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米国に関する論文

核兵器を削減し、核不拡散を強化せよ
――軍事戦略の中枢に核兵器を据えることの誤り

2007年10月号

ウォルフガング・K・H・パノフスキー /スタンフォード大学リニア・アクセラレーター研究所名誉所長(量子物理学)

現状においてアメリカが核戦力を維持することの利益は、他国による核兵器の使用を抑止することだけである。したがって、アメリカの軍事戦略の中枢に核兵器を位置づける理由はもはや存在しない。一方で、アメリカが核の役割を大幅に低下させ、核兵器の削減にコミットし、核不拡散に向けた多国間構想を強化すべき理由は数多くある。この方向での取り組みをみせれば、アメリカが内外での核の削減に本気であることをアピールできる。こうした路線をとって初めて、アメリカの国家安全保障は強化されることになる。

CFRミーティング
核戦争の危険を低下させるには
――他国と協調して脅威を抑え込むか、
それとも壊滅的事態に直面するか

2007年10月号

スピーカー
サム・ナン/元米上院議員
司会
ジェームス・ホーグ/フォーリン・アフェアーズ誌編集長

60年間、核戦争が起きなかったからといって、われわれが安心する理由はどこにもない。今後も、一度や二度、幸運に恵まれる程度では、核戦争を回避するのは難しいかもしれない。核の惨劇を回避できるとすれば、すべての核保有国が核管理をめぐってきわめて慎重な態度をとり、賢明で合理的な判断をするだけでなく、幸運に恵まれる必要がある。……われわれが現在直面する最大の脅威は、壊滅的なテロ、核保有国の数の増大、そして核の偶発使用であり、これらの脅威に対処していくには、モスクワ、北京、その他と協調していかなければならない。他国と協調して脅威を抑え込むか、それとも壊滅的事態に直面するかという選択肢にわれわれは直面している。(S・ナン)

CFRインタビュー
イラクからの撤退か、増派策の遂行か

2007年9月号

スティーブン・ビドル 米外交問題評議会シニア・フェロー

多くの議会指導者は、大統領が想定する増派路線よりも少ない戦力で活動し、完全な撤退はしないという中道路線を重視している。……その理由は、彼らが、大統領の増派路線が不評であること、そして一方で、犠牲を引き受けるのをやめて撤退するのも政治的に敗北を認めることにつながることを理解しているからだ。だが、この程度の戦力では、任務上の有意義な成果を上げることは期待できない。数万人の兵士を残留させても、米軍がテロ集団のターゲットにされるだけの話だ。つまり、何か有意義なことをするにも、犠牲者を少なくするにも規模が小さすぎる。論争されている路線の両極端に位置する二つの選択肢、つまり増派か完全撤退策のほうが、その間に位置する路線よりも合理性がある。(スティーブン・ビドル)

CFRインタビュー
米軍増派とスンニ派との協調でイラクは安定化へと向かいだした

2007年9月号

マイケル・J・ミース 米陸軍士官学校政治学教

スンニ派の部族が米軍との協調を求めてきたのは、アルカイダのイデオロギーがシャリア(イスラム法)を基盤とする過度に厳格なものであることにスンニ派も気づきだし、最終的にタリバーン流のイデオロギーを拒絶したからだ。地方における治安の安定化をもたらしている米軍とスンニ派の協調がなぜ実現したかについて、ウエスト・ポイント(米陸軍士官学校)の政治学教授で、イラク駐留米軍のペトレイアス司令官の顧問を務めるマイケル・ミース大佐は、こう指摘する。「イラク・アルカイダ機構は、組織に忠誠を尽くす人物の結婚相手に部族長の娘を差し出すように強要し、気に入らぬ者の首をはねることも気にかけなかった」。スンニ派が嫌がることをアルカイダが無理強いし、大量虐殺を行うなか、スンニ派部族も「もうたくさんだ」と考えるようになった、と。邦訳文は英文からの抜粋・要約。ミースの意見は彼個人のもので、ペンタゴンの公的立場とは関係ない。聞き手はグレッグ・ブルーノ(www.cfr.orgのスタッフ・ライター)。

CFRミーティング
S・ハドレー大統領補佐官が語るイラクの行方
―― 増派策の成功を拡大し、政治的和解を進めるには

2007年9月号

スピーカー スティーブン・ハドレー 米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)
司会 トマス・R・ピカリング 元米国連大使

イラクのスンニ派部族がアルカイダに立ち向かうために、米軍やイラク政府と協調するようになったように、シーア派の部族が、イランの支援を受けたマフディ軍団に立ち向かうような環境を作る手助けができればと思う。そして、バグダッドのイラク政府が、こうした二つの流れを、脅威としてではなく、うまく生かすべき機会として捉えるようにわれわれは強く働きかける必要がある。スンニ派、シーア派の部族集団が米軍やイラク政府と協力するように働きかけ、治安の確保に向けた流れを作り出し、人々が安心して暮らせるような環境を作る必要がある。これを、われわれはボトムアップ型の政治的和解プロセスと呼んでいる。……今後政治的に必要なのは、イラクの連邦制がどのような形態のものになるか、それがいかに機能するかについて、(シーア派、クルド人、スンニ派)三つのグループが共有できるビジョンを形作ることだ。……われわれが、破綻したイラクを(アメリカの)次期政権に委ねることはない。成功を収めつつあり、継続する価値のある路線を新政権に託すことになるだろう。

