1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

米国に関する論文

貿易の停滞と海運産業の再編
―― 停止した国際貿易の成長

2016年11月号

マーク・レビンソン
米ジャーナリスト

貿易が大きく拡大する時期には貨物運賃が上昇するため、海運会社はより大きく、より高価な船舶を発注する。しかし3―4年経って船が完成するころには経済状況が様変わりしていることも多く、過剰な積載容量を抱え込んで運賃が低下し、拡大路線をすすめた海運会社が破綻することも多い。現在起きているのはこうした海運業界につきものの景気の波だが、そこに新たな要素が加わっている。2008―2009年に西半球・ヨーロッパならびに一部アジア地域をおそった金融危機の影響で、第二次世界大戦以降初めて、国際貿易の成長がとまってしまったことだ。巨額の損失を計上して経営破綻し、買収・合併され、合弁事業化されるケースが相次いでいる。2015年には、コンテナ取引量はオークランドで5%近く、東京で6%、シンガポール、ハンブルク、香港では約9%と各港で落ち込んだ。コンテナ海運業界の波乱は短期間では終わらないだろう。

戦略目的に合致しない同盟関係の解消を
―― トランプの主張は間違っていない

2016年11月号

ダグ・バンドウ   レーガン政権大統領特別補佐官

トランプの主張するとおり、アメリカの北大西洋条約機構(NATO)政策は時代遅れだ。戦後(・冷戦期)のアメリカにとっては、ヨーロッパの同盟諸国を守る以外に道はなかったかもしれない。だが、当時の軍事関与を正当化したロジックはとうの昔に消失している。同盟関係は戦略目的のための手段でなければならず、現状に照らせば、それはアメリカの安全を強化することだ。同盟関係のコストを問題にするトランプに対して、彼に批判的な勢力は、「同盟諸国は合計すると100億ドルのホストネーション・サポート(受入国による支援)を負担し、米軍の駐留コストを助けている以上、アメリカの戦略コミットメントは高くない」と反論する。しかし、これは事実誤認だ。対外軍事コミットメントを控えれば、ワシントンは年間1500億ドルを節約できる可能性がある。人口が多く、繁栄する世界の工業国家を相手に成り代わって防衛するのは、実質的にアメリカの納税者の税金を、相手国の納税者の富として移転していることになる。

CFR Events
次期米大統領への政策提言
CFR北朝鮮問題タスクフォース

2016年11月号

スピーカー
マイケル・マレン  タスクフォース共同議長
サム・ナン 元米上院議員、核脅威イニシアティブ共同理事長 タスクフォース共同議長
アダム・マウント アメリカ進歩センター・シニアフェロー タスクフォースディレクター
プレサイダー
ジュディ・ウッドラフ PBSニュースアワー アンカー

「すべての提言は、平壌の選択次第で北朝鮮にどのような帰結が待ち受けているかを明確にするとともに、中国の北朝鮮への認識を変化させることを意図している。現状では中国は北朝鮮のことをアメリカの東アジアにおける影響力に対するバッファーとみなしているが、そうではなく、中国の安全保障や地域的な安定に対する脅威としての北朝鮮へと認識を見直させたいとわれわれは考えている」(A・マウント)

「中国との協調を模索しつつも、アメリカ、韓国、日本の3国間関係を強化しなければならない。リポートでは、1国への攻撃であっても自国が攻撃されたとみなす(北大西洋条約機構型の)集団安全保障態勢が必要になると提言した。・・・THAAD(終末高高度)ミサイル防衛システムを配備する必要がある。核弾頭を小型化させれば、北朝鮮はアメリカも攻撃できるようになる」(M・マレン)

「現政権の政策と今回のリポートが示す政策の大きな違いは、経済制裁の成果を待って、その後、交渉に移るのではなく、交渉と制裁を同時に試みる必要があると提言したことだ。・・・中国との率直な交渉も必要になる。中国の利益にも配慮する必要がある。中国なしで、北朝鮮問題を平和的に解決するのは難しい。(もちろん)韓国と日本の抑止力と防衛力を強化する必要がある」(S・ナン)

