1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

米国に関する論文

核の脅威を誇張するのは止めよ
―核の惨劇を回避できる見込みはかつてなく高まっている

2009年6月号

マイケル・クレポン ヘンリー・スチムソンセンター共同設立者 

今も世界は核の危険にさらされているが、脅威を削減するのに、脅威を過大視する必要はない。政治家と核不拡散の専門家が警告を発するのに、人々の危機意識をことさらに高める必要はない。国際政治において核を保有することの重要性と意味合いはかつてなく低下している。辛抱強く、一貫した外交を展開してきたことで、いまや核不拡散はグローバルな規範となり、これを受け入れていないのはごく一部の諸国に過ぎない。しかも、すべての安保理常任理事国、そしてインド、イスラエル、パキスタンは「核によるテロリズム」という共通の脅威に直面しており、この共通の脅威の存在が、核不拡散を試みていくための国際的協調基盤を提供している。

CFRブレス・ブリーフィング
最大の脅威はタミフルが
効かないウイルスへと
A(H1N1)が変異していくことだ

2009年6月号

ローリー・ギャレット CFRシニア・フェロー(グローバル・ヘルス担当)、ロバート・マクマホン www.cfr.orgのアクティング・エディター

「なぜ若年成人層がA(H1N1)のリスク・グループになっているかを考える必要がある。この場合に、免疫の弱っている人々、HIV感染者にどう作用するかを考えることも重要だ。次に、致死率を把握する必要がある。そしてウイルスの特性を突き止めなければならない。とくに、2008年9月からアメリカに姿を現し始めた豚インフルエンザとの関係を明らかにしなければならない。そしてタミフルへの耐性を持っているかどうかをつねに警戒しなければならない。すでにタミフルへの耐性を持っている季節型H1N1ウイルスと、今回の新型ウイルスが結びつけば非常に厄介なことになる」。

邦訳文は豚インフルエンザの発生直後、WHOが警戒レベルを4に引きあげるさなかの4月28日(現地27日)に開かれたCFRのプレス・ブリーフィングからの要約。現状でも関連性が高いと思われる部分だけを訳出した。全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

国家資本主義の台頭と市場経済の終わり?

2009年6月号

イアン・ブレマー ユーラシア・グループ会長

グローバルな金融危機にもかかわらず、国営石油企業が依然として世界でもっとも戦略性の高い資源の75%を支配し、国有企業そして政府の後ろ盾を持つ民間の覇権企業が、民間のライバル企業に対する競争上の優位を持っている。しかも、政府系ファンドは依然として潤沢な資金を持っている。本当に大きすぎて潰せないのはこれらの企業や組織のほうだろう。いまや市場経済の勢いは弱まり、国と政府が主要な経済アクターとして、主に政治的利益のために市場を利用しようとする「国家資本主義」が台頭し始めている。(冷戦期のような)政治的イデオロギーではなく、「市場経済」と「国家資本主義」という2つの経済モデルをめぐるグローバルな抗争という構図が生まれつつある。しかも、グローバルな金融危機とリセッションによって、「国が管理する資本主義」という強力なブランドが突きつける問題と課題はますます大きくなってきている。

Classic Selection 2009
金融危機後に出現する世界の姿は
―世界を主導するのはアメリカ、中国、それとも・・・

2009年6月号

スピーカー
ジョセフ・ナイ/ハーバード大学教授
フィリップ・ゼリコー/バージニア大学教授
司会
リチャード・メドレー/メドレー・キャピタル・マネジメント

「G2という枠組みで今後を捉えるのは間違いだと思う……世界が日本に期待している役割を果たしていくことを東京は真剣に考えるようになった。……より大きなポイントは中国が経済成長のモデルを見直すかどうかだ。今回のリセッションを脱した後も中国がこれまで同様に輸出主導型の成長戦略をとり、経常黒字をますます積みましていくようなら、国際システムは再び大きな圧力にさらされる」。(J・ナイ)

「全般的に『イギリスからアメリカへ』というかつての構図が、いまや『アメリカから中国へ』という構図として再登場している。ポイントは、世界にバランスよく資本を振り分けるとともに、グローバル経済を刺激するような内需を作り出す役割を中国が引き受けるかどうかだ」。(P・ゼリコー)

金融制裁と銀行の役割
―金融でならず者国家を孤立させるには

2009年5月号

レイチェル・L・ロフラー 前米財務省グローバルアフェアーズ担当 副ディレクター

北朝鮮やイランを標的とするアメリカの最近の金融外交は、各国の政府だけでなく、民間の金融機関にも協力を求めるようになり、その結果、金融制裁はかなりの成果を挙げるようになった。ワシントンは要注意のブラックリストを公表し、各国の銀行はこのリストから疑わしい資産を突き止め、怪しげな取引を阻止し、問題のある個人や組織が世界の金融システムを悪用するのを食い止めようと試みている。銀行がこうした制裁措置に協力するのには訳がある。意図的ではなくても、「テロや核兵器の拡散に手を貸している」と新聞で報道されれば、そのブランドが大きく傷つき、ビジネス上の大きな痛手となるからだ。金融制裁は今後も問題国家に対する大きなツールになる。だが、脅威と金融システムが交錯するポイントを明確にせずに、安易に制裁措置を乱発すれば、金融措置を実施する主体である銀行側の協力を得られなくなる恐れがある。

