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2016.09.07 Wed
アメリカのアジア重視戦略と中国
シルクロード構想は、アメリカのアジア・リバランシング戦略への対抗策として考案された。陸と海の新シルクロードに沿って巨大な経済圏を形成しようとする、一帯一路とも呼ばれるこの構想は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)による資金的裏付けをもち、中国の政治・経済エリートにも支持されている。しかし、この構想は、ロシアのユーラシア経済連合、インドの対外構想と直接的に衝突するし、結局は、アフリカや中東での紛争に引きずり込まれ、中国のパワーを時期尚早に広く薄く拡散させることになるだろう。・・・(ストークス)
オバマは大統領に就任する段階で、アフガニスタンとイラクでの戦争ゆえに、アメリカの経済・戦略利益にとっての中核地域であるアジアへの投資がないがしろにされていることを理解していた。・・・オバマ政権は、イラクでの戦争を終わらせ、アフガニスタンからの撤退を開始しただけでなく、アルカイダに特化した対テロ戦略をとることで、より多くの時間と資源をアジアに振り分けられる環境を作り出した。(ブリムリー、ラトナー)
中国の台頭、アメリカの財政・経済危機を前に、アジアにおける米主導の枠組みの耐久性が疑問視され始め、戦略的リスクヘッジ思考がアジア各国の首都に漂い始めていた。オバマ政権はアジア・リバランシング戦略を表明することで、アメリカの戦略的ファンダメンタルズを再確立したが、もはやそれだけで、平和を維持していけるわけではない。(ラッド)
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中国の新シルクロード構想
―― 現実的な構想か見果てぬ夢か2015年6月号 ジェイコブ・ストークス ニュー・アメリカンセキュリティ研究所フェロー
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論争 アメリカのアジア重視戦略
―― リバランシング路線は価値ある投資になる2013年3月号 ショーン・ブリムリー 前国家安全保障会議戦略立案担当ディレクター イーライ・ラトナー 前米国務省中国デスク・スタッフ
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アジア重視戦略を超えて
―― 米中関係の新しいロードマップ2013年3月号 ケビン・ラッド 前オーストラリア首相
2016年9月号
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日韓の核開発をアメリカは容認すべきか
―― 核の傘から
「フレンドリーな拡散」へ日本や韓国が核武装を考えているとすれば、なぜワシントンが彼らの防衛と安全を保証しなければならないのかという考えが浮上してもおかしくない。一方で、ワシントンが日韓への防衛コミットメントを続けるかどうか迷い始めれば、両国を核武装へと向かわせるかもしれない。
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貿易叩きという歴史的な間違い
―― なぜ真実が見えなくなって
しまったかドナルド・トランプは、「愚かな」交渉人がまとめたひどい貿易合意のせいで、中国、日本、メキシコがアメリカを貿易面で追い込んでいると訴えている。ヒラリー・クリントンでさえ、反対派に歩調を合わせざるを得なくなり、いまやTPPに反対であると明言している。現実には、貿易はアメリカに大きな利益をもたらしている。
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ユダヤ人国家と民主国家を両立させるには
―― 二極化するイスラエルの政治いまや国家アイデンティティーや価値、ユダヤ主義、民主主義をめぐってイスラエルは二分され、ネタニヤフ政権はそのギャップを大きくする行動をとっている。実際、イスラエルの最終目的が「大イスラエル」なら、パレスチナ側にパートナーを見いだす必要はない。