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経済覇権はアメリカから中国へ
――21世紀に再現されるスエズ危機

アルビンド・サブラマニアン
ピーターソン国際経済研究所
シニアフェロー

The Inevitable Superpower
――Why China Dominance Is Sure Thing

2011年10月号掲載論文

1956年、アメリカはイギリスに対して「スエズ運河から撤退しない限り、金融支援を停止する」と迫り、イギリスはこれに屈して兵を引いた。ここにイギリスの覇権は完全に潰えた。当時のイギリス首相で「最後の、屈辱的な局面」の指揮をとったハロルド・マクミランは後に、「200年もすれば、あの時、われわれがどう感じたかをアメリカも思い知ることになるだろう」と語った。その日が、近い将来やってくるかもしれない。スエズ危機当時のイギリスは交渉上非常に弱い立場にあった。債務を抱え込み、経済が弱体化していただけでなく、そこに新たな経済パワーが台頭していた。現在のアメリカも同じだ。米経済は構造的な弱点を抱え込み、目に余る借金体質ゆえに外国からのファイナンスに依存せざるを得ない状況にあり、成長の見込みは乏しい。そして、侮れない経済ライバルも台頭している。マクミランが予測したよりも早く、そして現在人々が考えるよりも早く、アメリカは覇権の衰退という現実に直面することになるだろう。

  • 「衰退国家のあえぎ」
  • 2030年、中国はアメリカを追い抜く
  • 強靱な中国経済
  • なぜアメリカは中国に敗れさるか
  • 経済覇権の交代か

<「衰退国家のあえぎ」>

債務国にとって、債権国は独裁者並の力を持つこともある。金融問題を抱え込んだ政府は、しばしば国際通貨基金(IMF)に助けを求め、主要な債権国に言われる通りに行動し、IMFは緊急融資を提供する代わりに、厳格な改革の条件(コンディショナリティ)を債務国に強要する。

1990年代末のアジア金融危機後、クリントン政権のミッキー・カンター通商代表は、IMFの役割を「破壊槌=カナテコ」と呼んで賞賛した。IMFが課したコンディショナリティによって、アジア市場がついに開放され、アメリカの製品を輸出できるようになったからだ。

1956年のスエズ危機の際には、アメリカはイギリスに対して「スエズ運河から撤退しない限り、金融支援を停止する」と迫った。当時のイギリス首相で、スエズからの撤退という、危機における「最後の、屈辱的な局面」の指揮をとったハロルド・マクミランは後に、あの瞬間が「衰退する国家の最後のあえぎだった」と当時を振り返り、「200年もすれば、あの時、われわれがどう感じたかをアメリカも思い知ることになるだろう」と語っている。

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