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米国に関する論文

ブッシュの一般教書演説を読み解く
――イラクとガソリン消費の削減

2007年1月号

ナンシー・E・ローマン 米外交問題評議会(CFR) ワシントンプログラム・ディレクター

ブッシュ大統領が一般教書演説でイラクへの米軍増派戦略への支持を強く求めたのは、予算承認権を持つ議会が、増派策を予算面から切り崩そうと試みる危険があることを認識していたからだ。実質的に大統領は「しばらくの間、この戦略にチャンスをくれないか」と議会に訴えかけたと指摘するナンシー・ローマンは、大統領がイランの核開発問題についても簡単なコメントに留めたのは、増派によって「バグダッドの治安を確保して流れをつくりだし、イラク問題で活路が見えてくれば、イランについても有利な状況をつくりだせる」と考えているからだと指摘する。また、外交ではなく、国内領域のアジェンダを重視し、ガソリン消費の削減に向けて包括的で大胆な措置をとると約束したのは、「外交領域ではレームダックに陥らざるを得ない」ことを大統領が認識しているからだろうとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRブリーフィング
アメリカはガソリン消費を削減できるか

2007年1月号

デビッド・G・ビクター 米外交問題評議会(CFR) 科学技術担当非常勤シニア・フェロー、ロバート・マクマホン www.cfr.org 副編集長

この30年間にわたって、アメリカ政府は車の燃費改善に向けた大がかりな措置を導入しようとはしなかった。1990年代以降は、大きなトラックやスポーツ・ユーティリティー車(SUV)の市場での人気が高まり、新車の平均燃費は向上するどころか、低下するようになった。だが、昨今では輸入石油への依存の高まりが危険視され、二酸化炭素排出による地球温暖化問題が再度注目されるようになり、ガソリン消費の削減に向けた措置も検討されている。ブッシュ大統領は、1月24日の一般教書演説で、10年以内にアメリカのガソリン使用量を20%削減させるという大胆な構想を発表した。実際にそうできるかどうかの鍵を握るのが、バイオ燃料(エタノール)の開発と、燃費の改善だ。だが、エタノールの開発をめぐっては、その現実性をめぐってさまざまな議論があるし、燃費の改善についても、各種利益団体の圧力で議会は身動きがとれなくなる恐れもある。

いまこそ、包括的中東和平を試みよ

2007年1月号

エドワード・P・ジェレジアン 元駐イスラエル米大使

アラブ・イスラエル紛争に始まり、イラクの混迷、イラン問題、中東地域全域での政治・経済改革の必要性、過激主義、そしてテロリズムにいたるまでの、中東における主要な問題のすべては、不可分に結びついている。一部の問題の管理を試みても、この地域が抱える一連の問題を解決することはできない。アラブ・イスラエル紛争の平和的な解決と、中東全域での政治・経済改革を促してイスラム世界の穏健派を助けることをアメリカの政策目標に据え、包括的交渉戦略をとる以外に手はない。いま求められているのは、中東の平和構築に関与していくという政治的意志である。

CFRミーティング
ヒラリー・クリントンが語る
世界を混乱に陥れたブッシュ外交

2006年12月号

スピーカー
ヒラリー・クリントン/米上院議員
司会
ピーター・G・ピーターソン/米外交問題評議会理事長

「アメリカ人は常に、理想主義と現実主義間の創造的な緊張、つまり、世界の現実をそのまま受け入れようとする一方で、かくあるべきと考える状況へと世界をつくり替えたいという熱意の葛藤がつくりだす緊張に正面から取り組んできました。だがブッシュ政権は、この緊張に直面することを回避して、短絡的に世界を善と悪の二つに切りわけ、悪とみなす勢力との対話を拒絶しました」 (H・R・クリントン)

情報と戦争の歴史
――カルタゴの戦いから対テロ戦争まで

2006年11月号

デビッド・カーン 歴史家

19世紀に陸軍参謀部が情報収集を制度化し、第一次世界大戦期に無線傍受が重視されるようになり、第二次世界大戦と冷戦期には、情報担当官は、戦場の司令官同様に大きな役割を果たすようになった。だが、情報があっても、戦力がなければそれを生かせない。情報によって作戦の焦点を絞り、効率化を図り、戦場での優位を手にできるが、敵に勝利するには戦力が必要だ。非国家アクターに対する水面下での戦いをめぐって情報がかつてなく重視されている現在の対テロ戦争にしても、同じことが言える。

