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テーマに関する論文

ウクライナ戦争の世界化
―― 「非ヨーロッパ化する戦争」の意味合い

2024年12月号

マイケル・キマージ 米カトリック大学 歴史学部 教授
ハンナ・ノッテ 戦略国際問題研究所 シニアアソシエイト

ヨーロッパは、何世紀もの間、自国のパワーを対外的に誇示してきたが、いまや非ヨーロッパ諸国がパワーを誇示する舞台となりつつある。ブリュッセル、キーウ、ワシントンは、この新しい現実と折り合いをつけなければならないだろう。北朝鮮など、ロシアに兵士や軍需品を提供する国は、ウクライナを実験場として利用することで、将来自分たちが戦うかもしれない戦争に備えようとしている。戦争の流れを形作るか、戦争を終わらせる交渉に参加することで、ウクライナ戦争後のヨーロッパ形成のプレーヤーに自国を位置づけようとする非ヨーロッパ諸国もある。その多くは、ウクライナの復興にも関与してくると考えられる。

ウクライナ戦争を終わらせるには
―― 勝利の定義を見直せ

2024年12月号

リチャード・ハース 外交問題評議会 名誉会長

ワシントンは、実現不可能な勝利の定義に固執するのではなく、戦争の厳しい現実と向き合い、より妥当な結末を受け入れ、折り合いをつけるべきだ。キーウが主権と独立を維持し、希望する同盟や連合に自由に参加できることを勝利とみなし、ウクライナ全土を解放する必要があるという考えは放棄すべきだろう。アメリカとその同盟国は、ウクライナに武器支援を提供する一方で、キーウにモスクワと交渉するように求め、その方法を具体的に示すという不快な対策をとらざるを得ない。外交を模索する一方で、ウクライナを支援し続けることが、紛争を終結させるためには必要であることをトランプが最終的に理解することを期待したい。

台湾を守る曖昧戦略
―― いかに壊滅的事態を防ぐか

2024年12月号

ジェームズ・B・スタインバーグ ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際関係大学院 学院長

中台の衝突は不可避ではないが、あり得ないとも言い切れない。それを回避できるかは、米中台、三つの政府の慎重な政策の選択にかかっている。アメリカの台湾政策を批判する専門家が指摘するように、数十年にわたる「戦略的曖昧さ」路線が、米中台のいずれも完全に満足できる状況を生み出していないのは事実だろう。しかし、特定の当事者を完全に満足させる結果は、別の当事者には受け入れられないものだ。つまり、ワシントンが目指すべきは、すべての当事者が受け入れられる(複雑な)現状を特定することだ。高度なバランスを要するが、外交とはそういうものだ。

ドナルド・トランプとアメリカの未来
―― スティーブン・コトキンとの対話

2024年12月号

スティーブン・コトキン スタンフォード大学 フーバー研究所 フェロー

「トランプは別の惑星から降り立ったエイリアンではない。アメリカ文化に深く根差す、不変の何かを反映する人物として、米市民が投票した人物だ。プロレス、リアリティ番組、カジノやギャンブル、セレブ文化、ソーシャルメディア。これらのすべてはアメリカのシンボルだし、詐欺や大嘘も同様だ。だが、同盟諸国を含む、多くの外国人は(国内の一部の人々同様に)、トランプを、自分たちが知り、再び見たいと願っているアメリカではないとみている」。・・・外交領域では、トランプも、オバマやバイデンと同じジレンマに直面する。それは、アメリカの対外コミットメントと能力のギャップいかに埋めていくかに他ならない。

(インタビューは、11月6日にドナルド・トランプが米大統領選で決定的な勝利を収めたタイミングで実施された。聞き手は、フォーリン・アフェアーズ誌エグゼクティブ・エディター、ジャスティン・ヴォクト。邦訳分は、英文からの抜粋・要約。)

中国を枢軸から切り離すには
―― 食い違う、中国と他の枢軸メンバーの利益

2024年12月号

スティーブン・ハドリー 元米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

中国と他の枢軸メンバーの利益は必ずしも一致していない。ワシントンは、それぞれの地域でロシア、イラン、北朝鮮に効果的に対抗することで、「敗者の枢軸」に中国を縛り付けることが、世界的影響力を得るための道ではないことを北京に示す必要がある。ロシアに兵器を提供すれば、中国に制裁が広く適用され、かなりの経済的コストに直面する。イランとその代理人たちの活動は、重要な石油資源を含む中国と中東の貿易を混乱させる。枢軸パートナーの冒険主義を厳格に抑え込めば、ワシントンは習近平に軌道修正を促せるし、そうすることは彼の利益にもなる。

