
2016.12.22 Thu
After Hegemony
―― アメリカ後の国際システム
(2017年1月号プレビュー)
リベラルな国際秩序およびそれを支えるさまざまな原則の存続がいまや疑問視されている。中国やロシアなどの不満を募らす国家は「現在の国際システムは公正さに欠ける」とみているし、世界中の人々が、現秩序が支えてきたグローバル化が伴ったコストに怒りを募らせている。大統領に就任するトランプがアメリカの世界における役割についてどのようなビジョンをもっているのか、正確にはわからないが、少なくとも、現在のようなリベラルな秩序は想定していないようだ。現在のリベラルな秩序を立て直そうとすれば、逆にその解体を加速することになる。(マザー)
トランプはオバマ以上に全面的にオフショアバランシング、つまり、同盟相手へのバーデンシフティングを進めるのではないかと考えられている。トランプは、アメリカのNATOへのコミットメントを低下させ、より取引を重視した同盟関係へと仕切り直し、一方で、東ヨーロッパとシリアについてはロシアの好きにさせると示唆している。先行きを不安に感じているアメリカの同盟諸国に対して、新大統領は同盟諸国を安心させる措置をとっていくべきだが、そのプロセスでリベラルな国際秩序を脅かす必要はない(シェイク)
ドナルド・トランプはTPPに反対し、(アメリカ人の雇用を奪う)中国からの輸入に45%の課税を適用すると公約している。そのようなことをすれば貿易戦争が起き、米経済は深刻なリセッションに陥る。数百万のアメリカの雇用が失われ、日韓を含む同盟諸国の経済もダメージを受ける。安全保障領域でも、日本と韓国に米軍の駐留コストを全額支払うように何度も求め、そうしない限り、米軍部隊の規模を削減していくと語っている。すでにアメリカのコミットメントへの信頼は揺らいでいる。(ホッパー)
-
「リベラルな覇権」後の世界
―― 多元主義的混合型秩序へ2017年1月号 マイケル・マザー ランド・コーポレーション 上席政治学者
-
揺るがされるアメリカの同盟ネットワーク
―― オバマの後退路線からトランプのオフショアバランシングへ2017年1月号 コリ・シェイク フーバー研究所 リサーチフェロー
-
次期米大統領のアジア政策
―― 同盟システムの軽視と単独行動主義2017年1月号 ミラ・ラップ・ホッパー センター・フォー・ニューアメリカンセキュリティー シニアフェロー(アジア・太平洋安全保障プログラム)
2017年1月号から
-
秩序を脅かす最大の脅威は米国内にある
―― 国際公共財を誰が支えるのか「アメリカ、ヨーロッパその他におけるポピュリストの台頭は、最近におけるグローバル化の時代の終わりを意味し、1世紀前にグローバル化の時代が終わった後と同様に、今後、われわれは不穏な時代を迎えることになる」。こう考えるのがいまや一般的になっている。しかし、1世紀前とは大きく違って、いまや不穏な事態に陥るのを防ぐさまざまな国内的、国際的なバッファーがある。
-
TPP離脱ではなく、留保して再検証を
―― アジアの世紀にアメリカがエンゲージするには世界経済の中心が欧米からアジアに移るなかで、TPPがなければ、不透明で差別的なルールがアジアの標準にされ、既存の秩序が覆され、アメリカの通商利益が傷つけられることになる。
-
トランプ・ドクトリンの悪夢
―― 独裁国家は勢いづき、国際秩序は大混乱に陥るトランプ・ドクトリンは、アメリカの安全保障上の核心的利益を大きく傷つける。嘆かわしいことに、国際関係にトランプのアメリカ第1主義が適用され、それが新たなアメリカの外交政策の象徴とされれば、すでに歴史的な分水嶺に立たされているアメリカと世界はさらに困難な状況に直面することになる。