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2016.10.26 Wed
シリア難民をどう支えるか
―― 人道主義モデルから
経済開発モデルへの転換を
欧州連合(EU)の難民対策は、難民を保護し、彼らの人権を守るためではなく、難民危機を前にヨーロッパで台頭する排外主義や極右勢力への対策として考案されている。当然、「できるものなら見て見ぬふりをしたいとEUが考える難民」の権利を支えることにギリシャ政府が政治的インセンティブを見出すはずはない。(シャー)
難民対策の新モデルとは、避難民たちがいつか母国に戻って生活を再建する日がやってくるまで、ホスト国で学び、働き、豊かに暮らせる、持続可能で計測可能な政策のことだ。われわれはシリア難民問題へのこうした新アプローチを提案し、ヨルダン政府がシリア難民に国内の経済特区(SEZs)で働くことを許可すれば、難民たちは雇用、教育の機会を得て、自立的な生活を送るようになり、それによってヨルダン経済も成長できると提言した。(ベッツ、コリアー)
トルコに逃れてきたシリア人の多くは資本とスキルを持っているし、教育も受けている。すでにトルコのあちこちで、「リトルシリア」が誕生している。一方、トルコの政治勢力は国内に多数のシリア人難民がいることに不快感を示し、トルコの民族的統合性が損なわれかねないと憂慮しているが、トルコ社会に「シリアをルーツとするアラビア語のサブカルチャー」が生まれるのはおそらく避けられないだろう。・・・(ジンジャラス)
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難民そしてギリシャの悲劇
―― EUに放置されたギリシャと難民たち2016年9月号 ソニア・シャー 調査ジャーナリスト
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ヨルダンの新しい難民対策モデル
―― 人道主義モデルから経済開発モデルへの転換を2016年7月号 アレクサンダー・ベッツ/オックスフォード大学 難民研究センター ディレクター 、 ポール・コリアー/オックスフォード大学教授(経済、公共政策)
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トルコはシリア難民を社会同化できるのか
―― シリア難民のなにが異質なのか2016年7月号 ライアン・ジンジャラス/米海軍大学院 准教授(国家安全保障)
11月号から
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アメリカにおけるポピュリズムの歴史
―― ポピュリズムと政治的進化トランプはアメリカの無数の白人労働者階級と中間層が心の底に抱える不満と怒りに訴えることに成功したが、そのスローガンが「アメリカを再び偉大な国に」ではなく、「アメリカを再び憎み合う国に」であっても何の違和感もないほどに、否定的なメッセージを撒き散らした。
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米政権の交代で変化する金融政策
―― 金融政策の「政治サイクル」とは何か政府から独立した機関だとはいえ、連邦準備制度理事会も政治を完全に無視することはできない。実際、理事会は、大統領選挙シーズンには政治に大きな関心を寄せる。大統領が変われば、イデオロギーが変化し、新たに一連の政策がとられ、経済は大きな影響を受け、最終的には金融政策も見直さざるを得なくなるからだ。そこには金融政策の「政治的サイクル」が存在する。
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貿易の停滞と海運産業の再編
―― 停止した国際貿易の成長貿易が大きく拡大する時期には貨物運賃が上昇するため、海運会社はより大きく、より高価な船舶を発注する。しかし3―4年経って船が完成するころには経済状況が様変わりしていることも多く、過剰な積載容量を抱え込んで運賃が低下し、拡大路線をすすめた海運会社が破綻することも多い。