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年度別傑作選に関する論文

民主国家に浸透する権威主義
―― 蝕まれるリベラルな民主主義

2017年11月号

ソーステン・ベナー 独グローバル公共政策研究所  ディレクター

欧米諸国による批判や敵意を前にすると国内が不安定化する傾向があるロシアなどの権威主義国家は、民主国家による民主化促進策、反体制派支援、経済制裁などを阻止するための盾を持ちたいと考えてきた。こうして、欧米の政治に介入したり、プロパガンダ戦略をとったりするだけでなく、資金援助をしている欧米の政党や非政府組織、ビジネス関係にある企業との関係を通じて、民主社会への影響力を行使するようになった。権威主義国家の最終的な目的は、自分たちの影響力を阻止できないほどに欧米の政府を弱体化させることにある。問題は、民主社会が外国の資金や思想の受け入れに開放的で、欧米のビジネスエリートが権威主義国のクライエントたちからも利益を上げようとしていること、しかも民主体制が弱体化しているために、彼らがつけ込みやすい政治環境にあることだ。・・・

ドライバーレスカーが経済と社会を変える
―― ユートピアかディストピアか

2017年10月号

ジョナサン・マスターズ CFR.org 副編集長

車に数万ドルもの金をかけて所有し、90%以上の時間は乗らずに置きっぱなしにするよりも、今後、多くの人は、必要な時にモバイルアプリで車を呼ぶやり方を選ぶようになるだろう。勝者となるのは、自律走行車によって時間と金を節約できるようになる普通のドライバーたちだ。特に、公共交通機関へのアクセスがない郊外や地方で暮らす高齢者や障害者は、自由に移動できるようになり、自立性を取り戻せる。交通事故や大気汚染に派生する問題や犠牲も抑え込めるようになる。世界最大でもっとも迅速な成長を遂げる自動車市場をもつ中国は、この側面で最大の恩恵を引き出すことができる。だがドイツ、日本、韓国、アメリカなどの、主要な自動車輸出国、そして産油国は大きなリスクにさらされる。・・・・

核武装国北朝鮮にどう向き合うか
―― 核不拡散の脅威から核抑止の対象へ

2017年10月号

スコット・D・セーガン スタンフォード大学教授(政治学)

北朝鮮、そして米韓は、いずれも相手が先制攻撃を試みるのではないかと疑心暗鬼になっている。このような不安定な環境では、偶発事故、間違った警告、あるいは軍事演習の誤認が戦争へつながっていく。しかも、金正恩とドナルド・トランプはともに自分の考える敵に衝動的に向かっていく傾向がある。ペンタゴンとホワイトハウスの高官たちは、北朝鮮の指導者・金正恩の行動を抑止する一方で、トランプ大統領が無為に戦争への道を突き進んでいくことも諫めなければならない。北朝鮮にとって核兵器は取引材料ではない。自国に対する攻撃を阻止するための力強い抑止力であり、あらゆる策が失敗した時に、敵対する諸国の都市を攻撃して復讐するための手段なのだ。しかし、危機に対するアメリカの軍事的オプションは実質的に存在しない。金正恩体制が自らの経済的、政治的弱さによって自壊するまで、忍耐強く、警戒を怠らずにその時を待つ封じ込めと抑止政策をとるしかない。

資本主義と縁故主義
――縁故主義が先進国の制度を脅かす

2017年9月号

サミ・J・カラム Populyst.netエディター

資本主義と社会主義の間で変性したシステムと定義できる縁故主義が世界に蔓延している。冷戦後に勝利を収めた経済システムがあるとすれば、それは欧米が世界へと広げようとした資本主義ではない。縁故主義だ。世界的な広がりをみせた縁故主義は、途上国、新興国だけでなく、アメリカやヨーロッパにも根を下ろした。(1)政治家への政治献金、(2)議会や規制を設定する当局へのロビイング、そして(3)政府でのポジションと民間での仕事を何度も繰り返すリボルビングドアシステムという、縁故主義を助長するメカニズムによってアメリカの民主的制度が損なわれている。一見すると開放的なアメリカの経済システムも、長期にわたって維持されてきたレッセフェールの原則からますます離れ、純然たる縁故主義へと近づきつつある。

「中国の偉大な復興」と栄光の記憶
―― 偉大な過去の神話と屈辱の世紀

2017年7月号

エリザベス・エコノミー 米外交問題評議会 アジア研究部長

習近平の「中華民族の偉大な復興」というスローガンは中国民衆の共鳴を呼んだ。これは「屈辱の世紀」に耐えた中国を「正しい地位」に復帰させ、国際秩序の中心を超えたその上に位置づけるというストーリーだ。しかし、朝貢外交の時代を下敷きにするこの歴史認識は正しいとは言えない。現実には、周辺国は中国を怒らせずにわが道を行くために、さまざまな口実を駆使し、場合によっては真っ向から中国の意向を無視してきた。正確でない歴史認識を基に未来を語る中国に、われわれはどう対処していけばよいのか。実際、習近平政権は、外国のアイデアと資本が入ってくるのを制限する一方で、中国の対外的な政治的、経済的、軍事的影響力の強化を模索している。・・・

オートメーション時代の失業と社会保障

2017年6月号

ジョディ・グリーンストーン・ミラー ビジネス・タレントグループCEO
エデュアルド・ポーター ニューヨーク・タイムズ紙 コラムニスト
ハイジ・シアーホルズ 前米労働省 チーフエコノミスト プレサイダー
スーザン・ルンド マッキンゼー・グローバル・インスティチュート パートナー

