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ウラジーミル・プーチンに関する論文

もう誰も相手にしない
―― ポスト・アメリカ世界のアメリカ

2025年8月号

コリ・シェイク アメリカン・エンタープライズ研究所 ディレクター(外交・国防政策研究)

国際システムの他のアクターが(特定の言動に)どのように反応し、どのような流れを形作るかを予測することも外交手腕に含まれる。トランプ・チームには、そのような能力が欠落している。ワシントンのパートナーのなかには、友人であるアメリカが正気に戻ることを期待して、様子見をする国もあるかもしれない。しかし、もう元には戻れない。同盟国やパートナーの信頼と信用は修復不能なほどに損なわれている。いまや問うべきは、アメリカパワーの基盤だった米主導の協調的秩序から各国が手を引けばどうなるかにあるのかもしれない。

プーチンのロシアと欧米
―― 永遠の戦争メカニズムを断ち切るには

2025年6月号

アレクサンダー・ガブエフ カーネギー国際平和財団 ロシア・ユーラシアセンター ディレクター

プーチンは「欧米との対立」をロシアの生活を規定する基本原理に据え、すでに「反欧米」はロシアの生活の一部として定着している。いかなる停戦も、この基本原理、国内メカニズムを覆すことはない。それでも、ロシアエリートの多くは、ウクライナでの戦争が戦略的な過ちであることを理解している。彼らが、欧米との関係改善をイメージしやすい環境を今から準備しておけば、プーチン後の権力抗争で、彼ら、プラグマティストが勝利する可能性を高め、欧米とロシアが熱い戦争と冷たい戦争を永遠に繰り返す事態を避けられるかもしれない。実際、そうしない限り、欧米との永遠の対立を政治遺産にしようとするプーチンの試みに手を貸すことになる。

ヨーロッパの核のトリレンマ
―― アメリカ後の抑止力をいかに形成するか

2025年5月号

マーク・S・ベル ミネソタ大学 政治学准教授
ファビアン・R・ホフマン オスロ大学オスロ原子力プロジェクト 博士研究員

欧州安全保障のために、ヨーロッパは政治的意志を固め、防衛予算を増やし、調達プロセスを調整する必要があるが、これに加えて、核の選択肢に関する戦略的トリレンマを克服しなければならない。⑴ロシアに対する信頼できる、効果的な抑止力を形成し、⑵核の先制使用を抑えるような戦略的安定性を確保し、⑶新たな核拡散(核保有国の出現)を阻止しなければならないが、ヨーロッパがこれら三つのすべてを達成することはできない。実際、どれか二つを選択すれば、三つ目は不可能になる。「アメリカ後」のヨーロッパにとって、「もっともましな」対ロ抑止戦略はどうすれば実現できるのか。

プーチンの対欧米戦争は続く
―― ウクライナを越えた戦い

2025年2月号

アンドレア・ケンドール=テイラー 新アメリカ安全保障センター シニアフェロー
マイケル・コフマン カーネギー国際平和財団 シニアフェロー

プーチンの最終目的は、ウクライナではない。ヨーロッパのポスト冷戦秩序を解体・再編し、アメリカを弱体化させ、彼がふさわしいと考える地位と影響力をロシアがもつ新しい国際システムを形作ることが目的だ。ウクライナでの戦闘が終われば、ロシアはより大胆になり、軍事態勢を立て直せば、ヨーロッパの安全保障秩序を再編するための新たな戦いを始めるだろう。すでにプーチンは、欧米との戦いに備えて、ロシアの社会と経済そして外交政策を大きく変化させている。ロシアの問題は、グローバルな問題でもある。隣国に侵攻し、民主主義社会を攻撃し、国際ルールを破りながらも、制裁から逃れがちだったことは、彼のやり方に追随する者を生み出すと考えられるからだ。

いかに戦争を終わらせるか
―― ウクライナのNATO加盟を認めよ

2025年2月号

マイケル・マクフォール 元駐露アメリカ大使

戦争を終わらせるには、ロシアにウクライナの一部領土を与えるのと引き換えに、北大西洋条約機構(NATO)へのウクライナ加盟を実現させる洗練された計画が必要になる。恒久的な平和を生み出すには、このような妥協をするしかない。「勝利しつつある」と考えているプーチンに和平交渉に入るように説得できても、トランプはゼレンスキーも説得しなければならない。これは大きなチャレンジになる。領土奪還を諦めるならば、これらの土地に住む市民も見捨てるのか、それともウクライナ西部への移住を保証するのか、ゼレンスキーは決断しなければならない。そして、トランプ自身、和平交渉を実現するために、ウクライナ支援を維持(さらには拡大)する必要がある。

