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米国に関する論文

ホノルル、ハーバード、ハイドパーク
―― バラク・オバマの政治的変遷

2010年8月号

ウォルター・ラッセル・ミード 米外交問題評議会アメリカ外交担当シニア・フェロー

アメリカの教育システムは人を故郷から遠ざけるようにできている。その狙いは青年をアイオワ州から連れ出すだけでなく、アイオワ州を青年の心の中から追い出すことにある。だが、アメリカで教育を受けて政治の世界を志す者は、このプロセスを逆戻りしなければならない。・・・クリントンはアーカンソー州で、どうしたら現地の人々と心を通わせることができるのか、何を話せばいいのか、そして何を話してはいけないのかを学んだが、ホノルル、ケンブリッジ、シカゴでの経験から、オバマがこれらを学ぶのは無理があった。ニューイングランドの改革主義思想の洗礼を受けているオバマが人種問題を超えた候補者となるには、まず人種問題を正面から受け止め、黒人の文化的背景を身につける必要があったし、ニューイングランド思想に反発するポピュリストにも対処していく必要があった。・・・

21世紀は新興市場国の世紀に
― G20、世銀、IMFの未来

2010年7月号

スピーカー
スチュワート・M・パトリック 米外交問題評議会シニアフェロー国際機関およびグローバル統治プログラム責任者
司会
デビッド・E・サンガー  ニューヨーク・タイムズ ワシントン支局長
パネリスト
ホイットニー・デベボイス 元世界銀行 理事
アルビンド・サブラマニアン ピーター・ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー
アントニー・フォン・アットマール 新興市場マネジメントLLC会長兼チーフ・インベストメントオフィサー

最終的には、アメリカ、ヨーロッパ、日本のような、すでに確立されたパワー、中国、インド、ブラジルのような新興大国、さらには新興のミドルパワーの間でタフな取引と交渉が行われ、その結果、新しい秩序が形成されていくことになる(S・パトリック)

G20は新しいG7に至る通過点にすぎない。新しいG7は、アメリカ、EU、日本、BRICs諸国で構成されることになるだろう(アットマール)

信用格付け会社の功罪

2010年7月号

ロヤ・ウォルバーソン(Staff Writer, www.cf.r.org)

格付け各社がギリシャ、ポルトガル、スペインはデフォルトに陥る公算が高いと示唆する評価を示したことで、世界の金融市場は長期的な混乱に陥っている。一部のアナリストは、格付け会社が国債の価格下落に先んじてではなく、トレンドに追随して国債の格付けを引き下げており、その結果、さらなる市場の下落を招いていると批判している。要するに、アナリストたちは、そうした格付けは金融市場の変動幅を大きくしてしまっていると批判している。すでに、ヨーロッパもアメリカも格付け会社に対する規制策を検討している。しかし、批判にさらされているとはいえ、格付け会社が依然として頼りにされているのも事実だ。「かつて誤った格付けをしたのと同じような様々な証券や債券を格付けするために」依然として格付け会社は頼りとされている。・・・

テッド・ターナーとの対話
― HBOヒストリーメーカー・シリーズ

2010年6月号

スピーカー
テッド・ターナー ターナーエンタープライズ会長
プレサイダー
デビッド・G・ブリンクレー アトランティック・メディア・カンパニー会長

「大きな目的を持つように」と私は父から教えられた。「自分が生きている間には実現できそうにない目的を定めるんだ。そうすれば、つねに前向きでいられるぞ」。これが父の教えだった。私はこの教えを今も守っている。世界から核兵器をなくすことに努力している。世界がもっと真剣に気候変動問題に取り組み、石炭や石油の消費を段階的に減らしていくにはどうすればよいかを考えている。さらに、世界の人口を安定させ、国連がミレニアム開発目標として掲げるように世界から貧困をなくすことも目的にしている。たしかに、どこから手をつければよいか分らない手に負えない目的かもしれない。(笑い) しかし、自分にはもう何もすることがないと心配する必要だけはない。この意味では、私は幸せだと思う。(テッド・ターナー)

「遠征経済学」の薦め
―― 軍は紛争・災害後の社会と経済をいかに立て直せるか

2010年6月号

カール・J・シュラム ユーイング・マリオン・カウフマン財団 理事長兼最高経営責任者

現在の紛争の多くが、経済が弱く、停滞している国で起きているのは偶然でない。軍隊は軍事介入をして社会を安定化させることしか考えていないが、紛争後の安定に必要なのは、紛争前を上回る経済レベルへと相手国を引き上げることだ。イラク、アフガニスタンでの米軍による経済再建努力が成果を上げていないのは、一つには、軍が開発経済学の間違った前提を受け入れているからだ。先進国であれ、途上国であれ、経済成長は、新たに立ち上げられた企業が雇用を創出し、経済全般を刺激することで実現する。しかし、起業が経済復興に果たす役割が、開発経済学ではほぼ無視されている。米軍の軍事計画立案者たちが、戦争や自然災害によって荒廃した国々に活気ある経済を再生したいのなら、硬直的な思考パターンにとらわれている国際開発・援助機関にばかり目を向けるべきではない。むしろ、成功企業を立ち上げた実績を持つ起業家や投資家など、市場での実務経験豊かな専門家に相談すべきだろう。

