Focal Points

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2021.4.26. Mon

グローバルな大国間協調の組織化を
―― 多極世界を安定させるために

アメリカやヨーロッパにおけるポピュリズムや非自由主義への誘惑がそう簡単に下火になることはない。かりに欧米の民主主義が政治対立を克服し、非自由主義を打倒して、経済をリバウンドに向かわせても「多様なイデオロギーをもつ多極化した世界」の到来を阻止することはできない。21世紀の安定を実現するための最良の手段は「19世紀ヨーロッパにおける大国間協調」を世界に広げた、中国、欧州連合(EU)、インド、日本、ロシア、アメリカをメンバーとし、国連の上に位置する「グローバルな大国間協調体制」を立ち上げ、大国の運営委員会を組織することだ。(ハース、クプチャン)

保護主義、ナショナリズム、ポピュリズムがさらに勢いをもち、民主主義は廃れていく。内戦や国家間紛争が頻発して常態化し、大国間のライバル関係も激化する。グローバルな課題に向けた国際協調も不可能になっていく。この描写に違和感を覚えないとすれば、現在の世界がこの方向に向かっているためだろう。但し、戦後秩序をもはや再生できないとしても、世界がシステミックリスクの瀬戸際にあるわけではない。世界が壊滅的な事態に遭遇するというシナリオが不可避でないことはグッドニュースだ。(ハース)

戦後のアメリカの世界関与を促したのは、自由を世界に拡大したい、あるいは国際秩序を構築したいという思いからではなく、国内でリベラルな民主主義を守るための必要性に駆られてのことだった。民主的な統治の価値を信じる現在のアメリカ人にとっての最大の課題も、まさに、国内で機能する民主主義を再建することに他ならない。幸い、国内の民主主義を再建するために、中ロその他の国の人々にアメリカの自由主義思想を受け入れてもらう必要はないし、他国の政治制度を民主体制に変える必要もない。むしろ、1963年にケネディが語ったように、自由主義であれ、非自由主義であれ、「多様性を受け入れる」世界秩序を維持するだけで十分ではないか。(アリソン)

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