1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

― アメリカの衰退に関する論文

ピーク・チャイナという幻想
―― 中国パワーの現実

2024年6月号

エヴァン・S・メデイロス 元米国家安全保障会議 アジア上級部長

経済的に衰退する中国には、もはや「かつてのような力はない」のか。現実には、中国共産党は、大方の予測を覆して、危機をうまく切り抜けることが多く、習近平は現在の経済状況について心配していない。むしろ、現状は、より強く、持続可能な経済になるための成長痛を経験しているようなもので、近代化目標に向かって突き進めるように、経済を再構築するための厳しい選択をしていると北京では考えられている。中国の指導者たちは、自国がピークアウトしたかどうかは心配していない。たとえ成長のペースは鈍化しても、米中間のギャップは縮まり続けていると確信している。

強大化する反欧米枢軸
―― 中露・イラン・北朝鮮の目的は何か

2024年6月号

アンドレア・ケンドール=テイラー 新アメリカ安全保障センター シニアフェロー
リチャード・フォンテーヌ 新アメリカ安全保障センター 会長

ウクライナ戦争をきっかけに、中国・ロシア・イラン・北朝鮮は、経済、軍事、政治、技術的な結びつきを強め、共有する利益を特定し、軍事・外交活動を連携させつつある。すでに、地政学状況は変化している。実際、中国の台湾侵攻を前にアメリカが軍事介入を決断すれば、ロシアはヨーロッパの別の国に対して軍事行動を起こし、イランや北朝鮮はそれぞれの地域で脅威をエスカレートさせるかもしれない。たとえ新枢軸が直接的に侵略を連動させなくても、同時多発的な衝突が欧米を圧倒する恐れがある。さらなる連携がもたらす破壊的影響を管理し、中露・北朝鮮・イランの枢軸がグローバル・システムを動揺させないようにすることを、米外交の中核目的に据える必要がある。

経済安全保障とラテンアメリカ
―― 中国に代わるサプライチェーンの確立を

2024年4月号

シャノン・K・オニール 米外交問題評議会 副会長(研究担当)

アメリカは重要鉱物の80%を外国から調達しており、ニッケル、マンガン、グラファイトといったバッテリー製造に使われる鉱物はとくに中国に大きく依存している。マイクロチップの60%、そして最先端の半導体チップの90%は、中国の脅威にさらされている台湾で製造されている。こうした現状には大きなリスクがある。しかし、われわれはラテンアメリカに目を向けることができる。南部国境以南の国々について、「良いフェンスが良い隣人をつくる」と考えている米指導者もいるかもしれないが、それは、大きな間違いだ。ラテンアメリカをサプライチェーンに深く統合せずに、経済的な同盟国をアジアやヨーロッパという遠くに求め続ければ、ワシントンは、さらに大きな中国の影響力が裏庭におよぶことを後押しすることになる。

紛争の一方で進む中東の和解と協調
―― ポストアメリカの中東秩序へ

2024年3月号

ダリア・ダッサ・ケイ カリフォルニア大学ロサンジェルス校 バークル・センター シニアフェロー
サナム・ヴァキル 英王立国際問題研究所 中東・北アフリカプログラム ディレクター

アラブ世界の主要国は、トルコのような地域大国とともに、ガザ戦争前に存在した和解の流れとその後誕生した協調の機運を固定化するために、この瞬間を生かし、この地域に安定をもたらせる力強い安全保障メカニズムの確立をめざすべきだ。中東は清算の時を迎えている。ガザ戦争からみても、いまや中東におけるアメリカパワーに限界が生じていることは明らかであり、今後の中東の和平と安全保障をめぐって主導権をとるのは、地域の指導者や外交官たちでなければならない。危機と紛争にさらに陥っていく危険もある。だが、別の未来を築き始めることもできる。中東の指導者たちが暴力のスパイラルを食い止め、この地域をより前向きな方向へと導ける可能性は存在する。

共和党の国際主義と外交戦略
―― 軍事・貿易・経済戦略をどう立て直すか

2024年3月号

コリ・シェイク アメリカン・エンタープライズ研究所 ディレクター

共和党支持者がもっとも懸念する「経済的な不安」を引き起こしているのは、バイデン政権の政策だ。その保護主義的な理論とアプローチはインフレを煽り、市場を歪め、貿易を抑え込み、アメリカの同盟国をいらだたせている。共和党支持者は、中国に世界のルールを決めさせれば、米企業は不利な状況に追い込まれ、同盟国が脆弱な状況に置かれることを理解している。軍事予算の増大も、移民政策の見直しも必要だし、中国への依存を減らし、それでも繁栄を維持できる経済戦略が求められている。必要なのは、世界で何が起きているのか、そして共和党がどのように国を守り、繁栄を維持していくつもりなのかについての理論を有権者に明確に示すことだ。