バーゼルⅢを阻止すべき理由
―― 国単位の規制で多様な危機回避メカニズムを

2010年6月号

マーク・レビンソン 米外交問題評議会 国際ビジネス担当シニア・フェロー

金融危機の余波のなかにある現在、国際機関が規制調和に向けたアプローチを再定義しようと試み、バーゼルⅢが誕生するのではないかという憶測も飛び交っている。だが、国際的な金融規制は合理的対策とはなり得ない。それどころか、金融規制をめぐる国際合意が規制・監督の所在を不明確にしたために、危機を深刻化させてしまった部分がある。国際協調をつうじて金融機関を規制・監督しようと試みるのは重要だが、この試みを、国家レベルでの厳格な規制・監督の実施の代替策にはできない。各国がうまく考案された規制を導入するほうが、国際合意よりもはるかに大きな意味を持つ。むしろ、金融規制をめぐる各国の「多様な」取り組みを国際合意が阻害しないようにしなければならない。金融規制に関しては、国際合意が少なければ少ないほど良い。これがこの35年間の経験からわれわれが学ぶべき教訓だろう。

大きすぎてつぶせない銀行を分割せよ

2010年6月号

スピーカー
リチャード・W・フィッシャー ダラス地区連邦準備銀行総裁
司会
ジョアン・E・スペロ CFRファウンデーション・センター客員研究員

巨大銀行は、産業と地理の境界を越えるコネクションを作り出し、経済や金融市場と様々な方法でつながっている。巨大銀行は他の銀行や金融機関とも深く広く関係している。このため、本当に巨大な銀行が破綻すれば、金融システム全体に問題が波及する。世界中で不良債券のスパイラル的な拡大、多くの雇用と企業を消滅させる信用収縮を引き起こす危険がある。これら巨大金融機関が金融システム全体に有害なウィルスを拡散させてしまうリスクを考えると、予防的なアプローチが好ましいと私は思う。つまり、巨大金融機関を経営陣にとっても規制当局にとっても管理可能なサイズに分割する国際合意を形成すべきだと思う。

米政府はこれ以上の「外交の軍事化」を避ける必要があるし、そのためには、「パートナー国の軍事能力を整備すること」を重視していかなければならない。自ら防衛する国を助けるか、必要なら、相手に装備、訓練、その他の安全保障援助を与えて、米軍の傍らで戦う相手国の戦力を整備していくべきだ。問題は、米軍が外国の軍隊を粉砕することを目的に組織されており、(同盟国やパートナー国に)助言や訓練を与え、装備を調えるのを手伝うようには組織されていないことだ。安全保障をより包括的にとらえ、国務省と国防総省の連携をさらに強める必要がある。(外交を含む)国家安全保障システム内部の不均衡を是正しなければ、アメリカの外交政策の「軍事化」がさらに進む。パートナー国が自ら安全保障を強化できるように支援することは、アメリカ自身の安全保障を強化していく上でも重要な意味を持つ。この重大な任務への取り組みを改善していくことを、アメリカの重要な国家優先事項に据える必要がある。

CFRミーティング
米中貿易摩擦を回避せよ
―人民元改革よりも社会保障改革を求めよ

2010年4月号

スティーブン・ローチ モルガン・スタンレー・アジア会長

連邦準備制度理事会のバーナンキ議長は、将来における経済危機を避けるには米中間の巨大なグローバル・インバランスの是正に直ちに取り組む必要があると警告し、米議会のメンバーの多くも、米中の不均衡は人民元が過小評価されていることが元凶だとみなし、人民元の切り上げが必要だと考えている。だが、スティーブン・ローチは、人民元が過小評価されていることを貿易問題の元凶とみなすのは間違っており、そうした見方は、政治的なまやかしの類にすぎないと言う。インバランスの是正に向けて中国の国内消費を刺激するには、社会保障制度を整備するように北京に働きかけるべきだと提言する同氏は、アメリカの失業率の上昇と低成長が続くなか、米議会が保護主義的な対中法案を成立させれば、それこそ、ドル暴落のきっかけになりかねないと警告した。

複雑系の崩壊は突然、急速に起きる
―― グローバル経済とアメリカという複雑系の将来

2010年4月号

ニーアル・ファーガソン ハーバード大学歴史学教授

歴史は循環的で、その流れはゆっくりとしか変化しないという考えがもし間違っていたら。周期性がなく、静的であるとともに、スポーツカーのように、急発進するとしたら。崩壊プロセスが数世紀という時間枠で進むのではなく、夜の泥棒のように、突然にやってくるとしたら。複雑系には一定の特徴がある。小さな刺激で非常に大きな、そして、しばしば予期せぬ変化が急激に起きることだ。グローバル経済はまさしく複雑系だ。格付け会社による米債券の格付けの引き下げといった、突然の悪い知らせが、緊急ニュースとしてヘッドラインを飾る日がやってくるかもしれない。今後を考える上で、非常に重要な鍵を握るのは、こうした突然の変化だ。過去の帝国や現在のグローバル経済のような複雑適応系では、それを構成する一部の有効性に対する信頼がなくなっただけでも、システム全体が非常に大きな問題に直面する。

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