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2017.8.21 Mon
テロ組織はどのように資金を調達しているか
―― なぜ銀行システムの監視は無意味なのか
各国は長年、テロには金がかかるという思い込みゆえに、テロ組織が国際金融システムにアクセスするのを阻止しようと試みてきたが、このアプローチでテロを抑止できた証拠はない。ほとんどのテロは、数百ドル単位のごくわずかなコストでも決行でき、テロ組織の多くは国際金融システムを使うことはない。国際金融システムに焦点を合わせるのは、時間と資金を浪費するだけで、テロの抑止にはつながらない。(ノイマン)
貧困や失業に苦しみ、イスラム教徒が社会の周辺に追いやられているミンダナオ島では、イスラム主義者や共産主義者などの反政府勢力がフィリピン軍と衝突する流血の惨事が数十年にわたって繰り返されてきた。そこには、イスラム主義のイデオロギーやテロ集団を許容する社会的素地が存在した。しかも、中東で軍事的に追い込まれたイスラム国(ISIS)勢力はアジアへ軸足を移そうと試みている。(ヘイダリアン)
イスラム過激派が、イラクのキリスト教徒やヤジディ教徒コミュニティ同様に、エジプトのコプト教徒コミュニティの組織的破壊を進めるのを放置すれば、中東の宗教地図は大きく塗り替えられる。特に、約900万人に達するエジプトのコプト教徒は、中東地域における最大のキリスト教集団、最大の非ムスリム集団だ。イスラム国は、シナイ半島北部の小規模なキリスト教コミュニティをすでに粉砕している。(シーア)
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テロ組織はどのように資金を調達しているか
―― なぜ銀行システムの監視は無意味なのか2017年8月号 ピーター・ノイマン ロンドン大学キングズ・カレッジ教授(安全保障研究)
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ミンダナオ島危機とイスラム国
―― 共通の敵で変化した米比関係2017年8月号 リチャード・ジャバッド・ヘイダリアン デ・ラ・サール大学准教授(政治学)
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エジプトにおけるキリスト教徒の未来
―― ISISによるコプト教徒の民族浄化2017年8月号 ニナ・シーア ハドソン研究所・宗教的自由研究センター ディレクター
2017年8月号
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米欧中関係のパワーシフト
―― 欧中新時代の到来か米欧関係の構図が形骸化しつつある環境では、ヨーロッパにとって、アメリカの優位を脅かす恐れのあるほぼすべての課題をめぐって中国との関係を強化していくことが合理的になる。しかし、欧中同盟が形成されるとしても、それは強固な絆というより、むしろ、政略結婚のようなものだからだ。しかし、ほんの数ヵ月前までは考えられなかった新しい中国とEUの関係が生まれようとしている。
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中国の覇権確立を阻止するには
―― 南シナ海とアメリカの対中抑止策中国による覇権確立がアメリカのアジアにおける最大の脅威シナリオとして浮上してきている。「中国が人工島の建設を続け、あるいはすでに建設した人工島に長距離ミサイルや戦闘機など強力な軍事資産を配置し続けるようなら、アメリカは中立を捨てて、領有権を主張する他の諸国が中国に対抗する能力を獲得することを支援する」と表明すべきだ。
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リークと嘘と中国の権力闘争
―― 暴露の応酬で揺らぐ共産党の未来習が官僚の役割を周辺化し、権力を自らに集中させる一方、王は習の政敵たちを政府腐敗の捜査対象にして失脚させてきた。習と王の関係を悪化させることを意図していると思われる郭文貴の発言の背後には、これまで政治腐敗キャンペーンの主なターゲットにされてきた江沢民派の高官たちが郭に取引を持ちかけた結果ではないかと憶測する声もある。・・・