1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

ー 地球温暖化と異常気象に関する論文

Foreign Affairs Update
グリーンランドの資源開発ブーム
―― 開発と汚染リスクに揺れる島民たち

2013年12月

アンナ・カタリナ・グラブガード フリーランスジャーナリスト

オーストラリア、カナダ、中国を含む各国の投資家が、鉱物資源開発をめぐって、グリーンランドに押し寄せている。大きな資源が存在すると長く言われながらも、これまではグリーンランドの資源開発を阻む障害が存在した。ごく最近まで氷床が資源豊かな大地を覆い尽くし、しかも、ウランの掘削が禁止されてきたからだ。潤沢なウラン資源と混在する形でレアアースその他の資源が存在するため、事実上、すべての鉱物資源開発ができなかった。だがいまや氷床は溶け出し、グリーンランド自治政府はウラン掘削を禁止する法律を撤廃している。資源開発に異を唱える人はいない。だが、ウランが掘削されることを現地の多くの人が心配している。注意深く掘削しなれば、ウラン掘削によって土地や水が数世代にわたって汚染されるリスクがあるからだ。・・・

北極圏の未来
――北極圏サークルの立ち上げを

2013年6月号

スピーカー オラフル・ラグナル・グリムソン  アイスランド大統領、 プレサイダー スコット・G・ボルガーソン  前外交問題評議会シニア・フェロー

アイスランドの氷河はヨーロッパ最大の規模をもっているが、この氷河の後退は地球温暖化がたんなる理論ではなく、現実に起きていること、それが大きな変化をもたらしていることを物語っている。海面の上昇によって、世界の都市と経済はいずれ大きなダメージを受けると思われる。中国の研究者たちは、・・・グリーンランドや南極の氷床の溶解による海面上昇によって、上海を始めとする多くの都市が水没するというシナリオを想定している。・・・われわれは北極評議会を越えたより大きなプレイヤーを内包するフォーラム、北極圏サークルも立ち上げようと試みている。これは、北極圏諸国だけでなく、アジアやヨーロッパ諸国の科学者、活動家、企業、政治指導者たちが参加するフォーラムだ。

地球温暖化と水資源争奪戦

2012年11月号

シュロミ・ダイナー フロリダ国際大学准教授
ルシア・デ=ステファノ マドリッド・コンプルーテンス大学
ジェームズ・ダンカン 世界銀行コンサルタント(天然資源統治)
カースティン・スタール フレイバーグ大学 シニアサイエンティスト
ケネス・M・ストルゼペック MIT リサーチサイエンティスト
アーロン・T・ウォルフ オレゴン州立大学教授

地球温暖化によって干ばつ、水害、その他の異常気象が増えるなか、水資源の量と質がともに変化する恐れが出てきている。世界の276の国際河川のうちの24の河川では、すでに流水量が変化し、水資源をめぐる政治的緊張が高まっている。例えば、上流域に位置する国と下流域に位置する諸国が、水力発電のエネルギー源として、あるいは農業用水として、水資源を争っているからだ。問題なのは、緊張が高まっている地域で水資源使用の管理を定めた国際条約が存在しないことが多いために、対立が生じても、それに対処するメカニズムが存在しないことだ。水資源の国際的管理合意を包括的に整備していかない限り、アフリカ、カフカス、中東、中央アジアなど、水資源が世界の紛争多発地域の安定をさらに損なうことになりかねない。

地球温暖化リスクと原発リスク
―― フクシマの教訓と新小型原子炉のポテンシャル

2011年11月号

アーネスト・モニズ マサチューセッツ工科大学物理学教授

温室効果ガスが大気に蓄積されていくにつれて、電力をクリーンかつ安価に、しかも信頼できる形で生産する方法を見いだすことが、ますます切実な課題になっている。原子力は魔法の杖ではないが、(二酸化炭素を排出せずに)大規模な電力を生産できることが立証されている以上、フクシマを経た現在もその解決策の一部である。フクシマの教訓を生かして安全性を高めるとともに、建設コストを引き下げ、放射性廃棄物問題を解決しない限り、原子力エネルギーの大きな進展は期待できない。だが、小型モジュール炉(SMR)が実用化されれば、安全性とコストの問題は大きく改善される。SMR、再生可能エネルギー、先端型バッテリー、二酸化炭素回収・貯蔵技術の何であれ、新たなクリーンエネルギー上のオプションを作り出す試みを止めれば、10年後にわれわれは大きな後悔をすることになる。

Foreign Affairs Update
グリーンテクノロジーの将来
―― CCS技術への投資を

2011年10月号

ジュリオ・フリードマン ローレンス・リバモア研究所二酸化炭素管理プログラム責任者

グローバルレベルでも国家レベルでも、化石燃料による電力の生産と供給には変化がみられない。再生可能エネルギーの利用が増えているにもかかわらず、二酸化炭素排出量は急激に増大している。このような状況にあるにも関わらず、二酸化炭素を分離して、地球環境に悪影響を与えない安全な場所に封じ込め、大規模な気候変動を引き起こさずに化石燃料を利用できるようにするCCS技術はそれほど注目されていない。アメリカを含むOECD諸国の市民の多くは、二酸化炭素の回収・貯留技術(CCS)が何であるかについて、この技術で何ができ何ができないか、そして、それが環境上何を意味するかをほとんど理解していない。全面的に導入されれば、CCSは、世界が必要としている二酸化炭素排出削減量の25-50%を削減できるポテンシャルを秘めている。各国が二酸化炭素排出の削減に向けた力強いコミットメントからしだいに離れていくにつれて、CCSその他の重要なクリーンエネルギー技術の開発と実証研究が先送りされかねない状況にある。