なぜプーチンは米大統領選挙に干渉したか
―― トランプ支援とロシアの国内政治

2016年11月号(掲載予定)

グレゴリー・フェイファー 米ジャーナリスト

ドナルド・トランプが(「自分はロシアのプーチン大統領を尊敬している」と語ったことで)、プーチンが見逃すはずもない絶好のチャンスが作り出された。互いに相手を気に入っている2人は、「アメリカの政治エスタブリッシュメントを切り崩したい」と考えている点でも立場を共有している。ロシアが外国をターゲットにしたサイバー攻撃を政治的武器として使い始めたのは少なくとも10年ほど前からだが、大統領選挙のさなかに特定の大統領候補を支援しようとアメリカにサイバー攻撃を試みたのは、今回が初めてだ。しかし、プーチンの目的はロシア国内にある。自分が作り上げた統治システムと80%以上の高い支持率を維持していく上で、間違いなく効き目があるのはアメリカに挑戦していることを国内でアピールすることだからだ。これほど確かな得点稼ぎの方法はそう多くない。プーチンにとって、選挙キャンペーンが展開されるアメリカで、自分が話題にされるだけで十分なのだ。

アメリカのTPP批准はほぼあり得ない
―― 何をどこで間違えたのか

2016年11月号

リチャード・カッツ オリエンタル・エコノミスト・レポート エディター

米議会がTPPに批准するかどうか、かなり難しい情勢にある。2人の大統領候補たちも、TPPに反対すると明言している。議会共和党の指導者も11月8日の大統領選挙から12月16日までのレームダックセッションでTPP条約案の採決はしないとすでに表明している。オバマ大統領は、彼らを説得することへの自信を示しているが、そうできるとは考えにくい。TPPが2016年に批准されなければ、誰が大統領に選ばれようと、2017年以降に批准される見込みはさらに遠のく。なぜこんなことになったのか。ワシントンの利益団体の抵抗も、合意の欠陥も、「貿易は雇用を輸出し、失業を増やす」と市民が反発していることもその要因だ。それぞれTPPに反対する国内の利益団体を抱えつつも、それを克服して合意をまとめたアメリカの貿易パートナーたちが、大きな怒りを感じているとしても無理はない状況にある。・・・

論争 留学に価値はあるのか

2016年10月号

エリック・R・テルスオロ 元米外交官、サンフォード・アンガー 元ゴーチャーカレッジ学長

「留学プログラムが、アメリカの学生たちの知的レベルを高めるような豊かな経験を間違いなく与えてくれるのなら、それは大きな成果となる。だが、いかなる意味でも、そのような留学プログラムは現状では存在しない。・・・留学をすることで得られる認識の変化や文化的違いへの適応は、外国での経験よりも、その学生が本来もっているキャラクターに左右される」。(E・テルスオロ)

「10年以内に、アメリカの学部生の少なくとも3分の1が、コスト面で許容できる留学プログラムへアクセスできるようにし、21世紀半ばまでには、すべての学生にチャンスを与えるべきだと私は提言した。現状で米大学の学部生の1・5%しか留学しないという嘆かわしい状況からみれば、少しでも留学する学生が増えることが改善になる。アメリカ人が世界の出来事をもっと理解し、うまく対処できるようになるには、自分の目で確かめ、自国が直面する課題を自分で受け止める必要がある」。(S・アンガー)

