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中東に関する論文

「イラン対イスラエル」へと変化した中東紛争の構図

2006年7月号

ゼーブ・シーフ ハーレツ紙記者

ヒズボラが2000年以降、イスラエルの都市センターを脅かす恐れのあるロケットを備蓄していることを察知しながらも、イスラエルはこれまで攻撃を慎んできた。そのイスラエルが、なぜ今回ヒズボラとの紛争の道を選んだのか。それは、ヒズボラとハマスの連帯、イランとヒズボラの連帯を早急に切り崩す必要があると判断したからだ。シリアがロケットをヒズボラに提供し続けていたにもかかわらず、「ダマスカスがイスラエルの攻撃によって危機にさらされることはない」とイスラエルが表明したのも、シリアとの戦端を同時に開くことを避け、シリアを助けるという口実でイランが介入してくるのを阻止したかったからだ。いまや中東紛争の構図は「イラン VS.イスラエル」へとシフトしている。イスラエルは、パレスチナ問題をめぐる政治的妥協を試み、来るべきイランとの衝突に備えた政治環境の整備に努める必要がある。

イランの国内政治力学と核問題
―― テヘランは何を警戒し、何を望んでいるのか

2006年7月号

レイ・タキー 米外交問題評議会(CFR)中東担当シニア・フェロー

イランの「戦争世代」強硬派の代表的人物であるアフマディネジャド大統領の世界観は、イスラム主義のイデオロギー、ナショナリズム、国際秩序への不信感で成り立っている。「戦争世代」は、アメリカとの紛争は避けられないとみており、アメリカを抑止するには、戦略兵器を保有するしかないとみている。一方、「インド・モデル」に注目する「現実主義者」たちは、国際社会とグローバル経済への統合を果たすには、核開発に対する制約も受け入れざるを得ないと考え、核拡散防止条約(NPT)の許す範囲内で開発を進めることを求めている。必要なのは、「イランとアメリカが心配する懸案のすべてを網羅するような交渉」において、両国が合意できる部分を増やしていくことではないか。核問題を、より広範なアメリカとイランの関係における病の症状の一つとみなし、根本の病を治していくような路線が必要だ。イランの核問題を解決できるとすれば、アメリカとイランの全般的関係が大きく改善した場合だけであることを認識する必要がある。邦訳文は、米外交問題評議会(CFR)のレイ・タキーが、米上院の「連邦金融管理・政府情報及び国際安全保障に関する小委員会」に、7月20日に提出したイラン問題に関する書簡証言。

イランの核開発に打つ手はあるのか
――外交、軍事攻撃、あるいは封じ込めか

2006年5月号

◎スピーカー
リュエル・マーク・ゲレット アメリカン・エンタープライズ研究所レジデントフェロー
ケニース・M・ポラック ブルッキングス研究所セバン中東研究センター所長
◎司会
リチャード・N・ハース 米外交問題評議会(CFR)会長

「イランを軍事攻撃できるかどうか。その答えはイエス。攻撃後のイラン国内状況は、当初は今よりも悪くなるし、反体制派や改革主義者は抑圧される。長期的に大きな反体制運動が起きるか。答えはイエス。対米テロは起きるか。これは間違いなく起きる」(R・ゲレット)

「イランの核施設は大規模なトンネルで繋がれていることもわかっている。このトンネルを破壊するのは非常に難しい。ペンタゴンでこのトンネルを破壊するにはどうすればよいかが研究されているが、これを破壊するには、地表貫通型核兵器が必要だと言われている」(K・ポラック)

サダム・フセインの妄想
―― 旧イラク軍高官たちが証言する

2006年5月号

ケビン・ウッド 防衛アナリスト
ジェームズ・レーシー 米統合軍司令部軍事分析官
ウィリアムソン・マレー 米海軍大学歴史学客員教授

2003年4月、バグダッドは陥落し、歴史的に最も秘密主義で残忍な政権の実態を解明する機会が生まれた。米統合軍司令部は、かつてはアクセスできなかったイラク政府文書を基に、サダム・フセイン政権がどのように機能し、行動していたかをテーマとする検証を命じた。拘束された数十人の政治・軍事指導者への聞き取り、数十万の公文書を基盤とする2年がかりのプロジェクトのリポートのポイントをここに掲載する。

イラク・パースペクティブ・プロジェクト
―― サダム・フセインの幻想

2006年4月号

ケビン・ウッド/防衛アナリスト
ジェームズ・レーシー/米統合軍司令部軍事アナリスト
ウィリアムソン・マレー/米海軍大学歴史学特別客員教授
マイケル・ピース/「イラク・パースペクティブ・プロジェクト」共同執筆者
マーク・スタウト/「イラク・パースペクティブ・プロジェクト」共同執筆者