ロシアの軌道に組み込まれるジョージア
―― ハンガリー化するジョージア

2025年2月号

クリスチャン・カリル ジャーナリスト

12年前に政権党になって以降、「ジョージアの夢」は巧みに国を掌握してきた。かつて首相を務め、同党に大きな影響力をもつビジナ・イヴァニシヴィリは、官僚、司法、法執行部門の事実上すべての主要な役人を、段階的に党に忠実な支持者に置き換えていった。こうして、「ジョージアの夢」は、自分たちの条件で思うままに権力基盤を固め、ついには、欧米の影響力を遮断することを目的とする「外国の代理人」法を成立させ、不正な選挙を実施した。「ジョージアの夢」は、すでにビクトル・オルバン流の国家乗っ取りへ向けた重要な一歩を踏み出し、いまや欧米からロシアへと決定的に軸足を移そうとしている。

ロシアとの交渉を実現するには
―― 経済制裁の強化を

2025年1月号

セオドア・ブンツェル ラザード地政学アドバイザリー マネージング・ディレクター
エリナ・リバコバ ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー(非常勤)

「流れは自分の側にあり、妥協する環境にはない」とモスクワは考えている。つまり、さらに経済圧力をかけなければ、ロシアが2025年にウクライナ戦争の停戦交渉に応じることはないだろう。現状で停戦を急いでも、それは、モスクワがさらに触手を伸ばすための、小休止になるにすぎない。一方、ロシア経済の生命線であるエネルギーからの収益を低下させ、欧米製のデュアルユース製品の輸入を大幅に抑え込めば、ロシアが戦争を継続するのは難しくなり、交渉に応じるインセンティブを高められる。原油価格とインフレ率が低下しているいま、欧米は2022年当時よりもロシアのエネルギー・フローを混乱させる、より積極的な施策をとれるはずだ。

反欧米ブロックへの強硬策を
―― 中露分断策の不毛

2025年1月号

オリアナ・スカイラー・マストロ スタンフォード大学国際問題研究所 センターフェロー

中国、ロシア、イラン、北朝鮮という枢軸メンバー間の相互関係の深さを推定したり、彼らを引き離そうと努力したりするのではなく、ワシントンは、これらを独裁国家のブロックとして扱い、同盟諸国にも同様の対応をとるように働きかけるべきだ。中国を枢軸のリーダーとして扱い、ある枢軸メンバーが好ましくない行動をすれば、(中国を含む)他の枢軸メンバーにもペナルティを課すようにすべきだ。ロシアの戦争努力を支援する中国企業だけに制裁を科すのではなく、アメリカは中国という国を対象に経済制裁を実施する必要がある。そして、ロシアが交渉テーブルに着くまで、制裁は継続すると北京に伝える。もはや代替策は存在しない。

ウクライナ支援を続けるべき理由
―― 何が問われているのか

2024年12月号

ロイド・J・オースティン 米国防長官

プーチンの攻撃を(われわれは)警告として受け止めなければならない。これは、暴君と悪漢が主導する世界、つまり、勢力圏に切り分けられた混沌とした暴力的な世界、いじめっ子が小さな隣人を踏みつける世界、そして侵略者が自由な人々に恐怖の生活を強いる世界の予告なのだ。つまり、私たちは歴史の分岐点にある。プーチンの侵略に今後も断固として立ち向かうのか、それともプーチンの思いのままにさせ、私たちの子や孫たちに、はるかに血なまぐさい危険な世界を生きることを宣告するのか。ウクライナが踏みにじられれば、ヨーロッパ全土がプーチンの影に脅かされることになる。

※このテキストは、キーウのウクライナ外交アカデミーで行われたスピーチからの抜粋。邦訳分はFAJによる翻訳・要約で、米政府の公式テキストではない。

プーチンと一体化したロシア社会
―― 反欧米路線が促したロシアの統合

2024年7月号

タチアナ・スタノバヤ カーネギー国際平和財団 ロシアユーラシア・センター シニアフェロー

プーチンは、ウクライナ戦争へのコミットメントと反欧米の敵対路線については驚くほど均質な政治環境をロシアで作り上げることに成功している。エリートたちも、戦争を支持し、プーチン信奉者の仲間入りを果たすしかない環境にある。「欧米に対抗し、米主導の国際秩序を突き崩す必要がある」というモスクワの主張はロシア社会で広く受け入れられている。財政基盤、ウクライナでの軍事的優位、そして完全な国内統制が維持される限り、ロシア社会が揺らぐことはないだろう。欧米は、「より自信を高め、大胆で過激になったロシア」にどのように関わっていくかという厄介な課題に直面している。

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