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― 欧米におけるポピュリズムの台頭に関する論文

カマラ・ハリスとドナルド・トランプ
―― 中国にとってどちらが好ましいか

2024年9月号

王緝思 北京大学国際戦略研究院 院長
胡然 北京大学国際戦略研究院 研究員
趙建偉 北京大学国際戦略研究院 研究員

中国の戦略家たちは、アメリカの対中政策が今後10年間で変わるという幻想は抱いていない。世論調査結果や中国に関する超党派のコンセンサスがワシントンに存在することから考えても、2024年11月に誰が米大統領に選出されようとも、その対中政策は戦略的競争と封じ込めに重点が置かれ、協力と交流は後回しにされるはずだ。トランプ、ハリス、どちらが大統領になっても、中国にとって厄介で不利益をもたらす相手になる。一方で、大規模な軍事衝突や経済的・社会的な交流の全面的断絶を求めてくることもないだろう。ただ、ワシントンにおける現在の思想のどの部分が最終的に支配的になるのかを、われわれは理解しようとしている。

気候変動とポピュリスト
―― 温暖化対策と文化戦争

2024年9月号

エドアルド・カンパネッラ ハーバード大学ケネディスクール リサーチフェロー
ロバート・Z・ローレンス ハーバード大学ケネディスクール 教授(国際貿易、投資)

ポピュリストの指導者たちは、とにかく地球温暖化対策を目の敵にし、将来の利益よりも現在の満足を優先する人間の本質を利用して、政治的に成功を収めている。米民主党議員の59%が気候変動問題への対応を最優先課題にすべきだと考えているのに対し、共和党議員でそう考えているのは12%にすぎない。政治的主流派のリーダーは、より魅力的な政治戦略、もっと感情的なストーリー、よりボトムアップの参加型政策アプローチを通じて、市民をもっと温暖化対策へ動員し、気候変動に懐疑的な人々が温暖化対策のメリットを受け入れるように、貿易と技術革新を通じて、グリーンテクノロジーのコストを、化石燃料コスト以下に抑え込む必要がある。

フランスは未知の海域へ
―― 政治的混乱の行方

2024年8月号

マティアス・マタイス 米外交問題評議会 シニアフェロー

フランスの極右勢力が勢いを失ったわけではない。非常に高い期待と世論調査の議席予測には届かなかったが、右派の台頭トレンドは続いている。ルペンは「われわれの勝利は先送りされただけだ」と強気の態度を崩してない。より大きな問題は、フランスが政治的に未知の海域に入ろうとしていることだ。現状では、安定した多数派が形成されていないし、左派勢力はマクロン率いる勢力との連立を否定している。そして、マクロンも左派勢力も、極右勢力との連立シナリオを排除している。しかも、フランス政府は、財政規律違反の是正を求める「過剰赤字手続き」を開始したEUと衝突する恐れがある。

国民連合とフランスの未来
―― その本質は変わっていない

2024年8月号

セシル・アルデュイ スタンフォード大学教授(フランス研究)

2011年に国民連合の党首に就任して以来、マリーヌ・ルペンは党をより親しみやすいものに変化せようと努力してきた。より民主的立場をとると約束し、ロシアのプーチン大統領を称賛した過去の発言を撤回し、最近ではイスラエルの擁護者として自らを位置づけた。しかし、だまされてはならない。国民連合はいつもどおり過激だ。立場を穏健化させているように取り繕っているが、いまもモスクワ寄りの立場をとり、欧州連合(EU)を敵視している。そして、彼らが、移民やその子どもたちから権利を奪おうとする差別主義者であることに変わりはない。

トランプにどう向き合うか
―― 同盟国指導者が果たすべき役割

2024年8月号

マルコム・ターンブル 元オーストラリア首相

他国の指導者たち、特に緊密な同盟諸国の指導者たちは、(ホワイトハウスに舞い戻るかもしれない)トランプに、単刀直入に、率直に語りかける機会があるし、そうする責任がある。オーストラリア首相としての私の経験を言えば、他国の指導者の力強く、率直な態度を彼は好まないかもしれない。だが、怒りが収まれば、そうした態度に敬意を払うようになる。多くのいじめっ子と同じく、相手を自分の意のままにできるときは屈服させ、できないときは取引をしようとする。しかし、取引に持ち込むには、まずいじめに立ち向かわなければならない。アメリカの同盟国の指導者たちは、トランプに真実を語りかけることのできる数少ない立場にあることを忘れてはいけない。

右派の台頭とヨーロッパの未来
―― 仏独の政治的混乱と欧州連合

2024年7月号

マティアス・マタイス 米外交問題評議会 シニアフェロー(ヨーロッパ担当)

