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米国に関する論文

アメリカの覇権という現実を直視せよ
――単極構造時代の機会と危機

2002年8月号

ステファン・G・ブルックス ダートマス・カレッジ助教授 ウイリアム・C・ウォールフォース ダートマス・カレッジ准教授

アメリカは、国力を構成するすべての領域で支配的な優位を確立しており、われわれは、アメリカの覇権による単極構造の世界にある。今後数十年にわたって覇権抗争を展開できる国が出現する可能性はほとんどないし、アメリカへの対抗バランスを形成するというレトリックも全く実体に欠ける。単極構造下の覇権国は、世界、そして自国にとっての長期的な視野に立った利益を模索するゆとりを手にしている。このゆとりを利用し、世界の問題が深刻化してから状況に対応するのではなく、そうした問題が出現しないように先手を打つことこそ、世界、アメリカ双方にとっての利益となろう。

グローバル化は世界を不幸にしたか
――スティグリッツ氏、ワシントンに行く

2002年8月号

カリフォルニア大学バークレー校政治経済学教授 バリー・エイケングリーン

スティグリッツの本は、途上国の現実を無視した単純な経済教義は状況を改善するどころか悪化させる危険があり、経済理論と現実に即して慎重に運用することが、健全な政策助言を行う上で非常に重要であることを示している。しかし、途上国に発言権やグローバルな統治への参加権を与えよといった、過度に単純な彼の政治的助言は問題がある。政治改革は、経済改革と同じように微妙で複雑なものである。

変貌する米中通商関係

2002年8月号

ジョセフ・P・クインラン モルガン・スタンレー上級グローバルエコノミスト

米企業は対中輸出を増やすよりも、中国市場に投資して進出し、新たに設立した在中米系関連企業による現地市場での販売を強化するほうが好ましいと考えている。
実際、こうした米系企業による現地での販売、対米逆輸出はともに急増している。いまや米企業の対中投資の目的は、中国市場へのアクセスよりも、国際競争に勝ち抜くための低コストの製造・輸出基地として中国を利用することへとシフトしている。
したがって、ワシントンが対中経済政策を考える変数として重視すべきは、対中貿易赤字ではなく、直接投資による通商関係の質的変化だ。米企業がすでに中国を「戦略的パートナー」とみなしているのに、ワシントンが依然として中国を「戦略的ライバル」ととらえているのは間違った政策を呼び込む処方箋のようなものだ。

東南アジア
――対テロ軍事支援の限界と弊害

2002年7月号

ジョン・ガーシュマン 両半球間資源センター上級アナリスト

アメリカが対テロ戦争の一環として東南アジアを「軍事的に支援」するのは間違っている。人権侵害を起こすことで悪名高い東南アジア諸国の軍隊は、多くの場合、政治エリートの一部やテロ組織を含む犯罪組織と手を結んで、むしろテロを助長する社会環境を育んでいるからだ。軍隊を支援しても、民主体制をさらに弱め、イスラム過激派の魅力を高めてしまうだけだ。ワシントンは軍事援助や各国の法執行当局との連帯だけでなく、東南アジアが直面する社会問題への「文民統制型」の対応策を支援する必要がある。

同時多発テロ後のインドの内政と外交

2002年7月号

デニス・クックス ウッドロー・ウィルソンセンター上級政策研究員

同時多発テロ以降、米印は、政治・安全保障・経済に関する共通の利益をますます重視するようになり、いまや両国の関係は大きく前進し、緊密化している。だが、バジパイ政権は、対米外交では成果を上げつつも、カシミール紛争をめぐってパキスタンと深刻な軍事的対立局面にあるし、国内でも、政治危機、宗教対立、低迷する経済などの難題に直面している。対米関係の改善という成果を、パキスタンとの軍事的危機の解決、国内経済問題の解決に、どうすれば結びつけられるのか。

米外交問題評議会リポート
「軍事的対テロ戦争」では問題は解決しない

2002年7月号

◎スピーカー ブレント・スコークロフト ブッシュ・フォード政権大統領補佐官 カーター政権大統領補佐官 ズビグニュー・ブレジンスキー  クリントン政権大統領補佐官  サミュエル・バーガー クリントン政権大統領補佐官  ◎司会 CNN上席副会長 フランク・セスノ

アメリカ市民を対テロ作戦に動員する努力、テロの危険を世界に認識させる努力はうまくいっている。だが、政府はテロ問題にばかり焦点を絞るという間違いを犯している。これでは、非常に複雑で、混乱している世界の現実に目を向けず、そうした現実がつくり出す一つの現象であるテロ問題だけに、取り憑かれたように関心を持ってしまうことになる。(Z・ブレジンスキー)

サウジ王国の苦しみ

2002年6月号

エリック・ルーロー 元駐トルコ・フランス大使

米メディアからは対米テロをめぐって批判され、国内でも、経済不振、そして社会的緊張と反米主義の高まりに悩まされるサウジアラビア政府はいまや身動きがとれなくなり、王族内の改革派も、保守派が牛耳る政治・宗教システムの囚われ人となっている。近代化と経済発展を促進しようとするアブドラ皇太子の決意は本物だが、その改革の規模とペースは、彼の意図ではなく、むしろ、矛盾に満ちたこの国の政治力学とグローバル化が呼び込む外的圧力の綱引きによって左右されることになろう。

アフガニスタンでの戦争を総括する
――なぜビンラディンを取り逃がしたのか

2002年6月号

マイケル・オハンロン ブルッキングス研究所シニア・フェロー

アフガニスタンの国内勢力をうまく反タリバーン勢力としてまとめ上げ、新旧の技術を「統合的軍事作戦」として結実させた「不朽の自由作戦」は、マッカーサーの仁川攻略以来の記念碑的な戦いとして評価されることになるかもしれない。しかし、ビンラディンと彼の側近たちがアフガニスタンからの脱出に成功していたり、アフガニスタンが今後再び不安定化し、テロリストが少数でもこの国に居座り続けたりすれば、現在の勝利も色あせたものになる。なぜ、米軍はアルカイダの退路を断つという最も重要な作戦を、パキスタン軍や現地の軍事勢力に任せるという間違いを犯したのか。

ブッシュ政権の対北朝鮮強硬策の全貌
――「強硬なエンゲージメント政策」の目的は何か

2002年5月号

ビクター・D・チャ ジョージタウン大学外交学部準教授

「対話と交流を重ね、変化が起こるのを辛抱強く待つ」という、かつての対北朝鮮エンゲージメント政策はすでに放棄されている。脅威を醸成し、それをカードに利益を引き出すという平壌のやり方をブッシュ政権が今後容認することはあり得ない。強硬なエンゲージメント政策の本質は、関与策を通じて、平壌の敵意に満ちた意図を暴き、それが白日の下にさらされた場合には強硬策をとり、半島の統一を前提に、東アジアの戦略環境を整備していくことにある。

シャロンの真意はどこにあるのか
――国内政治とパレスチナ強硬策の行方

2002年5月号

アルフ・ベン ハーレツ紙外交担当記者

左派、右派からの相矛盾する要請によって国内的に身動きがとれず、一方で、対パレスチナ強硬策を継続すれば、アメリカの支援を失う。加えて、経済はほぼゼロ成長状態であり、失業率も悪化している。行動の人、シャロンも、経済的・政治的危機を前に身動きのとれぬ状態に追い込まれている。アラファトを打ちのめしたいと願いつつ、国内的に時間稼ぎをして政治的に持ちこたえたとしても、高まる一方の国内経済の回復を求める声を前に、シャロンが今後事態を統御していく力を失っていくことは避けられない。

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