CFRブリーフィング
地球温暖化でワイン生産者は北を目指す
2008年1月号
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2008年1月号
2007年12月号
イスラム系政党である公正発展党(AKP)の政治的台頭を前に、トルコのイスラム化への懸念をトルコの世俗派も欧米世界の一部もぬぐい去ることはできずにいる。だが、そうした懸念の多くは誤解に根ざしている。いまやAKPと軍の役割が入れ替わっている。実際には、AKPとその支持者が親欧米路線とグローバル化を支持するようになり、軍部とケマリストの指導者はより内向きとなり、欧州連合(EU)とアメリカへの反発を強めている。現在のトルコが直面している切実な国内問題とは、イスラム化ではなく、ヨーロッパとアメリカに対するナショナリズムからの反発が大きくなりつつあることだ。……トルコ国内の民主改革と欧米志向の外交政策を促進していくには、トルコの政治的現実からみて、AKP以外に支持すべき政治勢力は見あたらない。
2007年12月号
2007年12月17日、プーチン政権の与党「統一ロシア」は、2008年3月に実施される大統領選挙に向けてプーチン大統領から後継指名を受けていたドミトリー・メドベージェフ副首相を大統領候補として正式に擁立した。かたや、プーチンもメドベージェフによる首相就任要請を受け入れる考えをすでに明らかにしている。プーチンが何をするつもりなのか、今後のロシアの権力構造、対外路線がどうなるのか予見できない状況にある。「多くの人は、プーチンは今後も権力を維持していくつもりだと考えており、おそらく、この見方は正しいと思う。だが、いかなる枠組み、いかなるタイトルのもとでプーチンが権力を維持していくつもりなのかは、依然としてはっきりしない」とみるロシア問題の専門家、スティーブン・セスタノビッチは、メドベージェフがどのような政府を組織するかで概要はいずれわかってくると言う。「プーチン政権のもとで権力を手にしていた各派閥の指導者がどのように処遇されるのか。これらで、どの程度メドベージェフが自由裁定権を持っているのか、誰を主要な顧問とみているか、プーチンだけでなく、ロシアの政治をこれまで牛耳ってきた派閥にどの程度手足を縛られているかがわかる」と。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.org のコンサルティング・エディター)。
2007年12月号
「イランは核開発計画については2003年に停止しているが、ウラン濃縮プログラムは依然として続行している」。こう指摘した今回の国家情報評価(NIE)報告を受けて、アメリカのイラン政策が変更されるのかどうか、イランを国家安全保障上の最大の脅威とみなすイスラエルは、固唾を飲んでワシントンの動向を見守っていた。アメリカ国内では、「条件を付けずにイランと直接交渉をすべきだ」という声が聞かれる一方で、すでにNIE報告をどう解釈するかについての見直しも始まっており、イランの核開発の脅威は依然として存在するという見方も再浮上してきている。米・イスラエル安全保障関係の専門家であるジェラルド・M・スタインバーグは、「NIE報告に関するアメリカでの分析がさらに進み、それが何を言わんとしているかについての慎重な分析が進めば、イランに対する圧力行使策という点では、当初考えられたほどワシントンの路線に大きな変化はない」とみなす方向へとイスラエルでの議論は収れんしつつあると指摘しつつも、むしろアメリカはイランと交渉し、「イランにイスラエルがどのように機能しているかを理解させ、彼らの政策がイスラエルにどのような影響を与える可能性があるかを考えさせる必要がある」という指摘もあるとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。
2007年12月号
