Focal Points

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2019.9.3 Tue

香港と天安門の影
―― 繰り返されるエスカレーションの連鎖

香港での抗議行動が続き、住民の行動がさらに怒りに満ちたものへ変化していけば、介入の前提とされる大義と正当化の理屈を北京に与えることになる。民主的理想主義に突き動かされた抗議行動への対処策については、北京は抑圧以外に頼るべきツールをもっていない。1989年の6月4日、鄧小平はついに抑制をかなぐり捨て、天安門のデモ隊を虐殺した部隊の投入を命じた。当時と現在の状況が驚くほど似ているだけに、香港が似たような結末にならないか、いまや憂慮せざるを得ない状況にある。(シェル)

北京の政府機関とプロパガンダ部門は、香港のデモを「テロ活動」と呼び、混乱は香港でカラー(民主化)革命を起こそうとするアメリカの「ブラックハンド」が引き起こしていると主張している。香港を軍事的に弾圧すれば、1989年の天安門事件以上に、中国の国際関係にダメージを与えることを北京は理解している。しかし、必要であれば軍事力の行使も辞さないだろう・・・そうなれば、香港と香港住民だけでなく、中国の世界における立場、国際安全保障にとっても悲劇的な展開となる。(コーエン)

天安門危機で学生たちへの和解的アプローチを提唱した趙紫陽はポストを解任された上、自宅監禁処分とされ、この処分は2005年に彼が死亡するまで続けられた。国内・党内の敵とみなされた趙紫陽は、報道の自由を認め、学生と対話の場をもち、市民団体の活動規制を緩和すべきだと考えていた。だが、中国政府は別の選択をし、結果的に「改革と統制」の間の永続的な矛盾を抱え込んでしまった。政府にとって、天安門事件はいまも忌まわしい前兆を示す教訓であり続けている。(ネイサン)

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