1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

米国に関する論文

核の平和利用、石油シーレーンの安全確保などをめぐってアメリカとインドが急接近しつつある。一方、中国をこれまで安全保障上の脅威とみなしてきたインドと中国の関係も経済・貿易を軸に改善へと向かいつつある。対中封じ込めのためにアメリカはインドとの緊密な関係を形成しようとしていると考える専門家もいれば、インドには対中封じ込めに加担する気はないし、そもそも、アメリカにも対中封じ込めの意図はないと指摘する専門家もいる。中国とインドの台頭によって急激に動きだした南アジア秩序再編の流れを検証する。

イラク・パースペクティブ・プロジェクト
―― サダム・フセインの幻想

2006年4月号

ケビン・ウッド/防衛アナリスト
ジェームズ・レーシー/米統合軍司令部軍事アナリスト
ウィリアムソン・マレー/米海軍大学歴史学特別客員教授
マイケル・ピース/「イラク・パースペクティブ・プロジェクト」共同執筆者
マーク・スタウト/「イラク・パースペクティブ・プロジェクト」共同執筆者

米統合軍司令部は、2004年に作戦分析統合センター(JCOA)に、イラク戦争中にサダム・フセインが何を考えて、どのように行動していたかを分析するように命じ、その分析結果が『イラク・パースペクティブ・プロジェクト――サダム政権高官はイラク自由作戦をどうみていたか』という200ページを超えるリポートにまとめられ、2006年3月24日に公表された。フォーリン・アフェアーズ英語版5・6月号には、JCOAリポートの筆者であるケビン・ウッド、ジェームズ・レーシー、ウィリアムソン・マレーがその主要なポイントを抜粋し、まとめなおした「サダムの幻想」が掲載されている。ケビン・ウッドをプロジェクトリーダーとするイラク・プロスペクティブ・プロジェクトの分析チームは、イラクに関して公開されている情報を入念に調べあげた上で、イラクへ向かい、現地でイラク政府・軍高官の聞き取りを行うとともに、押収したイラク政府文書を精査した上で、この2年がかりのプロジェクトを分析報告として発表している。邦訳分は、フォーリン・アフェアーズには掲載されていない、米統合軍司令部JCOAリポート「イラク・パースペクティブ・プロジェクト」の統括部分からの抜粋・要約。日本語版では次号(6月10日発売5月号)に「サダム・フセインの幻想」の全文を掲載予定。(フォーリン・アフェアーズ日本語版編集部)

エネルギー資源輸出国のロシア、経済成長を支えるのに必要なエネルギー資源を求める中国。互いの経済的必要性を満たす両国の接近を自然のなりゆきと考える専門家も多い。だが、両国の接近は貿易領域に留まらない。「アメリカの影響力を封じ込める」という共通の戦略目標を掲げる中国とロシアは、貿易だけでなく、中央アジアにおける資源開発や安全保障、そして、北朝・イランの核開発問題をめぐっても協調・共闘路線をとっている。両国は、アメリカの覇権に対抗するために広範な領域での外交問題について政策のすりあわせを行い、協調している。また、「ロシアが中国の後ろ盾となれば、経済的にも軍事的にもますます日本の立場は危うくなる」と中ロ連合の日本への余波を指摘する専門家もいる。アメリカの覇権に対抗する中ロ連合を軸に、東アジアの地政学はどう変化していくのか。

イラク戦争の情報と政策

2006年4月号

ポール・R・ピラー/前米中央情報局(CIA) 近東・南アジア情報分析官

ブッシュ政権は政策を決める判断材料として情報を用いるという、政策と情報の通常のモデルを逆さにし、すでに下されている政治決断を正当化するために情報を選択的に用いた。米情報コミュニティーのイラクの大量破壊兵器(WMD)に関する間違った情報分析が政策決定者に判断を誤らせたわけではない。むしろ、イラクに関する戦前の情報収集・分析に関して特筆すべきは、この数十年間でもっとも重要なアメリカの政策決定において、情報がほとんど無視されたという点にある。ブッシュ政権は、イラク戦争に向けて米市民を動員するために生の情報を選択的に利用したにすぎない。

CFRミーティング
米印核合意を支持する

2006年4月号

スピーカー 元駐インド・アメリカ大使 ロバート・ブラックウィル
司会 CNN国家安全保障担当記者 デービッド・エンソア

アメリカ内でインドとの核技術協力に反対する人々は、「インドの核施設のほぼすべてを国際原子力機関(IAEA)の恒久査察体制の下に置くしかない」と主張し、インドの核武装は南アジア、そして国際的な不安定化要因であり、インドの核武装解除を目的にすべきだと明言する。一方インドは合意の条件としてIAEAの査察下に置くべきとされる核施設の数が多すぎると反発し、これでは核抑止力が弱まり、いずれ抑止力そのものを失うことになると危機感を抱いている。核不拡散レジームに参加しないまま核を保有したインドに民生用核技術と燃料を提供することのバランスシートは何か。

