京も、太陽光発電、バッテリー、EVの「やみくもな拡大」路線について繰り返し警告するようになった。中国の過剰生産は、税制、共産党幹部の登用システム、ビジネスモデルの模倣、銀行の融資など、さまざま要因によって複合的に促されている。企業、金融機関、地方政府関係者がシステム内で合理的に行動し、その結果として過剰生産能力が生じているとすれば、方向転換するにはシステムを変えるしかない。

兵器化された相互依存
―― 経済強制時代をいかに生き抜くか

2025年12月号

ヘンリー・ファレル ジョンズ・ホプキンス大学 アゴラ研究所 教授
エイブラハム・ニューマン ジョージタウン大学外交学院 教授(政治学)

ワシントンは、相互依存状況を、どのように兵器として利用するのが最善かをこれまでも考えてきた。一方、多くの国は、法の支配と同盟国の利益を考慮するアメリカは、ある程度は私利私欲を抑えると考え、リスクがあるとしても、アメリカの技術と金融インフラに依存することを躊躇しなかった。だが、いまやアメリカは経済強制策を乱発し、中国などの他の大国も相互依存状況を兵器化するようになった。当然、敵対国も同盟国も相互依存を兵器化できる世界における新しい経済安全保障概念が必要とされている。いまや、経済的・技術的統合は、成長のポテンシャルから、脅威へと変化している。

世界貿易の真の再編を
―― 公正貿易同盟の形成を

2025年11月号

ウォーリー・アデエモ 元米財務副長官
ジョシュア・P・ゾファー 元米大統領特別補佐官(経済政策担当)

グローバル貿易システムを再編する必要があると考えている点では、トランプ大統領は正しいが、関税を用いた現在のアプローチでは、それで治そうとしている病以上に、深刻な事態を引き起こす恐れがある。必要なのは、ルールに基づく公正な貿易、アメリカの競争力を強化するグローバルな協調に基づく新しい貿易システムだ。中国に象徴される不公正な貿易慣行と歪んだ競争を問題解決のターゲットに据えた、「公正貿易のための自由貿易同盟」を立ち上げるべきだろう。いまなら、次の大きな貿易再編の主導権をワシントンがとって、世界経済を自由貿易の恩恵を開花させるシステムへと導けるかもしれない。

新しい経済地理学
―― ポストアメリカ世界の荒涼たる現実

2025年10月号

アダム・S・ポーセン ピーターソン国際経済研究所 所長

トランプの新路線が望ましい再編を促すと考える人もいる。だが、彼の政策を前に、各国の政府と企業が、最終的にニューノーマルを受け入れ、アメリカに利益がもたらされるという見方は、幻想にすぎない。それどころか、トランプの世界では、誰もが苦境に陥るし、アメリカも例外ではない。アメリカに最大の利益をもたらし、同盟国やパートナーに安心と繁栄をもたらしてきたシステムを彼は破壊してしまった。特に、カナダ、日本、メキシコ、韓国、イギリスなど、米経済ともっとも密接に結びつき、これまでのゲームルールを忠実に守ってきた諸国の経済は大きなダメージを受けるだろう。トランプは楽園への道をつくり、カジノを建設した。だが、その駐車場はやがて空っぽになるはずだ。

貿易戦争後の世界
―― システム崩壊からルール再構築へ

2025年9月号

マイケル・B・G・フロマン 米外交問題評議会 会長

今後の世界経済は、第二次世界大戦前のシステムに近づいていくのかもしれない。関税水準がどこに落ち着こうと、現在の貿易戦争は、貿易障壁を大幅に引き上げることになるはずだ。貿易障壁の拡大は成長を鈍化させ、生産性を低下させる。ルールが骨抜きになると、不確実性や摩擦が生じ、不安定化や紛争につながっていくおそれもある。前進するための最良の選択肢は、同じ考えを共有する国家集団による、開かれた、多国間よりも小規模な「複数国間(plurilateral)のネットワーク」を形作ることかもしれない。これらが織りなす重層的な構造があれば、グローバルなルールに基づくシステムがなくても、ルールによって形作られるグローバル経済を実現できるようになる。

アメリカと世界経済の未来
―― 不安と不確実性の時代

2025年8月号

モハメド・エル・エリアン ケンブリッジ大学 クイーンズ・カレッジ学長

経済・財政的にみると、現在のアメリカは、途上国に似た状況にある。不備のある税制で歳入を切実に必要としている途上国のように、多くの輸入品に唐突に高関税を課している。この行動を続ければ、途上国のように資本流出に直面し、対米投資をためらう流れが生じる。ワシントンはグローバル秩序の基盤を揺るがし、しかも、そこには「次の何か」への複雑な移行を誘導できる信頼できる道筋や指標がなく、世界は大いなる不確実性に備えなければならない状況にある。シナリオは二つある。

それでも、ドルの覇権は続く
―― 他に選択肢はない

2025年7月号

エスワール・プラサド ブルッキングス研究所 シニアフェロー

トランプ政権の関税策、そして彼がアメリカの法の支配に与えているダメージによって、2025年の成長見通しだけでなく、外国為替市場におけるドルの強さも脅かされている。1世紀以上にわたって準備通貨として君臨してきたドルも清算の時を迎えつつあるかにみえる。だが、有力な代替基軸通貨が存在しないために、今のところ米ドルがその地位から転落することはなさそうだ。実際、「ドル覇権の崩壊」という見通しは、他の主要通貨がドルに取って代わる機会を生かさなければ、実現しそうにない。他の準備通貨の脆弱性、経済・金融の混乱時における安全な金融資産への大きな需要があることを考えれば、ドル優位の時代の終わりを宣言するのは時期尚早かもしれない。

アメリカなき世界システム
―― 新しい国際統治の形

2025年6月号

ヌゲール・ウッズ オックスフォード大学 教授(グローバル経済統治)

トランプ政権は、アメリカがその形成に深く関わってきた条約や国際機関、経済システムに背を向けつつある。この状況がカオスや紛争につながっていくかは、これまで秩序を支えてきた、欧州や日本を含む、多くの国の行動次第だろう。世界が米主導の制度、条約、同盟から離れて他国が主導するシステムへ移行していく道筋はいくつか存在する。世界銀行などの既存の国際機関でアメリカの役割を代替することもできる。既存の国際機関と同じ機能の一部を果たせる代替システムをみつけることも、協力関係を維持してG9やG12のようなものを形作ることもできる。だが、何もしなければ、これまで以上に危険に満ちた世界で、手段も影響力もなく、狭義の短期的な利益を守るために奔走することになる。

支離滅裂な関税政策
―― 壊滅的な間違い

2025年4月号

チャド・P・ボウン ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー
ダグラス・A・アーウィン ダートマス大学 経済学教授

関税で何でも解決できるとトランプは考えているようだ。しかし、関税が、彼が懸念する課題に対処するための最善の策であることはほとんどない。トランプ政権が指摘する米経済の問題の多くは、国内に病巣がある。貿易相手国を叩きのめしても、こうした根本的な問題の解決につながらないばかりか、米経済に害を及ぼすだけでなく、外国からの恨みや報復を助長し、被害を拡大させるだけだ。トランプ政権がその脅しを実行に移せば、その影響は、トランプが言う「小さな混乱」よりもはるかに破壊的なものになるだろう。

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