次期米大統領と欧州
―― なぜ欧州の自立が必要なのか

2024年3月号

アランチャ・ゴンサレス・ラヤ
カミーユ・グランド
カタジナ・ピサルスカ
ナタリー・トッチ
グントラム・ヴォルフ

ヨーロッパの指導者たちは、バイデンなら、大西洋の絆を守り、混乱する大陸と近隣諸国にヨーロッパがより大きな責任を果たすための時間と支援を与えてくれると考えている。だが今後、そうした配慮は彼からも得られないかもしれない。もちろん、トランプ大統領が誕生すれば、2期目には、ヨーロッパが直面する不安定な状況はさらに悪化するかもしれない。だが、安全保障と経済を守るために行動を起こし、具体的な措置を講じることは、ヨーロッパの手に委ねられている。誰がワシントンで政権を担おうと、一貫したパートナーとしてアメリカを頼ることはもはやできないかもしれない。ヨーロッパの指導者たちは自分たちが成長しなければならないこと、つまり、アメリカへの依存度を低下させるべきことを理解している。

自己を見失った超大国
―― 自ら築いた世界に背を向けるのか

2024年2月号

ファリード・ザカリア 国際政治分析者

アメリカがデザインした「ルールに基づく国際秩序」に対する憂慮すべき障害を作り出しているのは、中国でもロシアでもイランでもない。それは、アメリカに他ならない。アメリカが、自国の衰退に対する誇張された不安に駆られて、国際政治における指導的役割から後退すれば、世界で力の空白が生じ、さまざまな国やプレーヤーが混乱に足を踏み入れようとするだろう。すでに、ポスト・アメリカ世界がどのようなものかをわれわれは中東で目の当たりにしている。ヨーロッパとアジアで同じようなことが起こることを想像してほしい。しかも、この場合、地域的国家ではなく、世界の大国が混乱を引き起こし、世界的に大きな衝撃がはしることになる。・・・

共和党外交の再建はできるか
―― アメリカファーストと国際主義の相克

2024年2月号

ジェラルド・F・セイブ 戦略国際問題研究センター シニアメンター

共和党の政治家たちが外交政策をめぐって火花をちらすなかで、われわれが注目すべきは、「レーガン時代の国際主義」と「トランプ時代のアメリカファースト」の衝動が一貫した戦略と世界ビジョンへまとめられていくかどうかだ。共和党系外交専門家の多くは、二つの立場の間に共通基盤は存在するし、政治家たちの発言ほどには、共和党支持層は新孤立主義に傾倒していないとみている。そうした統合を実現するには、中国や台湾、貿易、同盟国の責任分担を含む一連の中核アジェンダについての党としてのコンセンサスが必要になる。もちろん、2024年に誰が指名候補になるかで流れは大きく左右される。例えば、共和党の予備選でトランプではなく、国際派のヘイリーが勝利すれば、党にとって大きく異なる道が開けてくる。・・・

変化した世界とアメリカ外交
―― アメリカパワーの源泉

2023年12月号

ジェイク・サリバン 米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

米中は経済的には相互依存の関係にある。競争はまさにグローバルだが、ゼロサムではなく、共通の課題にも直面している。アメリカの未来は二つのことで左右される。それは、地政学的競争において優位を維持できるかどうか、そして気候変動からグローバルヘルス、食糧安全保障、インクルーシブな経済成長までの、トランスナショナルな課題に取り組むために世界を動員できるかどうかだ。そのためにも、アメリカのパワーの捉え方を変化させられるかが問われる。国際的なパワーはパワフルな国内経済に依存し、その経済の強さはその規模や効率性だけでなく、危険な対外依存をしていないことにも左右される。

ロシアの反欧米連合
―― アメリカの敵を束ねると

2023年11月号

ハンナ・ノッテ ジェームズ・マーティン不拡散研究センター ユーラシア不拡散プログラム・ディレクター

ウクライナでの戦争が「ロシアのパワー、利益、影響力を大きく低下させている」と欧米の高官が状況を捉えているのなら、それは考え直す必要があるだろう。ベネズエラから北朝鮮まで、ロシアは、アメリカやヨーロッパを敵視する多くの国々との軍事協力を強化し、深化させている。これらの国々には、欧米という敵を共有している以上の共通点はあまりないかもしれないし、特に強力な国もない。しかし、これらの国々が一緒になれば、モスクワがウクライナとの戦争を続けるのを助けることができる。アメリカはこの「ロシアの枢軸」に対するバランスをとるために、欧米のパートナーシップと同盟に再投資する必要がある。

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