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ウクライナ危機に関する論文

パンドラの箱を開けたプーチン
―― 大ロシア主義とロシアの崩壊リスク

2014年4月号

ストローブ・タルボット
ブルッキングス研究所会長

「自分はロシアの子供たちを守る母なるロシアに仕える役目を負っており、国境の外側にいる子供たちも、守らなければならない」。こうした思想に基づく今回のプーチンの行動を、モルドバやカザフスタンのようなロシアの近隣諸国、それもまだNATOに加盟していない諸国は深刻に受け止めている。もう一つの危険は、ロシアナショナリズムを前提とする領土回復主義・民族統一主義が連邦内のロシア系民族が主流でない地域での分離独立運動をさらに高めることになるかもしれないことだ。この場合、ロシア連邦が崩壊する危険が生じる。・・・チュルク語系民族、イスラム文化系の民族など、スラブとは異なる文化圏の中央アジア圏の人々は、ロシアナショナリズムが高揚すれば、疎外感を覚えるだろうし、すでに彼らの多くが政治的イスラムの影響下にある。・・・・

CFR Meeting
ウクライナ危機とロシア
―― プーチンはどう動くか

2014年3月号

◎スピーカー
スティーブ・セスタノビッチ
米外交問題評議会ロシア担当シニアフェロー
アレクサンダー・モティル
米ラトガース大学教授
◎モデレーター
ロバート・マクマホン
エディター CFR・ORG

東部のルハーンシク、ヤヌコビッチの地元のドネツィク、そしてクリミアは、全般的には親ロシアの政治が今後も続くこと望んでいると考えることもできる。だが、ルハーンシク、ドネツィクでもっとも大きな影響力をもつ人物は富豪のリナ・アクメトフ。彼は欧米とのつながりに大きな利益を有している。つまり、この二つの地域の人口の一部は分離独立を望んでいるが、経済エリートたちは分離独立には反対している。・・・クリミアも一般に言われるほど親ロシア的ではない。・・・ウクライナの分裂は起きないだろう。(A・モティル)

ウクライナ経済は昨年の11月の時点ですでに危機的な状態にあったし、その後、3カ月に及んでいる革命が、この国の国債の格付けとGDP(国内総生産)にプラスに作用しているはずはない(すでにS&Pはウクライナのディフォルトリスクを警告している)。政治的打開策だけでなく、経済的解決策を考案する必要がある。(S・セスタノビッチ)

CFR Interview
プーチンの意図とアメリカの対応

2014年3月号

リチャード・ハース
米外交問題評議会会長

プーチンが今後をどう読んでいるのかはっきりしない。ロシア軍によるクリミア掌握という現実を、プーチンは今後の交渉カードにするつもりなのか、それとも、ウクライナ全土への影響力拡大の布石とするつもりなのか。一方で、この曖昧な現状でNATOをウクライナに関与させれば、それこそ、多くの人が懸念する新冷戦という事態に陥っていく。だが、G8サミットをボイコットしたり、国務長官をキエフに派遣したりする以外にも、アメリカにはできることがある。それは、ウクライナのロシアへの経済依存を軽減するためにもアメリカからウクライナへの天然ガス輸出を拡大し、ポーランドなどの近隣諸国への軍事援助を拡大することだ。もちろん、最悪のシナリオにも備えておくべきだが、ロシアの面目を保つ形で部隊をウクライナから撤退させ、EU、アメリカ、IMFがウクライナへの経済援助をロシアとともに実施することへの合意をまとめることを、まだ断念すべき段階ではない。(聞き手はバーナード・ガーズマン コンサルティングエディター@cfr.org)

ウクライナのジレンマ

2014年3月号

エイドリアン・カラトニッキー
アトランティックカウンシル シニアフェロー

プーチンは、ヤヌコビッチ大統領に経済的支援を与えることで、EU(欧州連合)との連合協定の調印を見送らせ、ウクライナにおけるロシアの影響力を取り戻そうとした。だが、プーチンの意向に応じたヤヌコビッチにウクライナ市民は強く反発し、これが大規模な反政府運動へとつながっていった。いまやウクライナは「内戦に陥りかねない危機的な状況にある」。・・・ウクライナが直面しているのは、オレンジ革命時のように、政権崩壊後の権力の空白を野党勢力が埋めるといった簡単な流れではない。ヤヌコビッチを支持してきた現在の既得権益層には有力な財界指導者も含まれている。(訳注 2014年2月22日、デモ隊がキエフを掌握し、議会はヤヌコビッチ大統領の解任と大統領選挙を5月25日に行うことを決議した)  (聞き手はロバート・マクマホン Editor@cfr.org)

CFR Meeting
ウクライナ危機の外交・経済・軍事的衝撃を検証する

2014年3月号

◎スピーカー
チャールズ・クプチャン/ヨーロッパ担当シニアフェロー
ロバート・カーン/国際経済担当シニアフェロー
ジャニン・デビッドソン/国家安全保障担当シニアフェロー
◎モデレーター
アニヤ・シュメマン/アメリカン大学国際関係大学院/アシスタント・ディーン

ロシアのナショナリストたちは、スラブ民族と東方(ロシア)正教系諸国の連帯を求めるユーラシア連合を通じてロシアを再建したいと考えている。・・・だが、ウクライナはヤヌコビッチ政権を倒すことで「われわれにはスラブ民族、東方正教会のつながりを基盤するユーラシアブロックに入るつもりはなく、ヨーロッパの一部になりたい」というメッセージをプーチンに送ったことになる。今回の事態は、これに対するプーチンのウクライナへのメッセージとみなせる(C・クプチャン)

IMFによる融資をまとめるには時間がかかるし、ウクライナの暫定政権はIMFが求めるような改革を遂行していく政治的基盤をもっていない。「当面の措置として、第2ステージに進むためのつなぎ融資を多くの条件をつけずに提供する必要がある」(R・カーン)

プーチンが大きな野心を露わにしてクリミアだけでなく、他のウクライナ地域に侵攻すれば、制圧地域を維持する一方で、親欧米派の激しい抵抗に直面する。彼が制圧しようとする地域で、抵抗運動だけでなく、ゲリラ戦が起きる。(J・デビッドソン)

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