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2016.06.27 Mon
衰退する中間層とポピュリズムの台頭
―― 米大統領選をどう捉えるか
2016年の米大統領選挙の本当のストーリーとは、経済格差が拡大し、多くの人が経済停滞の余波にさらされるなか、アメリカの民主主義がついに問題の是正へと動き出したことに他ならない。有権者の多くは、彼らが「堕落し、自分の利益しか考えない」とみなすエスタブリッシュメントに反発し、政治を純化して欲しいという願いから急進派のアウトサイダーを支持している。(フクヤマ)
ドナルド・トランプとバーニー・サンダースはアメリカ社会のムードとアメリカ人が何を望んでいるかについておおむね適切に理解している。現在のアメリカ人は、終わりのない外国での戦争にうんざりし、格差に苛立ち、ビジネス・政治エリートたちに不信感をもっている。貿易を敵視し、対外介入を嫌がっている。(フォンテーヌ、カプラン)
社会格差の増大に象徴される現在の厄介な経済、社会トレンズが今後も続くようであれば、現代のリベラルな民主社会の安定も、リベラルな民主主義の優位も損なわれていく。技術的進化とグローバル化が中産階級の基盤をさらに蝕み、先進国社会の中産階級の規模が少数派を下回るレベルへと小さくなっていけば、民主主義の未来はどうなるだろうか。(フクヤマ)
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2016年の政治的意味合い
―― アメリカの政治的衰退か刷新か2016年7月号 フランシス・フクヤマ
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トランプ・サンダース効果と次期大統領
―― アメリカの貿易政策と外交はどう変化するか2016年7月号 リチャード・フォンテーヌ/センターフォーアメリカンセキュリティ 会長、ロバート・D・カプラン/センターフォーアメリカンセキュリティ シニアフェロー
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歴史の未来
―― 中間層を支える思想・イデオロギーの構築を2012年2月号 フランシス・フクヤマ/スタンフォード大学シニアフェロー
7月号から
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アメリカはグローバルな軍事関与を控えよ
―― オフショアバランシングで米軍の撤退をイラク、アフガニスタン戦争など、冷戦後のグローバルエンゲージメント戦略が米外交を破綻させたことが誰の目にも明らかである以上、いまやアメリカは「リベラルな覇権」戦略から、オフショアバランシング戦略へのシフトを試みるべきだろう。
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ヨーロッパにおけるポピュリズムの台頭
―― 主流派政党はなぜ力を失ったかヨーロッパでなぜポピュリズムが台頭しているのか。既存政党が政策面で明らかに失敗していることに対する有権者の幻滅もあるし、「自分たちの立場が無視されていると感じていること」への反動もある。難民危機といまも続くユーロ危機がポピュリズムを台頭させる上で大きな役割を果たしたのも事実だ。
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中東におけるロシアの原発戦略
―― 魅力的なモデルと地政学のバランスシリアのバッシャール・アサドを支援することで、中東の地政学に関与しているだけに、ロシアが中東での原子力市場シェアを拡大できるかどうかは、テクノロジーとサービスを安価に提供することだけに左右されるわけではないだろう