ロボットの導入による失業が現実に起きれば、その一方で、膨大な富が作り出され、それがかつてなく一部へ富を集中させることはすでに分かっている。雇用喪失の一方で、巨大な富が集積されていくことのバランスをどうとるか、広く富を共有していくにはどうすればよいかを考えなければならない。(J・ミラー)

今後10年間でより多くの雇用を創出する産業は何かに関する予測のトップ10のうちの四つは看護・介護に関係した職業で、介護、看護師、在宅介護、看護師補助(ヘルパー)などだ。問題はこれらの雇用の質(と賃金)がとても低いことだ。(E・ポーター)

私はオートメーションによって大量失業時代が引きおこされるとは考えていないが、経済的に困難な状況に直面する個人が出てくるのは避けられないだろう。これは対処すべきとても重要な問題だ。だが(その対応策としては)、普遍的な最低所得保障ではなく、雇用保障の方がよいと思う。この場合、政府がすべての人の「最後の雇用主」ということになる。(H・シアーホルズ)

経済成長への期待と憂鬱な現実
―― 「奇跡の世界後」の経済に備えよ

2017年6月号

ルチル・シャルマ モルガン・スタンレー  チーフ・グローバルストラテジスト

人口減少、レバレッジの解消、脱グローバル化が成長を阻む大きな障害となっている以上、各国の政策決定者たちは経済的成功の定義を見直し、力強い経済成長の指標を1―2%引き下げるべきだろう。この基準でみれば、中国の場合、成長率4%で比較的力強い成長とみなせるし、アメリカのような先進国の場合、1・5%を上回る成長率なら健全な状態にあると考えるべきだ。問題は、こうした経済的成功の新しい定義を理解するか、受け入れている政治指導者がほとんどいないことだ。中国は6%の経済成長を維持しようと試み、アメリカの政治指導者も4―6%の経済成長を目指すと発言している。こうしたレトリックは期待と現実の間のギャップを作り出してしまう。世界のいかなる地域も2008年前のような急速な経済成長を遂げることはあり得ないし、そう期待すべきでもない。われわれは「奇跡の世界後」に備えるべきタイミングにある。

アメリカ政治の分裂と民主体制の危機
―― ドナルド・トランプと競争的権威主義

2017年6月号

ロバート・ミッキー ミシガン大学准教授(政治学)
スティーブン・レヴィツキー ハーバード大学教授(政治学)
ルキャン・アハマド・ウェイ トロント大学教授(政治学)

トランプのアメリカがファシズムに陥っていくと考えるのは行き過ぎだが、彼が大統領になったことで、この国が「競争的権威主義」、つまり、有意義な民主的制度は存在するが、政府が反対派の不利になるように国家権力を乱用する政治システムへ変化していく恐れがある。政府機関を政治化すれば、大統領は調査、告訴、刑事責任の対象から逃れられるようになる。政党間の分裂が激しければ、議会の監視委員会が、行政府に対して超党派の集団的な立場をまとめるのも難しい。しかも、政党だけでなく、アメリカの社会、そしてメディアさえもが分裂している。いまや民主党員と共和党員は全く異なるソースのニュースを利用し、その結果、有権者はフェイクニュースを真に受け、政党のスポークスパーソンの言葉をより信じるようになった。現在の環境では、仮に深刻な権力乱用が暴かれても、それを深刻に受け止めるのは民主党支持者だけで、トランプの支持者たちはこれを党派的攻撃として相手にしないだろう。・・・

トランプから国際秩序を守るには
―― リベラルな国際主義と日独の役割

2017年5月号

G・ジョン・アイケンベリー プリンストン大学教授(国際関係論)

古代より近代まで、大国が作り上げた秩序が生まれては消えていった。秩序は外部勢力に粉砕されることでその役目を終えるものだ。自死を選ぶことはない。だが、ドナルド・トランプのあらゆる直感は、戦後の国際システムを支えてきた理念と相反するようだ。国内でもトランプはメディアを攻撃し、憲法と法の支配さえほとんど気に懸けていない。欧米の大衆も、リベラルな国際秩序のことを、豊かでパワフルな特権層のグローバルな活動の場と次第にみなすようになった。すでに権力ポストにある以上、トランプがそのアジェンダに取り組んでいくにつれて、リベラルな民主主義はさらに衰退していく。リベラルな国際秩序を存続させるには、この秩序をいまも支持する世界の指導者と有権者たちが、その試みを強化する必要があり、その多くは、日本の安倍晋三とドイツのアンゲラ・メルケルという、リベラルな戦後秩序を支持する2人の指導者の肩にかかっている。・・・

「リベラルな覇権」は終わりつつある。すでに世界は多極化し、地政学の時代を迎えている。アメリカのリーダーシップが衰退するなか、まるで大国による勢力圏がつくりだされつつあるかにみえ、流れは明らかに統合から反統合へと向かっている。プーチンや習近平が独裁色を強めているだけではない。欧米でもナショナリズムが台頭し、ポピュリストが政治を主導しつつある。ドナルド・トランプ率いるアメリカが経済ナショナリズムを標榜するなか、今後リベラルな欧米秩序を主導していくのはドイツのアンゲラ・メルケルになるとみなされている。大きな反発にさらされながらも、それでもグローバル化は続くと考えられている。民主国家の衰退と権威主義的資本主義国家の台頭に特徴づけられる時代に、資本主義と民主主義は持ち堪えられるのか。歴史は再び動きだしている。

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