コソボ自治政府は2008年早々にもセルビアからの独立を宣言し、これによって一気に情勢が流動化するとみる専門家は多い。ボスニア紛争を終結させたデイトン合意をとりまとめた人物として知られるリチャード・ホルブルックは、コソボが独立を宣言しても、「コソボ内のセルビア人地区は、独立したコソボの一部にはならないと宣言するだろうし、その結果、もう一つの分離独立メカニズムが生まれることになる」と警告する。さらに、これまで抑圧されてきたアルバニア人がコソボ内のセルビア人に報復策をとれば、セルビアがコソボに軍隊を派遣する危険もある。「1992年にボスニアが独立を宣言した際も、ボスニア内のセルビア人地域は独立を受け入れることを拒絶し、これによって、非常に凄惨なボスニア紛争が起き、多くの命が奪われた。これと同じことが、今回、コソボの独立をめぐって繰り返される危険がある」と指摘するホルブルックは、こうした事態を回避するには、現在コソボに展開している国際治安部隊(KFOR)を増強して、駐留を継続させる必要があると強調した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。
2007年12月号
2007年12月号
サウジを例外とすれば、新たな油田開発や生産施設への投資は進んでおらず、しかも、(油田の劣化に伴って)生産効率が低下してくるため、今後、石油の生産量はおそらく8000万バレルを下回るようになる。だが、世界には十分な天然ガス・石油資源が存在する以上、15年後の原油価格は現在よりも低いレベルで推移していると考えられる。シェブロン・コーポレーションの取締役副会長であるピーター・ロバートソンは、問題は地下の埋蔵量よりも、地上の政治問題にあると強調する。地上での政治情勢、石油をタイミングよく生産できる環境にあるかで生産量は左右されると語った同氏は、今後の資源供給の多くは、需要の増減を別としても、資源へのアクセスを確保できるか、投資が進むかに左右されると指摘し、とりわけ、ロシア、メキシコ、ベネズエラ、クウェート、そして、混乱のなかにあるイラク、イランへの投資・開発環境が整うかどうかで、状況は大きく違ってくるとコメントした。聞き手はリー・ハドソン・テスリク(www.cfr.orgのアシスタント・エディター)。
ニューディールが大恐慌から経済を立ち直らせたと考えるのは間違っている。それどころか、「政策の失敗、とりわけ、どのような政策が採られるかが予想不能だったことが、経済の不確実性を増幅させ、企業と消費者の投資と消費を抑制する結果となった」。大恐慌を長期化させた理由の一つは、1930年代に受け入れられ始めた経済への政府介入を肯定的にとらえる新たなイデオロギー志向だった。それは、経済を計画し、形作ることを目的とする(政府介入型の)政策実験を行っても、ダメージは軽微なものにとどまり、むしろ大きな可能性を期待できるというイデオロギーにほかならない。こうしたイデオロギーゆえに、政府の経済介入策が、特に一貫性に欠け、予測不能なやり方で実施される場合、経済に大きなダメージを与え得ることが見えなくなり、うまく機能している市場が経済的問題に自律的に対応していくメカニズムを備えていることが軽視されてしまった。
市場経済を機能させるのに必要な制度、知識、価値観は、民主主義を実現するうえで必要になる制度、知識、価値観と重なりあう。こうして民主主義は市場の働きを通じて広まることになる。市場経済が民主主義を育んでいくのは、市場経済の前提となる財産権の保障が自由の一部を構成しているからだ。もっとも重要なのは、市場経済のもとで、企業、労働組合、専門家協会、有志クラブなど、政府から独立した団体が多数誕生することだ。非民主国家が経済成長を実現するために市場経済体制を導入すれば、民主化圧力は必ず高まっていくし、経済成長は、将来にわたってあらゆる国の政府が追求する目標であり続ける。しかし、アメリカの政策でそれを左右するのは難しいし、アラブ世界、ロシア、中国が今後民主化していくかどうかは、予断を許さない状態にある。
2007年11月号
トルコはいまや中東における重要な外交プレーヤーとして台頭している。イランやシリアとの関係を修復し、パレスチナにも前向きなアプローチをとるようになり、広くアラブ世界との関係強化を試みている。こうした状況を前に、ワシントンには、トルコの外交政策が「イスラム化」していくのではないかと懸念する者もいる。だが、トルコが中東に積極的に関与し始めたのは、冷戦終結以降、トルコが外交路線を多様化させていることの結果である。現実には、トルコは、歴史的に自らがその一部だった地域を再発見しつつある。イラクのクルド地方政府とトルコの対立をどう解決して、イラクを安定化させ、トルコを中東への貴重な懸け橋の役目を果たしてくれるようにするか。ワシントンは、独立路線と自己主張を強めるトルコに圧力をかけるのではなく、そのようなトルコにうまく向きあっていくことを学んでいく必要がある。