核合意は核不拡散体制を脅かす

2006年4月号

ストローブ・タルボット/前米国務副長官

ブッシュ政権は今回の米印核合意をつうじて、「われわれは世界を『良い国と悪い国』、あるいは『良い国、悪い国、どちらともいえないあいまいな国』に区別し、まちがいなく良い国なら、核不拡散条約(NPT)の例外措置を認める」と表明したようなものだ。クリントン政権で国務副長官を務めたストローブ・タルボットは、「今回の合意の余波によって、すでに形骸化し始めているNPTがさらに弱体化していくこと」を憂慮し、インドにNPTの例外措置を事実上認めた以上、「今後、同様の例外措置の適用を望む国が出てくると思われる」とコメントした。現在ブルッキングス研究所の会長を務める同氏は、「われわれが良い・悪い、信頼できる・信頼できないという基準で、NPTの例外措置を認めるかどうかを決めれば、NPT体制は崩壊する」と警鐘を鳴らした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。邦訳文は英文からの抜粋・要約。

CFRブリーフィング
戦争から3年を経たイラクを検証する

2006年3月号

ヒラリー・シンノット 前暫定占領当局(CPA)南部担当コーディネター。英国国際戦略研究所コンサルティング・シニアフェロー ニール・ローゼン ニュー・アメリカ財団研究員、『イラクにおける「殉教者」の勝利』が近く出版予定。 マイケル・オハンロン ブルッキングス研究所シニア・フェロー マリナ・オッタウェイ カーネギー国際平和財団シニア・アソシエーツ マイケル・ルービン 中東クォータリー誌編集長、アメリカン・エンタープライズ研究所のレジデントスカラー 

ゲリラ勢力がシーア派の聖地であるアスカリ聖廟(せいびょう)を爆破したことをきっかけに、イラク戦争後最悪の紛争がイランで発生し、すでに数百人のイラク人が犠牲になっている。「イラクは低強度紛争状態にある」とみなす専門家も多い。一方で、すでにイラクでの流れは変化し、スンニ派、シーア派の武装組織の攻撃の応酬がすでにかつてのレバノンのような暴力の連鎖と無秩序をつくり出しているとみる専門家もいる。ここで考えるべきは、「米軍部隊がバグダッドに攻め入ってから3年、ワシントンがこの戦争に勝利しつつあるのか、それとも敗れつつあるのか」という設問だろう。情勢はさらなる混乱へと向かうのか、それとも、アメリカの行動には関係なく、何とか管理できる紛争、低強度紛争が今後も続くのか。

CFRブリーフィング
有志同盟による対イラン経済制裁か

2006年3月号

Robert McMahon(Deputy Editor, www.cfr.org)

イランの核開発問題が国連安保理に付託され、テヘランにウラン濃縮をやめさせるための経済制裁をとりまとめられるかどうかが注目を集めている。アメリカとヨーロッパの外交官たちは、イランに圧力をかけるには安保理として何らかの行動を示す必要があると考えているが、イランと経済的に深い絆をもつロシアと中国は、イラン危機への対処策として経済制裁を導入することを事実上拒否している。このため、国連安保理の枠外での経済制裁に向けた多国間連帯をまとめることを求める専門家もいる。例えば、核不拡散政策教育センター所長のヘンリー・ソコルスキーは、イラン経済にとって非常に重要な工作機械や物質を輸出しているイタリア、ドイツ、フランスの禁輸措置への協力が特に重要だとし、イランが国内用原油の精製について外国に依存していることに注目すべきだと指摘する。邦訳文は英文からの抜粋・要約。

CFRタスクフォース・リポート
イランの核開発危機を検証する

2006年3月号

パネリスト 米外交問題評議会(CFR) シニア・フェロー(科学技術担当) チャールズ・D・ファーガソン CFRシニア・フェロー(ロシア・ユーラシア担当) スティーブ・R・セスタノビッチ CFRシニア・フェロー(中東担当) レイ・タキー プロジェクト・ディレクター CFRシニア・フェロー リー・フェインシュタイン

イランは核開発と国家アイデンティティーを重ね合わせだしている。核開発はタカ派政権のアジェンダではなく、イランの国家的なアジェンダになりつつある。(R・タキー)

イランへの軍事攻撃の可能性は低い。……ブッシュ大統領は「イランの核の平和利用は認める」とすでに発言しているし、ロシアが示している妥協案にも前向きだからだ。(C・ファーガソン)

ロシアの目的はイランから(核開発放棄の)合意を引き出すことにあるのか、それとも玉虫色の発言を引き出すことにあるのか、はっきりしない。(S・セスタノビッチ)

NPTを踏みにじっているにもかかわらず、イランは「自分たちはNPTで認められた核の平和利用を行う権利をもつ」と争点をすり替えている。(L・フェインシュタイン)

新エネルギー安保を構築せよ  
――現実に即した新パラダイムを

2006年3月号

ケンブリッジ・エネルギーリサーチ・ アソシエーツ(CERA)理事長 ダニエル・ヤーギン

先進国ではエネルギー安保とは十分な供給を妥当な価格で確保することと考えられているが、産油国、途上国にとっては別の意味合いをもつ。需要ショックを経験しているいまや、供給ショック、先進国の立場だけを前提とする現在の安保システムでは状況に対応できない。需要の高まりだけでなく、テロの脅威、産油国の政治的混乱、紛争、石油シーレーンでの海賊行為という問題も、エネルギー安保の脆弱性を高めている。中国とインドを先進国のエネルギー安保システムに参加させ、世界のすべてのサプライチェーンとインフラを守り、危機に際しては規制を柔軟に緩和し、国際情勢を十分に視野に入れた新たな安全保障構想を構築する必要がある。

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