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2021.10.11. Mon

異常気象への適応戦略を
―― もはや排出量削減だけでは対処できない

ハリケーンから洪水、干ばつ、山火事、そして土砂崩れに至るまで、気候変動が誘発する異常気象が世界各地で大きな破壊を引き起こしている。温室効果ガスの排出を削減するだけでは、もはや気候変動の悪影響を食い止めることはできない。異常気象が引き起こす災害に備える適応戦略が必要だ。気候変動が人命、家、雇用を奪う段階にすでに入っているし、異常気象災害からの復旧が強いる財政負担の肥大化を抑えるためにも、気候変動適応戦略を策定する必要がある。(ヒル)

二酸化炭素の排出量は増え続けており、今後1世紀で、世界の気温は最低でも4度上昇する軌道にある。温暖化した地球ではより極端な現象が起きるようになる。熱波と干ばつが世界の穀倉地帯の多くを脅かし、市場はボラタイルになり、農産品価格も上昇する。異常気象が引き起こす災害は人間のメンタルヘルスにも悪影響を与える。実際、摂氏54度を上回れば、社会全体が冷静さを失う。もはや排出量をゼロに抑え込むだけでは十分ではない。すでに大気中にある約1兆トンの二酸化炭素を取り除かなければならない(ビクター他)

気候変動に派生する異常気象が引き起こす災害への対応コストは膨れあがり、いまや短期的な緊急対応能力だけでなく、長期的な投資や経済成長も脅かされつつある。しかも、異常気象は1度きりの出来事ではなく、いまや慢性化しており、これを管理していくには、現在の政策決定者の気候変動に対する捉え方とはまったく異なるアプローチが必要になる。すでに気候変動のインパクトを前に、企業は工場を移動させ、ビジネスモデルを見直し、国防総省は、海面水位の上昇が慢性化していることのリスクを認め、今後10年間で海軍基地に対するリスク管理と適応のための計画をまとめている。(フリードマン)

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