国際法は戦争犯罪をどこまで追い込めるか
~国際法と国内法のあいだ~
1999年3月号

戦争犯罪、大量虐殺、人権弾圧などの、世界の他の地域での「非人道的犯罪」に対するマスコミや市民権運動家たちの関心は高まる一方だ。一部には、「人間性に対する犯罪は、もはや虐待行為が行われた国だけの問題ではない」のだから、国際法をつうじて一律に処罰すべしという声も出てきている。たしかに、民意を代弁できる世界政府(あるいは国際機構)、そして世界憲法(あるいは強制力を伴う国際法)が存在すれば、特定の国家の内部で起きた非人道的事件をグローバルな規模でとりしまり、処罰するのも可能になるかもしれない。しかし、現実にはそのようなものは存在しないし、それが実現する見込みもない。国家は憲法を持ち、その憲法を軸に政府が秩序を維持し、しかも、政府がそうする権限は選挙をつうじた民意に支えられている。これを世界規模へと広げるのは、事実上不可能であることを認識した上で、問題に対応するしかない。だが、われわれはいずれ「憲法」と「国際法」のせめぎ合いの時代が到来する可能性に備えるべきだろう。