フォーリン・アフェアーズ・コラム
対北朝鮮制裁を行い、金正日後に備えよ

2009年5月号

ビクター・チャ 前米国家安全保障会議アジア担当部長

「短期的には平壌のミサイル発射に対する制裁にむけた圧力をうまく作り出し、一方で、自由で民主的な統一朝鮮に備えた準備を長期的な観点から始める必要がある。……オバマ政権は北朝鮮を再度「テロ支援国家」にリストアップすることも検討すべきだし、金正日後の北朝鮮にどう対処していくかをめぐって中国、韓国との本格的な交渉を水面下で始め、北朝鮮が建設的な路線をとれば、その見返りに安全の保証と経済援助を与えるという取引を示すことで、(日本とともに)、潜在的な平壌の新指導層への接触を試みていくべきだろう」。

アメリカ衰退論は間違っている
―ワシントンは国際システムの改革を主導せよ

2009年5月号

スティーブン・G・ブルックス/ダートマス大学准教授 ウィリアム・C・ウォルフォース/ダートマス大学教授

アメリカ帝国論をめぐって専門家が論争を展開していたのはわずか2~3年前のこと。それが今は、アメリカを唯一の超大国とする一極システムは急速に終焉に向かっていると広く考えられている。だが、事実を冷静に見つめれば、アメリカ帝国論がアメリカのパワーを過大評価していたのと同じくらい、最近の衰退論はアメリカのパワーを過小評価していることがわかる。……世界は新たな課題に満ちあふれているが、現在の国際システムではこれらにうまく対応できない。国際システムを新しい課題に適応できるように変革するには力ある国家のリーダーシップが必要であり、その任務に向けた協調を主導できるのは、衰退などしていないアメリカを置いて他にはない。

イラクかアフガニスタンか、それが問題だ
――オバマ政権の困難な選択

2009年4月号

スティーブン・ビドル 米外交問題評議会国防政策担当シニア・フェロー

「2009年2月末にオバマ大統領が発表したイラクからの撤退計画、つまり、19カ月で戦闘旅団を撤退させ、3万5千から5万の部隊を2011年まで残留させるというやり方は、様々な矛盾する要請のなかで、妥当なバランスを大統領が見極めた結果だと思う」。こう語るCFRの安全保障問題の専門家スティーブン・ビドルは「イラクでの平和維持活動の成功の可能性をどこまで低下させることを受け入れるのか。そして、さらなる増派をすれば、アフガニスタンでの成功の見込みをどこまで高められるか。大統領はこのふたつの矛盾する要請の間のバランスをとろうと試みている」と指摘する。問題はアフガンへの戦力増強が、イラクの不安定化というリスクを伴うことだ。アフガニスタンへの戦力増強のためにイラクから必要以上に速いペースで撤退すれば、イラクは再び内戦へと逆戻りしてしまうかもしれない。「そこにリスクフリーの選択肢はなく、バランスをとるしかない」と同氏は語った。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

アメリカは日本の「失われた10年」と同じ道をたどるのか
―― 日米のバブル崩壊を検証する

2009年4月号

リチャード・カッツ/オリエンタル・エコノミスト・レポート誌編集長

日本経済の「失われた10年」はその政治経済体制に深く根ざしていた。雇用を保護し、生産性の低い国内の企業と産業を守るために規制が張り巡らされ、企業間の談合がまかり通っていた。結局は、このような政治経済システムが生産性の向上と経済成長のポテンシャルを抑えこんでしまった。対照的に、2007年~2008年に起きたアメリカのサブプライム・モーゲージ・ローンをめぐる大失策は、日本のような「手に負えない構造的問題」ではなく、主に行き過ぎた(規制緩和)イデオロギーと金融ロビイストの影響力が重なり合って引き起こされた政策上の間違い、それも修正可能な間違いに派生している。もちろんアメリカの金融危機には、日本の場合よりもはるかに憂慮すべき側面が一つある。それは、アメリカの金融危機がグローバルな波及効果を持っていることだ。だが、悲観論に陥る必要はまったくないし、「アメリカの失われた10年」を懸念する必要もない。……

CFRミーティング
中国は内需を拡大し、為替操作を止めよ
――金融危機と米・アジア関係

2009年4月

パネリスト
セバスチャン・マラビー /外交問題評議会地政経済学研究センター所長
エドワード・アルデン /外交問題評議会シニア・フェロー
エリザベス・C・エコノミー/外交問題評議会アジア研究ディレクター
プレサイダー
ケイ・キング/外交問題評議会ワシントン・プログラム・バイスプレジデント

「米中双方にとって必要なのは、中国がもっと内需主導型の経済へとシフトしていくことだ。中国はこれまでの20年間、輸出主導型の経済成長戦略をとり、その結果、膨大な外貨準備を積み上げ、グローバルなインバランス(グローバル経済の不均衡)を作り出してしまった。これが、米中双方を苦しめている。」(E・アルデン)

「金融部門を規制し、銀行を適切に監督していれば、問題はここまで深刻にはならなかったかもしれない。だが、……規制でどうにかなるとは私は考えていない。膨大な資本が経済システムに流入すると、バブルが発生し、そのバブルが崩壊し、大きな経済的打撃を引き起こすことは避けられないと私はみている。 この意味において、アメリカにとって中国の輸出主導型の経済成長モデルは好ましくないし、中国にとっても好ましくない」。(S・マラビー)

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