1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

米国に関する論文

戦争とテクノロジー企業
―― ウクライナと台湾の違い

2025年3月号

マット・カプラン シールドキャピタル アナリスト
マイケル・ブラウン シールドキャピタル パートナー

スターリンク、マイクロソフト、アマゾンなどの米テクノロジー企業が、国防に不可欠なデジタル・インフラを提供する戦争の新時代がすでに始まっている。ウクライナはその具体例だ。問題は、こうした巨大ハイテク企業が「国家安全保障よりも企業利益」に合致する方向へ国益を向かわせようと試みるかもしれないことだ。米テクノロジー企業は、台湾を防衛するために、重要な市場であり、顧客である中国を敵に回すだろうか。実際、ウクライナでうまく実現したことが、台湾で再現されるとは限らない。必要なのは、紛争が発生する前にこうした新しいデジタル能力をもつ企業と契約し、彼らを同盟勢力として扱うことだ。ワシントンが同盟国やパートナーを今後もうまく防衛できるかは、米ハイテク企業の力をいかにうまく引き出すかに左右される。

歴史のなかのトランプ
―― 繰り返される秩序との闘い

2025年2月号

マーガレット・マクミラン オックスフォード大学 名誉教授(国際史)

ある種の指導者は歴史の流れを変えられるという見方を受け入れるとしても、政治や社会が大きく変化するのは、制度が権威を失いつつあるときだ。事実、民主国家への信頼は失われつつある。そして、国際ルールを破って何の責任も問われない指導者がいれば、それに続く者がでてくる。1914年のように、過ちや誤解が対決へつながっていく危険は常に存在するが、いまやその危険はますます大きくなっているようだ。トランプ政権が孤立主義的政策をとり、NATOから脱退し、中国と対立し、世界の多くの国々と関税戦争に突入すれば、世界はどうなるだろうか。それによって、世界がより安全な環境を手にするとは思えない。

いかに戦争を終わらせるか
―― ウクライナのNATO加盟を認めよ

2025年2月号

マイケル・マクフォール 元駐露アメリカ大使

戦争を終わらせるには、ロシアにウクライナの一部領土を与えるのと引き換えに、北大西洋条約機構(NATO)へのウクライナ加盟を実現させる洗練された計画が必要になる。恒久的な平和を生み出すには、このような妥協をするしかない。「勝利しつつある」と考えているプーチンに和平交渉に入るように説得できても、トランプはゼレンスキーも説得しなければならない。これは大きなチャレンジになる。領土奪還を諦めるならば、これらの土地に住む市民も見捨てるのか、それともウクライナ西部への移住を保証するのか、ゼレンスキーは決断しなければならない。そして、トランプ自身、和平交渉を実現するために、ウクライナ支援を維持(さらには拡大)する必要がある。

北京が対米関係を静観できる理由
―― 緊張と孤立主義の間

2025年2月号

ヤン・シュエトン 清華大学 国際関係研究所 名誉所長

北京にイデオロギーを国際的に広める計画はなく、中国共産党は国内の政治的安定を維持していくことを重視している。トランプも同様に国内を重視しており、両国が直接衝突するようなイデオロギー対立に緊張がエスカレートすることはないだろう。むしろ、ロシアと緊密な関係にある中国は、その影響力を利用して、効果的な和平取り決めを特定するために、トランプと協力できるだろう。米大統領の経済保護主義志向は緊張を高めるだろうが、北京はそのような対立をうまく切り抜けられると考えている。トランプの孤立主義も、北京が米同盟国との関係を改善する機会を提供するとみている。中国の指導者たちは彼の権力者としての復活を恐れてはいない。

対中貿易規制と国際協調
―― グローバル貿易と同盟関係

2025年2月号

ピーター・E・ハレル カーネギー国際平和財団 非常勤フェロー

世界の工業生産に占める中国の割合は2000年の6%から2030年には45%に達すると予測されている。これに対してアメリカのシェアは25%から11%に低下する。これは、中国との地政学的対立のさなかにあるアメリカと同盟国にとって、許容できるコースではないだろう。トランプは(同盟国の製品を含む)すべての輸入品に20%の「普遍的基本関税」をかける路線を見直し、同盟諸国と協調して新たな合意をまとめる方が、アメリカの経済と安全保障にはうまく機能することを認識すべきだろう。冷戦期のように、多国間輸出規制レジームなどを通じて貿易と安全保障の両面で協力する一方で、同盟国との二国間貿易赤字には関税よりも、むしろ、相手国の内需を促す路線をとるべきだろう。