新しい中東
――アメリカの時代の終わりとイランの台頭

2006年11月号

リチャード・N・ハース 米外交問題評議会(CFR)会長

第1次湾岸戦争が中東におけるアメリカの時代を開いたのに対して、ワシントンが自ら戦争の道を選択した第2次湾岸戦争は、中東におけるアメリカの時代を唐突に終わりへと向かわせた。次なる中東秩序では、外部勢力の影響力は穏当なレベルにとどまり、現地の勢力、つまりイランが大きな力を持つことになる。イラクに対してだけでなく、ハマスとヒズボラに対しても大きな影響力を持つイランは、自らのイメージ通りに中東をつくり替えようとする野心と、その目的を実現するだけの力を持っている。「平和で繁栄し、民主的なヨーロッパのような地域へと中東を生まれ変わらせる」というビジョンが実現されることはもうあり得ない。より可能性が高いのは、アメリカと世界、そして自分の地域を大いに苦しめるような「新しい中東」が誕生することだ。

CFRインタビュー
核実験は政治的デモンストレーションだ

2006年11月号

ゲリー・サモア 米外交問題評議会副会長

北朝鮮が(交渉から離脱してミサイル実験・核実験を強行するという)より攻撃的な路線をとることを決めたのは、アメリカが2005年秋に発動したマカオの銀行の北朝鮮関連口座に関する金融制裁措置が背景にある。「核実験を行い、自分たちが核武装国家であることをはっきり知らしめれば、金融制裁を科しているアメリカを追い込めると考えたのだろう」。北朝鮮が核実験に踏み切った動機をこう分析するサモアは、今回の安保理の経済制裁決議を評価しつつも、決議の内容は「北朝鮮が生き延びていくために必要な外国からの援助や取引に直接的な影響を与えるようなものではなく、むしろ、北朝鮮は、中国と韓国が、体制の存続を脅かすような制裁から守ってくれることを依然として期待している」とコメントした。

CFRインタビュー
いまこそ平壌を外交路線に引き戻せ

2006年11月号

アラン・D・ロンバーグ ヘンリー・スチムソン・センター シニアアソシエート

「交渉路線に門戸を開いている」と表明しつつも、交渉を続けてもどうにもならないとブッシュ政権は考えており、当面、北朝鮮を締め上げるしかないとみている。北朝鮮も交渉に戻ることに利益があるとは考えておらず、核実験に踏み切ったのはこうした情勢判断をしたからかもしれない。また、核問題よりも、北朝鮮情勢の流動化を回避することを戦略的観点から重視している中国は、韓国同様にアメリカの強硬路線と歩調を合わせるとは思わない。こうした環境にある以上、2005年9月19日の原則合意を先に進めるために、アメリカが北朝鮮を交渉の場に引き戻す努力をするのかどうかで今後は左右されるとロンバーグはみる。2005年の合意は関係勢力のすべてが重視する適切な方向性を示しており、そのなかには、北朝鮮の非核化も含まれている、と。

核拡散後の世界

2006年10月号

スティーブン・ピーター・ローゼン ハーバード大学・ジョン・オリン戦略研究所所長

イランが弾道ミサイルで中東全域を射程に収め、アメリカやヨーロッパに対しても(船舶その他の方法で)核攻撃を行う力を得る。サウジアラビアとトルコも、恐怖、あるいはライバル意識に突き動かされて、核武装する。アジアでも、中国、インド、北朝鮮、パキスタン、ロシアという核保有国に加えて、日本と台湾がアジアの核保有国の仲間入りをする可能性もある。仮に現実がこのように推移するとしたら、この新しい世界における戦略的な流れはどのようなものになるだろうか。核大国の一方で、数多くの核小国が共存するようになれば、冷戦期の抑止理論、軍備管理論は陳腐化する。

指導者に求められるリーダーシップと戦略
――政策ビジョンと文脈を読む知性

2006年10月号

ジョセフ・S・ナイ
ハーバード大学政治学教授

指導者には、未来を正確に描き出し、その意味を人々に知らせる政策ビジョンが必要になるし、そのような、すぐれたビジョンを示すには、世界情勢を的確に分析し、現実主義とリスク、理念と能力間のバランスを適切に判断することも求められる。そして、「感情的な知性」も「コミュニケーションスキル」も必要だ。これは人々を魅了する指導者の知識と原則、そして表現力と言い換えることができる。さらには、政策を立案し、遂行するために政府を管理する能力も必要になる。とりわけ重要なのが、「文脈を読む知性」だ。これは、変化する環境を理解し、流れに即して目的を実現するための資源投入量を判断する能力のことだ。かつてビスマルクはこれを、指導者が歴史を切り開き、部下の掌握を試みる際に必要になる「神の足音に耳を傾ける責務」と呼んだ。

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