トランプの政策ビジョンを考える
―― 衝動性と現実主義の間

2024年12月号

コリ・シェイク アメリカン・エンタープライズ研究所 外交・国防政策研究ディレクター

「予測不能で衝動的」と言われるトランプの政策ビジョンは、実際には、はっきりとしている。経済グローバル化と移民を否定的に捉えている。高関税を盛り込んだ二国間協定を結び、アメリカ市場へのアクセスを制限し、貿易収支のバランスをとることを重視している。アメリカにつけ込んでいると彼がみなす同盟国への要求を高め、要求を満たすことが、同盟支援の条件とされる。だが、現実を前に考えを見直す可能性もある。反欧米勢力の一体化に立ち向かうには、健全な同盟関係が必要であることを理解するかもしれない。さらに、ロシアが取引に応じなければ、「ウクライナがこれまで手にした以上の支援を与える」可能性もある。トランプ2期目に危険はあるが、抑止力強化と国防予算の増大という側面では、米安全保障基盤を強化するチャンスでもある。

高齢化と人口減少の時代
―― 人口減少と人類社会

2024年12月号

ニコラス・エバースタット アメリカン・エンタープライズ研究所 ヘンリー・ウェント政治経済チェア

「人々が何を好ましいと考えるかが、ほぼすべての大陸で急速に一体化しつつある」。迫り来る人口減少時代への流れを作り出している大きなトレンドは、世界的に子どもをもつことを望む欲求が低下していることによって作り出されている。出生率が急激に低下し、ますます多くの社会が、いつまで続くかわからない、広範な人口減少の時代へ向かっている。結婚を奨励し、子育てを祝福する宗教的信仰も、出生率の低下が進む多くの地域で衰退しつつある。その先にあるのは、高齢化し、より小さくなった社会で構成される世界になるだろう。人口減少は、おそらく、社会がまだ考えもせず、いまは理解できないような多くの方法で、人類を大きく変貌させていくだろう。

ウクライナ支援を続けるべき理由
―― 何が問われているのか

2024年12月号

ロイド・J・オースティン 米国防長官

プーチンの攻撃を(われわれは)警告として受け止めなければならない。これは、暴君と悪漢が主導する世界、つまり、勢力圏に切り分けられた混沌とした暴力的な世界、いじめっ子が小さな隣人を踏みつける世界、そして侵略者が自由な人々に恐怖の生活を強いる世界の予告なのだ。つまり、私たちは歴史の分岐点にある。プーチンの侵略に今後も断固として立ち向かうのか、それともプーチンの思いのままにさせ、私たちの子や孫たちに、はるかに血なまぐさい危険な世界を生きることを宣告するのか。ウクライナが踏みにじられれば、ヨーロッパ全土がプーチンの影に脅かされることになる。

※このテキストは、キーウのウクライナ外交アカデミーで行われたスピーチからの抜粋。邦訳分はFAJによる翻訳・要約で、米政府の公式テキストではない。

中国の政治腐敗と格差
―― 壮大なスケールの汚職

2024年11月号

ブランコ・ミラノヴィッチ ニューヨーク市立大学大学院センター シニアスカラー
リー・ヤン ライプニッツ欧州経済研究センター 研究員

大規模な反政治腐敗キャンペーンが中国で進められてきたのは、習近平の政治的思惑からだけではない。都市部における格差が極端なレベルに達していたからだ。所得が高い者は、(賄賂や横領で)平均して4倍から6倍、なかにはそれ以上に所得を増やしている。つまり、中国の実質的所得格差は、記録されている格差レベルよりもはるかに大きい。一方、反政治腐敗キャンペーンは、大金持ちや権力者を追及することをためらわない限り、独裁者がポピュリストとしての信頼を高めることにも貢献する。習近平だけでなく、ロシアのプーチンも、このやり方を取り入れている。

流動化する世界と米再生戦略
―― アメリカとリビジョニストパワー

2024年11月号

アントニー・ブリンケン 米国務長官

バイデン政権はアメリカの競争力強化を目的とする歴史的な国内投資と各国との協調関係の再生に向けた力強い外交キャンペーンを組み合わせて展開した。この二つの支柱から成る戦略が、「アメリカは衰退し、自信を失っている」とみなす(中露などの)リビジョニストパワーの思い込みを粉砕する最善の方法だと、バイデン政権は信じていた。米衰退論の思い込みに囚われている限り、リビジョニストパワーは、アメリカやほとんどの国が求める「自由で開放的な世界、安全で繁栄する世界」にダメージを与え続けようとするからだ。アメリカはリビジョニスト諸国の思い込みを粉砕するための決意を維持しなければならない。そして、リビジョニストパワーが相互の立場の違いを克服するために、今以上に協力する事態に備える必要がある。

*英文は以下から閲覧できる。
https://www.foreignaffairs.com/united-states/antony-blinken-americas-strategy-renewal-leadership-new-world

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