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2011年5月号 ビンラディンと中東の民主化運動 ―― 独裁制に対する二つのアプローチ

2011-05-06

ビンラディンと中東の民主化運動
―― 独裁制に対する二つのアプローチ
2011.5.6公開

独裁体制下での貧困と抑圧にアラブの民衆は長く苦しめられてきた。この現実に、イスラム主義への回帰とテロ路線を掲げて台頭したのがオサマ・ビンラディン、そしてアルカイダだった。一方、2011年に入って以降、中東の民衆はより開放的な社会と生活状況の改善を求めて、街頭に繰り出し反体制運動を展開するようになった。つまり、同じ病巣に対する二つの選択肢と二つの目的がそこには存在する。

9・11にはねじれがあった。専門家の多くが指摘するように、アルカイダは「アラブの独裁者を追放するには、そのパトロンであるアメリカをテロで叩くしかない」と判断し、イスラム主義復興のために西洋を敵視する路線をとった。だが、エジプト、チュニジアのアラブの民衆は、平和的なデモを動員することで権力ポストから追い落とせることをすでに立証しているし、そこに西洋を敵視するイデオロギーはない。

多くの専門家が指摘するように、「中東諸国がより開放的な政治システムへと移行していけば、状況に不満を抱く個人は政治制度を通じて問題の改善を求めるようになり、アルカイダのように武器をとって自国の政府やアメリカに対抗していく必要はなくなる」。だが、問題は、反体制運動で独裁者を追放した諸国、現在反体制運動が展開されている諸国で、今後、社会がどのように改革されていくかだ。

人々が民主制度を作り上げ、社会を先へすすめていけるのか。それとも、民主化プロセスはその途上で挫折し、再び、もう一つの選択肢が力を持つことになるのか。5月号に掲載した論文で、ジャック・ゴールドストーンは、今後の展開は考えられているよりも明るくも暗くもないと指摘している。(FAJ)

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