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中国市場の異変とグローバル経済
―― 中国経済はリセッションに陥りつつある

シブ・チェン イェール大学教授
ウィレム・ブイター シティグループ、チーフエコノミスト
ロバート・カーン 米外交問題評議会シニアフェロー
マイケル・レビ 米外交問題評議会地政経済学センター  ディレクター

The Global Fallout of China's Market Volatility

Zhiwu Chen イェール大学教授(金融論)。専門は新興市場、中国の経済と資本市場など。著書にAssessing China’s Economic Growth of the Past 30 Years (2010)などがある。
Willem Buiter 欧州復興開発銀行、イングランド銀行金融政策委員会外部委員、ロンドンスクール・オブ・エコノミクス教授などを経て、現在はシティグループのチーフエコノミスト。
Robert Kahn 米外交問題評議会シニアフェロー(国際経済担当)。IMF、米財務省、世界銀行、ムーアキャピタルマネジメント(シニア・ストラテジスト)を経て現職。専門はマクロ経済、債務再構築など。

2015年10月号掲載論文

GDPの50%に相当する投資をして、それでも中国経済の成長率は7%だ。本当の成長率は4・5%かそれ未満だと考えられる。要するに、中国経済はリセッションに陥りつつある。 (W・ブイター)
今後、さらに人民元が切り下げられる可能性は十分にある。他の諸国が中国の通貨切り下げに追随すれば、これらの影響は総体的にかなり大きなものになる。(R・カーン)

危機に直面すると中国政府はマネーサプライを増大させる。だがいまや優れた投資機会は限られている。こうして流動性を増やしても、多くの資金は中国から外へ向かい、アメリカがその恩恵を多く受けるようになるだろう。中国の株式市場や不動産市場、そして経済が問題に直面すればするほど、資金が中国から(アメリカを含む)外国へと向かうようになる。(シブ・チェン)

  • 日本経済のリプレイか
  • 中国はリセッションに陥りつつある
  • 経済変調のグローバルな余波

<日本経済のリプレイか>

マイケル・レビ 今日は中国経済の異変とグローバル経済への余波をテーマに議論したい。中国の株式市場の混乱をメディアは大きく取り上げている。中国の株式市場で何が起きているのか、それは重要なシグナルなのか。シブ・チェン、あなたからお願いしたい。

シブ・チェン 3点指摘したい。第1は、中国の株式市場で起きていることは、中国経済あるいは世界経済にとって、それほど重要ではないということだ。株式市場は、中国の経済、金融システムの双方にとってサイドショーに過ぎない。金融資産の80%以上は依然として銀行に存在する。つまり、銀行システムが安定している限り、株式市場に何が起きようと、中国経済にとってそれほど重要ではない。

一方で、株式市場で起きていることは経済の基層部における構造的問題が現象として現れていることを意味する。2012年以降、現在まで、中国経済は毎年、同じようなパターンを繰り返している。

2年前が中国経済にとって最善の年だった。その後の2年間にわたって、中国の規制当局者、政策決定者は金融、実体経済、社会領域における問題の対応に追われてきた。2012年以降、例年、第1四半期には実体経済の成長に何らかの課題(問題)が生じる。第2四半期で、政府は財政政策や金融政策でてこ入れをはかり、第3四半期には経済は安定し、第4四半期には幾ばくかの改善がみられる。

政府が問題を封じ込めるためにとった対策が効果的でなかったことを例外とすれば、2015年も、同じサイクルで動いている。

違いは、経済問題にこれまでのように効果的な対策がとられなかったために、株式市場が実体経済の変調に反応したことだ。この意味で、2016年により深刻な経済危機が起きるまで、中国政府は現在の問題への対応に追われることになると思う。

第3に、世界の市場プレイヤーたちの多くは「中国で金融危機が起きつつあり、もはやこれは回避できない」と考えているかもしれない。だが、大きな衝撃を伴う金融危機が起きる可能性はそれほど大きくない。というのも、金融危機が拡大していく際には大きな社会的パニックが必ず起きるが、中国の銀行その他の金融機関が管理され、その多くが政府によって管理されている以上、本当の金融パニックが起きる可能性は殆どないからだ。

つまり、今後数年で経済危機が起きる可能性はあるとしても、中国が金融危機に直面するとは考えにくい。この意味で、過去20年間における日本の経験は示唆に富む。1990年以降、日本はさまざまな経済、金融上の問題を抱え込んできたが、大がかりな金融危機は経験していない。この20年間は、1980年代から90年代初頭までの間違った投資からゆっくりと再生してきたプロセスとみなすこともできる。今後5―10年にわたって、中国経済はかつての日本経済のようなコースを辿ると私はみている。

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