最近の欧州議会選挙ではリベラル派政党への支持が落ち込み、はっきりとした右傾化がみられたが、それでも、欧州連合の政策に右派が直接的な影響を与える政治連合を形成できるほどの勝利ではなかった。議会では依然として親ヨーロッパの中道勢力が多数派を占めている。むしろ、最大の衝撃はメンバー国の国内政治レベルに認められる。特に独仏で極右政党、中道右派政党が台頭したために、マクロンもショルツも国内政治に足をとられ、ヨーロッパでこれまでのようなリーダーシップを発揮できなくなるかもしれない。ヨーロッパは、今後の統合の方向性について不確実で不安定な時代を迎えるのかもしれない。

ヨーロッパの社会分裂
―― 都市と農村の格差と政治

2024年7月号

マリー・ハイランド 欧州生活労働条件改善財団 リサーチ・オフィサー
マッシミリアーノ・マスケリーニ 欧州生活労働条件改善財団 社会政策ユニット長
ミシェル・ラモン ハーバード大学教授

農村住民は、政策立案はトップダウンで「政府は自分たちのニーズを認識していない」と不満を強めている。この10年で農村と都市部の所得・雇用格差が拡大したこと、さらには、食料品や燃料など多くの必需品価格を上昇させている最近の生活コスト危機も農村部の不満を助長している。これがヨーロッパ各国の社会的結束を弱め、極右ポピュリズムが支持される肥沃な土壌を提供している。農村部住民の要求や必要性に配慮し、意思決定プロセスにこうした住民を参加させる必要がある。農村と都市の分裂を有意義な形で埋めれば、欧米の多くの社会が現在抱えている社会的緊張を和らげる助けになる。

アメリカの新貿易コンセンサス
―― ロバート・ライトハイザーの世界

2024年3月号

ゴードン・H・ハンソン ハーバード大学ケネディスクール 教授(都市政策)

前米通商代表のライトハイザーは、製造業にほぼ神秘的なまでの経済価値をみいだし、貿易赤字だけが貿易協定を評価する唯一の指標だと考えている。問題は、明らかに正しくないものを含めて、彼の見解が米国内で支持を広げていることだ。トランプの「アメリカ第1主義」の威勢のよさを思わせる彼の立場は右派にアピールし、バイデンの産業政策と環境保護路線を受け入れることで左派への訴求力ももっている。だが、ライトハイザーの処方箋が貿易政策の標準とされても、国内の工場を復活させることはできない。むしろ、その過程で国際関係に大きなダメージを与えてしまう。彼にとっては受け入れがたいとしても、アメリカの繁栄の未来は溶鉱炉や組立ラインではなく、サービス業にある。

次期米大統領と欧州
―― なぜ欧州の自立が必要なのか

2024年3月号

アランチャ・ゴンサレス・ラヤ
カミーユ・グランド
カタジナ・ピサルスカ
ナタリー・トッチ
グントラム・ヴォルフ

ヨーロッパの指導者たちは、バイデンなら、大西洋の絆を守り、混乱する大陸と近隣諸国にヨーロッパがより大きな責任を果たすための時間と支援を与えてくれると考えている。だが今後、そうした配慮は彼からも得られないかもしれない。もちろん、トランプ大統領が誕生すれば、2期目には、ヨーロッパが直面する不安定な状況はさらに悪化するかもしれない。だが、安全保障と経済を守るために行動を起こし、具体的な措置を講じることは、ヨーロッパの手に委ねられている。誰がワシントンで政権を担おうと、一貫したパートナーとしてアメリカを頼ることはもはやできないかもしれない。ヨーロッパの指導者たちは自分たちが成長しなければならないこと、つまり、アメリカへの依存度を低下させるべきことを理解している。

自己を見失った超大国
―― 自ら築いた世界に背を向けるのか

2024年2月号

ファリード・ザカリア 国際政治分析者

アメリカがデザインした「ルールに基づく国際秩序」に対する憂慮すべき障害を作り出しているのは、中国でもロシアでもイランでもない。それは、アメリカに他ならない。アメリカが、自国の衰退に対する誇張された不安に駆られて、国際政治における指導的役割から後退すれば、世界で力の空白が生じ、さまざまな国やプレーヤーが混乱に足を踏み入れようとするだろう。すでに、ポスト・アメリカ世界がどのようなものかをわれわれは中東で目の当たりにしている。ヨーロッパとアジアで同じようなことが起こることを想像してほしい。しかも、この場合、地域的国家ではなく、世界の大国が混乱を引き起こし、世界的に大きな衝撃がはしることになる。・・・

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