米議会は米印核合意を阻止する

2007年9月号

エドワード・J・マーキー

インドがアメリカに対して、友人であることの証に核不拡散政策を曲げるように求め、それをアメリカが受け入れればどうなるだろうか。パキスタンは中国に対して同じことをしてほしいと求めるかもしれない。仮に核供給国グループ(NSG)や国際原子力機関(IAEA)が、インドとアメリカの核合意を成立させるためにルールからの逸脱を例外措置として認め、その後、パキスタンの要請を受けた中国が同様の例外措置をパキスタンに適用するように求めればどうなるだろうか。アメリカが公然とダブルスタンダードを使い分けておいて、核不拡散の高い基準を維持できるはずがない。そんなやり方は通用しない。自分でたばこを吸い、酒を飲むのに、若者にそうしてはいけないと言って説得力があるだろうか。ブッシュ政権は現実に目を向けていない。米印核合意は、核拡散のドミノ倒し現象を引き起こしかねない。しかし、米議会は、まだ合意を阻む権限を持っている。(エドワード・マーキー)

アメリカはアラブ世界、特にスンニ派の指導国であるサウジアラビアが、イラクのスンニ派の政治指導者に国民和解政府の樹立に向けて努力するように働きかけることを望んでいる。だが、イランの強大化を懸念するサウジは全く逆の路線をとっている。サウジアラビア政治の専門家であるグレゴリー・ゴースは、「マリキ政権がイランの傀儡政権である以上、マリキ政権を支援すれば、イランの影響力拡大を抑え込むという目的からの逸脱になる、とリヤドでは考えられている」と指摘する。イランの強大化を抑え込むという目的は共有しつつも、アメリカとサウジは全く逆のアプローチをとっていることになる。そこに、イランの強大化を抑え込むことを最優先するサウジと、イランの強大化を懸念しつつも、イラクの安定化を重視するアメリカとの間に温度差があるからだ。アメリカはアラブ諸国への武器売却を決定し、秋の中東和平会議を成功させたいと考えているが、サウジは、すべての流れを対イランの構図で捉えている。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
イラクをめぐるアメリカとアラブの同床異夢?

2007年8月号

タマラ・コフマン・ウィッテス ブルッキングス研究所シニア・フェロー

イラクの政治的安定化は、憲法改正、石油からの歳入の分配などの重要案件をめぐる意思決定の場に、イラクのスンニ派指導者が参加するかしないかで左右される。ワシントンは、サウジアラビアなどのアラブのスンニ派諸国が、イラクのスンニ派勢力に対して、「イラクの意思決定に参加して、シーア派と和解するように」と働きかけることを望んでいる。だが、「そうしたアメリカの期待にスンニ派諸国の指導者が応じる可能性は低い」と中東政治の専門家、タマラ・コフマン・ウィッテスは指摘する。シーア派主導の体制がイラクで確立されることをひどく警戒しているスンニ派アラブ国家は、そのリスク回避策として、イラクのスンニ派勢力のなかでも、シーア派主導の政府にもっとも強い抵抗をしている勢力を支援してきた経緯を持っている、と。だが、アメリカはそうしたスンニ派諸国に武器売却を認め、同盟関係を強化しようとしている。イラクの混乱、イランの強大化、そして、パレスチナが分裂するなかでの中東和平構想の浮上と、状況が錯綜するなかで、アメリカはなぜスンニ派諸国との関係を強化しようとしているのか。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
北朝鮮、イラン、インドと核拡散の行方を考える

2007年8月号

ジョージ・パーコビッチ カーネギー国際平和財団 研究担当副会長

「核兵器とプルトニウムは、平壌の指導者が経済利益を引き出し、彼らの考える安全を保障するための戦略的資産である。そうした切り札をなぜ平壌が放棄すると考えるのか、私には理解できない」。北朝鮮との合意がうまくいく保証はどこにもないと考える核不拡散問題の専門家、ジョージ・パーコビッチは、北朝鮮に続いて、イランが核武装することを現状における最大の脅威とみなし、何としても、中国とロシアを欧米の路線に同調させて、安保理、国際社会の団結をイランに対して示すことで、テヘランの自制を求める必要があると強調した。また、「いかなる国も核兵器を生産すべきではないし、核を必要としている国は存在しない」と宣言すべき歴史的節目にあるにもかかわらず、ブッシュ政権が、国際ルールを曲げて、インドとの核協力合意をとりまとめつつ、一方で核兵器の生産制限に関する約束をインドから取り付けなかったのは、ブッシュ政権内の一部に、「中国を牽制するためにはインドはもっと核を保有すべきだ」と考える者がいたからだと批判した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRヒストリーメーカー・シリーズ
ウィリアム・ペリーが語る
イラン、イラク、北朝鮮危機

2007年8月

スピーカー
ウィリアム・J・ペリー 元米国防長官
司会
ジョン・マックウェシー ABCニュース国防担当記者

「米議会にとって北朝鮮との合意は毒そのものだった。(1994年の)枠組み合意が結局は不本意な結果に終わった多くの要因は、おそらくここにあると思う。問題は合意内容を履行するかどうかよりも、政治的な側面にあった。私はいまも、合意内容を完全に履行するのに必要な議会の政治的支持を得られないと判断した大統領と国務長官の読みは間違っていなかったと考えている。枠組み合意は、北朝鮮だけでなく、われわれの手で圧殺された。政治的にきちんと合意をフォローアップできていれば、状況はいまとは全く違うものだったかもしれない」(ウィリアム・J・ペリー)

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