核兵器と核戦略を問い直す
―― 何のための核兵器なのか

2016年10月号

フレッド・カプラン
ピューリッツァー賞受賞ジャーナリスト

進行しつつある世界政治の変化を十分に考慮できぬまま、われわれは依然として核兵器に固執している。抑止に大量の核兵器は必要ない。オバマ大統領が本気で核戦力の近代化計画を見直すつもりなら、「抑止に本当に必要なものは何か」を再検証しなければならない。核兵器がない状態を想定して、核戦争プランを根底から見直し、何のためにどれだけの核兵器が必要なのかを白紙から合理的に再分析すべきだ。こうした見直しが行われてこなかったのには単純な理由がある。米軍が核戦力を戦略上の前提として重視する派閥を内に抱え、議会も核兵器関連産業や研究所を選挙区にもつ有力メンバーを抱えているからだ。オバマが残された任期中に核の近代化計画の見直しに向けた基盤を作るのは難しいとしても、これは、彼の後継者、そして世界の指導者たちが取り組むべき重要な任務だろう。

中国の壮大なインフラプロジェクトにどう関わるか
―― 一帯一路への選択的関与を

2016年10月号

ガル・ルフト  
グローバル安全保障分析研究所(IAGS) 共同所長

アジア諸国がその開発目標を達成するには、今後4年間で年約8000億ドルを交通網、電力網、通信網のインフラ整備に投資する必要がある。しかし既存の開発銀行からは、その10%の資金も調達できない。たとえAIIB(アジアインフラ投資銀行)など中国を中心とする融資機関が約束を果たしても、必要とされる資金規模には達しない。米中のライバル関係を懸念するあまり、ワシントンはこの資金不足が世界の経済的繁栄にいかなる悪影響を与えるかを見過ごしてはならない。世界の経済成長の半分は、アメリカと中国の2カ国が牽引している。世界経済が長期停滞の可能性に直面する今、米中はいがみ合うよりも、互いの開発アジェンダを調和させるほうが豊かになれる。アメリカがグローバルな地位を守ることと、アジアの経済成長を支援することが相反するわけではない。一帯一路を「選択的に支持すれば」双方を達成できる。・・・

なぜ国際社会は海賊を退治できないのか
―― ウィリアム・キッドからソマリアの海賊まで

2009年8月号

マックス・ブート
米外交問題評議会国家安全保障担当シニア・フェロー

1650年から1850年までの2世紀にわたって続いた海賊との戦いをめぐって、世界は様々な対策を講じてきた。政府は海賊ハンターを雇い、海賊と共謀する役人を一掃し、人々に正義の概念を徹底しようと試みた。自発的に降伏してくる海賊には恩赦を認め、対海賊作戦に従事する軍艦の数を増やし、他国と協力し、海賊が拠点とする港を封鎖して攻撃し、海だけでなく陸においても海賊を追い詰め、ついには、海賊の巣窟を占領して解体する作戦をとった。だが憂鬱なことに、今日においてこうした歴史的な海賊対策はほとんど実施されていない。最終的な解決策は、海賊が巣食っている国に法の支配を持ち込むしかないが、現在の世界では、そう簡単に問題国家を占領するわけにもいかない。・・・一つの選択肢は、国際刑事裁判所(ICC)、国連の特別法廷などをつうじて、海賊とテロリストに法の裁きをうけさせることを認めるような国際合意をまとめることだろう。

かつてなく危険な世界
―― デンプシー前米統合参謀本部議長との対話

2016年9月号

マーチン・デンプシー 前米統合参謀本部議長

「私の知る時代のなかで、いまや世界はもっとも危険な状態にある。それぞれの脅威は小さいとみなすこともできる。だが適切に対処しなければ、そうした課題は現在われわれが考えている以上に大きな脅威へと変化していく。ロシアや中国のような国家アクターが、ヨーロッパと太平洋でわれわれの利益を脅かしている。中ロのいずれも今のところわれわれの純然たるライバルの域には達していないが、一部の領域については、われわれのレベルに近づきつつある。一方で、イスラム国(ISIS)のような非国家アクターがいる。これらの問題のいずれも無視することは許されない。根底にあるのは、現在のアメリカが、例えば、20年といった長期的なビジョンを描いて、それを政策と権限、さらには必要とされる資源で支えることができずに、一年単位で問題を捉えてしまいがちなことだ」 (聞き手はギデオン・ローズ フォーリン・アフェアーズ誌編集長)

Page Top