反欧米ブロックへの強硬策を
―― 中露分断策の不毛

2025年1月号

オリアナ・スカイラー・マストロ スタンフォード大学国際問題研究所 センターフェロー

中国、ロシア、イラン、北朝鮮という枢軸メンバー間の相互関係の深さを推定したり、彼らを引き離そうと努力したりするのではなく、ワシントンは、これらを独裁国家のブロックとして扱い、同盟諸国にも同様の対応をとるように働きかけるべきだ。中国を枢軸のリーダーとして扱い、ある枢軸メンバーが好ましくない行動をすれば、(中国を含む)他の枢軸メンバーにもペナルティを課すようにすべきだ。ロシアの戦争努力を支援する中国企業だけに制裁を科すのではなく、アメリカは中国という国を対象に経済制裁を実施する必要がある。そして、ロシアが交渉テーブルに着くまで、制裁は継続すると北京に伝える。もはや代替策は存在しない。

トランプ政権と中国
―― 取引主義と競争戦略

2025年1月号

ラッシュ・ドーシ 米外交問題評議会 中国戦略イニシアチブ・ディレクター

トランプの関税引き上げの威嚇策は、中国側の行動を変化させるための交渉戦術なのか、デカップリングを達成するための確定路線なのか、あるいはこの二つのミックスなのかはわからない。いずれにしても、北京は、トランプ政権が(関税策などで)同盟パートナーシップを傷つければ、相手を取り込める余地が生じると期待している。北京は、ヨーロッパや日本との外交エンゲージメントを強化し、インドとの国境紛争の緊張緩和も模索している。さらに、中国への競争的なアプローチを実行する上でもっとも大きな障害となるのは、トランプの取引主義なのかもしれない。対中政策は、1期目同様に、大統領の「取引主義」と側近たちの「競争的アプローチ」という異なる衝動によって特徴付けられることになるかもしれない。

停戦交渉と欧州の立場
―― ウクライナと欧州の安全を確保するには

2025年1月号

エリー・テネンバウム フランス国際関係研究所 安全保障センター ディレクター
レオ・リトラ 新ヨーロッパセンター シニア・リサーチフェロー

2025年に、ロシアとの包括的な和平合意が成立する可能性は極めて低い。合意が成立しても、それは休戦に限られ、政治的協議は先送りされるだろう。交渉が実現しても、米露(そして潜在的には中国)の交渉者が、サウジやトルコの仲介で欧州大陸の将来を決定するとすれば、それは悪夢のシナリオだ。「ウクライナとヨーロッパの主要国がテーブルに着かない交渉などあり得ない」と強く主張しなければならない。そして、ロシアの攻撃を阻む抑止力として、ウクライナ領内に欧州部隊を派遣する覚悟をもつ必要がある。欧州部隊の軍事プレゼンスは安全保障の盾として機能し、欧米の手堅いコミットメントを示すことになる。この環境でウクライナに侵攻すれば、欧州とNATOを巻き込む危険が高いため、ロシアはエスカレーション策に訴えるのを躊躇するはずだ。

イスラエルの幻想とジレンマ
―― ネタニヤフとトランプ

2025年1月号

シャロム・リプナー アトランティック・カウンシル シニアフェロー(非常勤)

イスラエル国防軍の幹部たちは、「ガザとレバノンにおける目標はすべて達成した」とネタニヤフに伝え、ガザから人質を帰還させ、レバノンにおける紛争を終わらせるために譲歩することを支持している。ネタニヤフもこの方向に進むことをある程度希望しているかにみえる。だが、連立政権内の極右強硬派(スモトリッチとベングビール)は、人質解放に反対し、ガザと西岸をイスラエルの長期的な支配下に置くことを望んでいる。一方、多くのイスラエル人は、アメリカの新政権は「イスラエルを無条件で支援する」と考えている。だが、トランプの支持を前提にすれば、イスラエルは世界で孤立することになるかもしれない。今後、ネタニヤフは「トランプを満足させると同時に、スモトリッチとベングビールをなだめる」という不可能な任務に直面するかもしれない。

日本とトランプ
―― 試されるリーダーシップ

2025年1月号

マシュー・P・グッドマン 米外交問題評議会地政学研究センター ディレクター

「北朝鮮そして中国の東シナ海、南シナ海での活動に毅然とした態度をとるつもりがあるのか」。日本の指導者たちは、トランプの安全保障政策をもっとも心配していた。関税引き上げ策への懸念ももっている。日本製品に対する関税引き上げだけでなく、中国や(カナダや)メキシコで組み立てられた日本製品が打撃を受けることも警戒している。一方、中国経済のデカップリングなどに対する日本政府の意欲は限定的になるかもしれない。日本は経済大国であり、インド太平洋地域におけるもっとも重要なアメリカの同盟国だ。東京がこの先の荒波をどのように乗り切るかは、日本のリーダーシップはもとより、トランプ政権のリーダーシップの試金石にもなるだろう。

Page Top