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米国に関する論文

ドナルド・トランプとアメリカの未来
―― スティーブン・コトキンとの対話

2024年12月号

スティーブン・コトキン スタンフォード大学 フーバー研究所 フェロー

「トランプは別の惑星から降り立ったエイリアンではない。アメリカ文化に深く根差す、不変の何かを反映する人物として、米市民が投票した人物だ。プロレス、リアリティ番組、カジノやギャンブル、セレブ文化、ソーシャルメディア。これらのすべてはアメリカのシンボルだし、詐欺や大嘘も同様だ。だが、同盟諸国を含む、多くの外国人は(国内の一部の人々同様に)、トランプを、自分たちが知り、再び見たいと願っているアメリカではないとみている」。・・・外交領域では、トランプも、オバマやバイデンと同じジレンマに直面する。それは、アメリカの対外コミットメントと能力のギャップいかに埋めていくかに他ならない。

(インタビューは、11月6日にドナルド・トランプが米大統領選で決定的な勝利を収めたタイミングで実施された。聞き手は、フォーリン・アフェアーズ誌エグゼクティブ・エディター、ジャスティン・ヴォクト。邦訳分は、英文からの抜粋・要約。)

トランプの政策ビジョンを考える
―― 衝動性と現実主義の間

2024年12月号

コリ・シェイク アメリカン・エンタープライズ研究所 外交・国防政策研究ディレクター

「予測不能で衝動的」と言われるトランプの政策ビジョンは、実際には、はっきりとしている。経済グローバル化と移民を否定的に捉えている。高関税を盛り込んだ二国間協定を結び、アメリカ市場へのアクセスを制限し、貿易収支のバランスをとることを重視している。アメリカにつけ込んでいると彼がみなす同盟国への要求を高め、要求を満たすことが、同盟支援の条件とされる。だが、現実を前に考えを見直す可能性もある。反欧米勢力の一体化に立ち向かうには、健全な同盟関係が必要であることを理解するかもしれない。さらに、ロシアが取引に応じなければ、「ウクライナがこれまで手にした以上の支援を与える」可能性もある。トランプ2期目に危険はあるが、抑止力強化と国防予算の増大という側面では、米安全保障基盤を強化するチャンスでもある。

ウクライナ支援を続けるべき理由
―― 何が問われているのか

2024年12月号

ロイド・J・オースティン 米国防長官

プーチンの攻撃を(われわれは)警告として受け止めなければならない。これは、暴君と悪漢が主導する世界、つまり、勢力圏に切り分けられた混沌とした暴力的な世界、いじめっ子が小さな隣人を踏みつける世界、そして侵略者が自由な人々に恐怖の生活を強いる世界の予告なのだ。つまり、私たちは歴史の分岐点にある。プーチンの侵略に今後も断固として立ち向かうのか、それともプーチンの思いのままにさせ、私たちの子や孫たちに、はるかに血なまぐさい危険な世界を生きることを宣告するのか。ウクライナが踏みにじられれば、ヨーロッパ全土がプーチンの影に脅かされることになる。

※このテキストは、キーウのウクライナ外交アカデミーで行われたスピーチからの抜粋。邦訳分はFAJによる翻訳・要約で、米政府の公式テキストではない。

流動化する世界と米再生戦略
―― アメリカとリビジョニストパワー

2024年11月号

アントニー・ブリンケン 米国務長官

バイデン政権はアメリカの競争力強化を目的とする歴史的な国内投資と各国との協調関係の再生に向けた力強い外交キャンペーンを組み合わせて展開した。この二つの支柱から成る戦略が、「アメリカは衰退し、自信を失っている」とみなす(中露などの)リビジョニストパワーの思い込みを粉砕する最善の方法だと、バイデン政権は信じていた。米衰退論の思い込みに囚われている限り、リビジョニストパワーは、アメリカやほとんどの国が求める「自由で開放的な世界、安全で繁栄する世界」にダメージを与え続けようとするからだ。アメリカはリビジョニスト諸国の思い込みを粉砕するための決意を維持しなければならない。そして、リビジョニストパワーが相互の立場の違いを克服するために、今以上に協力する事態に備える必要がある。

*英文は以下から閲覧できる。
https://www.foreignaffairs.com/united-states/antony-blinken-americas-strategy-renewal-leadership-new-world

「現場主義外交」の試金石
―― 太平洋諸島と米中競争

2024年11月号

チャールズ・エデル 戦略国際問題研究所上級顧問
キャサリン・ペイク 戦略国際問題研究所シニアフェロー

「あなたたちのなかで、外交領域で働きたいと思う人は何人いるだろうか」。若者に行動を求めた1960年のケネディ大統領のこのフレーズは、平和部隊への参加を促し、アメリカの世界への関心を高めたと評価されている。現在も、ライバルと競い合うには、外交官たちが外国の指導者と会い、現地の文化や習慣を理解し、協調の機会を見極めなければならない。この課題がもっとも深刻に脅かされているのが太平洋諸島諸国においてだ。この地域への外交の優先順位を高め、支援を強化しなければ、フィリピンからハワイに至る太平洋地域全体でアメリカは中国に立場を譲り続けることになる。