食糧・穀物供給危機の再来か
― 異常気象と穀物市場の行方

2010年9月号

ローリー・ギャレット 米外交問題評議会シニア・フェロー

記録破りの猛暑の日差しが、世界の穀倉地帯を焦がしている。異常気象による収穫減を前に、ウクライナやウズベキスタンがロシアと同様に穀物の輸出禁止措置に踏み切れば、すでに先細り気味の世界の穀物収穫量はさらに下方修正を余儀なくされる。インド、スイス、フランスその他のヨーロッパ諸国が大量の穀物備蓄を開始しているという噂もある。サウジアラビアや中国などの諸国は、すでに今後の食糧危機に備えて、アフリカやアジアの貧困諸国で耕作可能な土地を確保しつつあるようだ。現在の穀物市場をめぐる世界の不安を抑えようと賢明に試みている世界農業・食糧機関も、最近の価格高騰が始まる前の2010年6月に憂鬱な予測を示している。それによれば、農産品の供給が十分ではなく、エネルギーコストが増大し、拡大する世界の中産階級層の食の多様化が重なり合うことで、今後10年の穀類、穀物、石油、乳製品価格は、2007年の水準と比べて40%上昇する可能性がある。厄介なことに、小麦その他の穀物の取引トレンドは、食糧危機が起きた2007~2008年のそれに似てきている。穀物の先物取引が急増し、いまや価格は2008年以降、最高水準に達している。

コペンハーゲンの「不都合な真実」
―― グローバルな合意への期待を引き下げ、国単位の対策を優先させよ

2009年10月号

マイケル・レビ 米外交問題評議会シニア・フェロー (エネルギー、環境問題担当)

温室効果ガス排出量削減の世界的取り組みが、一つのグローバルな条約を基盤に展開していくことはあり得ないし、2009年12月に包括的な合意が成立する見込みもほとんどない。地球環境対策を強化したいと考えている政府官僚や活動家は戦略を見直すと同時に、コペンハーゲン会議への大きな期待を引き下げるべきだ。グローバルな条約ではなく、野心的な国単位の政策と、排出量削減のための特別な機会に焦点を合わせたクリエーティブな国際協調を組み合わせた「ボトムアップアプローチ」を試みるべきだ。コペンハーゲンでの交渉の目的を、先進国の排出量削減へのコミットメントを強化し、途上国の環境対策を経済成長、安全保障、大気汚染など、途上国の指導者がすでに心配し始めている他の領域の問題へとリンクさせる程度へと引き下げない限り、会議はなんの成果も得られないまま終わることになる。

地球温暖化が問題になっているとはいえ、いまや風力、地熱エネルギー、ある特定の太陽光エネルギー技術を含む、数多くの技術が、石炭のような従来のエネルギー源ほど安価ではないにしても、十分な量のクリーンエネルギーを供給できるところまで成熟している。問題は、資金へのアクセスが十分でないことだ。だが、市場メカニズムをうまく利用した排出権取引システムがあれば、この問題に正面から対応できる。・・・排出量割り当てが減少していけば二酸化炭素の価格は上昇し、排出主体が負担するコストは、排出削減のために負担するコストと反比例して増大していく。・・・市場は、資金を分配し、富を創出する強力なメカニズムだ。地球温暖化が地球全体に脅威をもたらしている現在、市場は社会変革を推進するメカニズムにもなる。

ブラックカーボンと低層オゾン対策を
―― もう一つの温暖化対策

2009年10月号

ジェシカ・セドン・ワラック 金融管理研究所(IFMR)開発金融センター所長
ビーラバドラン・ラマナタン カリフォルニア大学サンディエゴ校教授(気候・大気科学)

二酸化炭素排出量削減の恩恵は世界全体で享受できるが、削減コストは各国が負担しなければならない。このコストと恩恵のバランスの見極めが難しいために国際条約をまとめるのは難しい。一方で、リスクが小さく、費用対効果が高く、大きな成果が得られるのに、ほとんど注目されていないオプションがある。それは、光を吸収し(温暖化を進める)「ブラックカーボン(=黒色炭素)」として知られる炭素粒子、そして低層オゾンを形成するガスの排出を削減することだ。黒色炭素と低層オゾン前駆物質の排出量削減はさまざまな意味で有望だ。コストが比較的小さくて済む上に実行しやすく、何十年分もの温室効果ガスの悪影響を相殺し、数多くの恩恵が直ちに得られ、しかも、いますぐに着手できる。

Page Top