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2022.1.11. Tue

ロシアとウクライナの紛争リスク
―― モスクワの狙いは侵略ではない?

ウクライナの東部国境近くに約9万のロシア兵が集結しているために、「ロシアのウクライナ攻撃が迫っているか、少なくとも今後数カ月以内に侵攻があるのではないか」と懸念されている。だが、モスクワは、かつてない戦力増強を利用して、アメリカを交渉のテーブルにつかせ、より幅広い問題の話し合いに応じさせたいだけなのかもしれない。状況を打開するには、ミンスク合意を見直し、アメリカが全面的に参加する交渉プロセスに変更することが一つの方法だ。実際にモスクワが望んでいるのは、中国重視のバイデン政権がロシアへの関心をもっと高めることなのかもしれない。(ステント)

かつてはロシアとの対話に前向きな姿勢を示していたウクライナのゼレンスキー大統領は、すでにロシアとの妥協を求める路線を放棄し、欧米との協調を模索している。ウクライナとの国境線に部隊を動員しているモスクワはもはや外交の機会は失われたと考えているのかもしれない。しかも、ワシントンが中国との競争に関心と資源をシフトさせたことで、プーチンは「ウクライナはアメリカにとって周辺的な関心事にすぎない」と確信しているかもしれない。モスクワが武力によって現在の均衡をリセットする環境が整いつつある。(キメジ、コフマン)

「NATOゾーンの拡大は受け入れられない」と主張するゴルバチョフ大統領に、ベーカー米国務長官は「われわれも同じ立場だ」と応えた。公開された国務省の会議録によれば、ベーカーはソビエトに対して「NATOの管轄地域、あるいは戦力が東方へと拡大することはない」と明確な保証を与えている。この意味ではNATOを東方に拡大させないという約束は明らかに存在した。ドイツ統一に合意すれば欧米は(NATOの東方拡大を)自制するとモスクワが考えたとしても無理はなかった。しかし、「ワシントンは二枚舌を使ったという点で有罪であり、したがって、モスクワのウクライナにおける最近の行動も正当化される」と考えるのは論理の飛躍がある。・・・・(シフリンソン)

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