ビッグテックのクーデター
―― いかにパワーシフトを抑えるか

2024年11月号

マリーチェ・シャーケ スタンフォード大学 サイバー・ポリシー・センター フェロー

政府からビッグテックへのパワーシフトが進行している。テクノロジー企業は議会にロビイストを送り込み、シンクタンクや学術機関に資金を提供して、世界がテクノロジー産業をどうとらえるか、その理解を形作っている。民主主義が生き残るには、指導者たちはこのクーデターと正面から向き合い、闘わなければならない。ビッグテックへの社会の全般的依存、彼らが活動するデジタル空間が法的グレーゾーンであることなどが変化の潮流を形作っている、彼らは、技術を速いペースで進化させて、法律を回避し、政策による反撃を心配することなく、疑わしい行動をとっている。政府は公益性のあるテクノロジーに力を与え、テクノロジーに関する専門知識を再構築して対抗して必要がある。

新国際主義外交の薦め
―― アメリカと世界

2024年11月号

コンドリーザ・ライス 元米国務長官

かつて同様に、リビジョニスト(現状変革)国家は力によって領土を獲得し、国際秩序は崩壊しつつある。さらに憂慮すべきは、かつて同様にアメリカが内向きになり、孤立主義の誘惑に駆られていることだ。ポピュリズム、移民排斥主義、孤立主義、保護主義に席巻されるアメリカの国際社会での立ち位置はどこにあるのか。アメリカのグローバルな関与が、過去80年間とまったく同じように進むとは考えられないが、それでもアメリカの国際主義外交が求められている。そうできるかで、未来が民主的で自由市場国家間の同盟によって規定されるのか。それとも、リビジョニストパワーによって規定される権威主義的政治の時代に逆戻りするのかが左右されるだろう。

知識と技術が国を支える
―― ナレッジパワーと国家パワー

2024年10月号

エイミー・ゼガート フーバー研究所 シニアフェロー

いまや、国のパワーの基礎を支えるのは「経済成長、科学的発見、軍事的ポテンシャルを劇的に強化できる知識や(AIなどの)技術」であることが多い。だが、こうした資産は、無形であること、そして、部門や国を超えて広がりやすいために、ひとたび「世に出る」と政府が管理するのは難しくなる。敵に対してアルゴリズムの返還を求めることはできない。あるいは、中国のバイオエンジニアに博士研究員としてアメリカで得た知識を返せとも言えない。知識は究極の携帯型兵器なのだ。われわれは、知識とテクノロジーが原動力となる現代の世界で、国家パワーの構成要因が何で、それをいかに育み、応用していくかを考え直す必要がある。

アメリカは東南アジアを失うのか
―― 中国へなびくアセアン諸国

2024年10月号

リン・クオック ブルッキングス研究所 フェロー(アジア政策)

東南アジアを対象とする2024年の調査で、この地域の連携パートナーとして中国がアメリカよりも支持されるという初めての結果がでた。アメリカがイスラエルを強く支持していることが、中国に有利な方向に流れを変えた大きな要因と考えられる。イスラム教徒が多数派を占める東南アジアの3カ国すべてで、台湾ではなく、イスラエルとハマスの紛争が地政学上の最大の懸案に選ばれている。米外交にはダブルスタンダードがあり、中国に関する利己的な目標をもっているというイメージも、アメリカの立場への支持拡大を妨げている。失った地域的支持をワシントンが取り戻していくのは容易ではない。

高技能外国人材と経済成長
―― 技術系人材を確保するには

2024年10月号

デベシュ・カプール ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際問題研究大学院 教授(南アジア研究)
ミラン・ヴァイシュナヴ カーネギー国際平和財団 シニアフェロー

この数十年にわたって、ワシントンの政治家たちは不法移民の管理とコントロールに執着してきたが、いまや、合法的な移民、それも高度技能をもつ外国人材に同じ程度の関心を払う必要があるだろう。世界的な人材獲得競争で成功したいのなら、時間的猶予はほとんどない。ワシントンは、サプライチェーンのレジリエンスを高め、新興技術部門で中国を打ち負かすという野心的な計画をもっている。だが、これらの目標を有意義な時間枠で達成するには、現在の米労働力に不足している、高度なスキルをもつ人材プールが必要になる。より柔軟で適応性のある移民政策なしでは、うまく考案された計画も結果にたどり着けない。

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