米統合軍司令部は、2004年に作戦分析統合センター(JCOA)に、イラク戦争中にサダム・フセインが何を考えて、どのように行動していたかを分析するように命じ、その分析結果が『イラク・パースペクティブ・プロジェクト――サダム政権高官はイラク自由作戦をどうみていたか』という200ページを超えるリポートにまとめられ、2006年3月24日に公表された。フォーリン・アフェアーズ英語版5・6月号には、JCOAリポートの筆者であるケビン・ウッド、ジェームズ・レーシー、ウィリアムソン・マレーがその主要なポイントを抜粋し、まとめなおした「サダムの幻想」が掲載されている。ケビン・ウッドをプロジェクトリーダーとするイラク・プロスペクティブ・プロジェクトの分析チームは、イラクに関して公開されている情報を入念に調べあげた上で、イラクへ向かい、現地でイラク政府・軍高官の聞き取りを行うとともに、押収したイラク政府文書を精査した上で、この2年がかりのプロジェクトを分析報告として発表している。邦訳分は、フォーリン・アフェアーズには掲載されていない、米統合軍司令部JCOAリポート「イラク・パースペクティブ・プロジェクト」の統括部分からの抜粋・要約。日本語版では次号(6月10日発売5月号)に「サダム・フセインの幻想」の全文を掲載予定。(フォーリン・アフェアーズ日本語版編集部)

 アラブ世界は、イランの「核技術保有宣言」を前に困惑している。イランと多くのアラブ諸国の関係はすでに緊張しており、今後イランが核兵器開発能力を手にすれば、ますますアラブ諸国とイランの関係は悪化していく危険がある。核武装したイランは中東のパワーバランスを揺るがし、アラブ各国における宗派上の少数派であるシーア派を勢いづけ、最悪の場合には、中東で核の軍拡レースが起きると考える専門家もいる。
 しかし一方で、世論調査や新聞報道からみて、イスラムの同胞であるイランがアメリカを相手に一歩も引かぬ姿勢をとっていることを頼もしく思っているアラブ人もいる。彼らは、ワシントンのイスラエル寄りの路線、シーア派主導のイラク構築路線、中東民主化構想のことを、中東秩序の安定にとってイランの核技術獲得以上の脅威とみなしている。一般にアラブの指導者はイランの非核化を望んでおり、現在の危機が外交的に解決されることを期待している。

イラク戦争の情報と政策

2006年4月号

ポール・R・ピラー/前米中央情報局(CIA) 近東・南アジア情報分析官

ブッシュ政権は政策を決める判断材料として情報を用いるという、政策と情報の通常のモデルを逆さにし、すでに下されている政治決断を正当化するために情報を選択的に用いた。米情報コミュニティーのイラクの大量破壊兵器(WMD)に関する間違った情報分析が政策決定者に判断を誤らせたわけではない。むしろ、イラクに関する戦前の情報収集・分析に関して特筆すべきは、この数十年間でもっとも重要なアメリカの政策決定において、情報がほとんど無視されたという点にある。ブッシュ政権は、イラク戦争に向けて米市民を動員するために生の情報を選択的に利用したにすぎない。

「イランが低濃縮ウランの製造に成功したからといって、国際社会が一つにまとまるとは思えない」。むしろ、米欧の連帯は不安定になってきているとイラン問題の専門家レイ・タキー(CFRシニア・フェロー)はみる。「アメリカが制裁に同調するように求め出せば、中国やロシアだけでなく、ヨーロッパも難色を示し出すかもしれない。イランが低濃縮ウランの開発に成功したからといって、自分たちの経済利益、――ロシアの場合は、経済利益と戦略利益――を脇に置いて、アメリカの懲罰路線に同意するということにはならないだろう」。同氏は、もはや核技術をイランに放棄させるのは無理であり、今後の開発の進展を枠にはめるための外交交渉を行うしか手はないと述べ、アメリカの妥協が必要だと強調した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。邦訳文は英文からの抜粋・要約。

CFRインタビュー
ブッシュ政権はイランの軍事攻撃を検討している

2006年4月号

カーネギー国際平和財団・核不拡散担当ディレクター ジョセフ・シリンシオーネ

ロシアと中国はイランに対する制裁措置の発動を避けたいと考えているし、一方ワシントンは制裁措置の発動だけでなく、軍事攻撃への容認を安保理で取り付けたいと考えている。現状をこう分析するジョセフ・シリンシオーネ(カーネギー国際平和財団・核不拡散プロジェクト・ディレクター)は、ブッシュ政権内ではイランの軍事攻撃に関する議論が行われているだけでなく、その計画も立案されていると語る。「私は現実点では次のように考えている。副大統領を含む、ブッシュ政権の高官の一部はイランに対する軍事攻撃が望ましい選択肢だとすでに判断し、軍事攻撃によってイランの政権を揺るがせば、長年の目標である政権の打倒を達成できると考えている」。軍事攻撃に明確に反対する同氏は、イランを核の平和利用、民生利用へと引き戻し、中東における核武装のドミノ倒し現象を回避すべきだと強調した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

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