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中東に関する論文

世界の原油市場を左右する中国とイランの石油コネクション

2011年7月号

エリカ・ダウンズ
ブルッキングズ研究所 中国センター・フェロー
スザンヌ・マロニー
ブルッキングズ研究所 サバン中東研究所・シニアフェロー

多くの外国企業が、イラン制裁を求める国連決議に配慮してイランから撤退しているというのに、中国だけが別行動をとっている。当然、中国のイラン路線とそれにアメリカがどう反応するかは、今後の世界のエネルギー・ビジネスと国際政治を左右する大きなファクターだ。資源を求める中国の石油企業にとってイランは魅力的な進出先だ。しかし、ワシントンは北京に対して、ウラン濃縮を続けるイランに対する制裁レジームの完全なメンバーになるように求めており、中国もワシントンの意向を公然と踏みにじるのは問題があると考えている。ワシントンは中国に対して、「イランに核開発計画を断念させれば、石油の供給と価格の安定化が期待できるようになり、中国の利益になること」、逆に、「そうしない限り、原油価格のボラティリティがさらに高まること」を理解させる必要がある。

「カダフィを権力ポストから追放するというアメリカの政策目的」と「それを実現するために進んで何をするか」の間に大きなギャップが存在する。このため、アメリカ政府は大きな混乱に直面している。短期的には目的を引き下げて、状況を安定化させるしかない。停戦を強く求めるべきだし、これ以上多くの人命が失われないように手をつくす必要がある。このためなら、当面、カダフィが権力ポストに居座り続けるのを認め、この間、リビアが短期的に二つに分断されることになっても仕方がないだろう」(R・ハース)

ビンラディン後の アルカイダとジハード主義

2014年11月号

ブリンジャー・リア ノルウェー防衛研究所(FFI)リサーチフェロー

オサマ・ビンラディンのことを、作戦には関与しないシンボリックな指導者だとみなす考えは間違っているし、彼のことをグローバルなジハード主義の精神的支柱とみなすのも間違っている。たしかに、アルカイダ内においてビンラディンは首長、最高司令官として尊敬され、その命令にメンバーたちは従った。だが、殺害される前から、ビンラディンの権威とリーダーシップはすでに失墜しつつあった。アルカイダのテロリストのなかには「ビンラディンは権威主義的だし、イスラム教が求める「協議」の精神を忘れている」と公然と批判する者さえいた。ビンラディンはレトリックを弄するのはうまいが、傑出した思想的ビジョンの持ち主ではなかった。だからこそ、今後、他の指導者たちがビンラディンの役割をスムーズに担っていくと考えてもおかしくはない。・・・・

パキスタンの政治から軍部を締め出すには

2011年6月号

アキル・シャー
ハーバード大学 ソサエティ・オブ・フェローズジュニアフェロー

数百発の核弾頭を保有し、インドとの火種を抱え込み、世界でもっとも危険なテロリストを国内に抱え込んでいるパキスタンを、将軍たちの好きにさせるのは余りに危険すぎる。パキスタン軍は、内外のあらゆる事態をインドとのライバル関係というレンズでとらえる習性を持っており、これがパキスタン軍の考えと行動を規定している。ザルダリ大統領率いるパキスタン人民党(PPP)、シャリフ率いるパキスタン・イスラム同盟(PML―N)のような文民政党は、概して、軍の陰で政治を行っているようなものだ。政治家を全く信用せず、「国が安定するか、カオスに陥るかを左右するのは自分たちだけだ」と自負している軍は、政治家がうまく統治を行っていないとみるや、政治に介入してきた。だが、そのためにパキスタンの文民制度が損なわれ、代議制が根付くのが阻まれ、国内に大きな亀裂が作り出された。文民による政府機関と軍事組織間のパワーの不均衡を是正しない限り、パキスタンの安定は実現しない。

中東における2011年革命のルーツと行方
―― スルタン体制の終焉

2011年5月号

ジャック・A・ゴールドストーン ジョージメイソン大学教授

ムバラク、ベンアリのような中東におけるスルタン主義の独裁者は、個人の権力と権限を維持していくことにしか関心はない。従順な支持者を主要ポストに据え、制度の頭越しに政治を行う。水面下で富を蓄え、この資金を用いて指導者への忠誠を買う。いかなる形で国に資金が流れ込もうと、そのほとんどは、スルタンとその仲間内の懐へと流れ込む。軍を分裂させて、軍事エリートを自分の管理下に置く。だが、スルタン主義独裁制の下で、経済が成長し、教育制度が整備されてくると、状況に不満を抱き、「こうあるべきだ」と考える人が増え、警察による監視体制や権力乱用に対する反発も大きくなる。民衆を手なずけることを目的に体制側が実施してきた補助金その他のプログラムのコストが上昇すれば、大衆を政治から遠ざけておくのは難しくなり、軍の一部も状況への不信感を強める。これが中東革命の背景だった。これからどうなるか。スルタン体制の歴史をひもとけば、今後の展開が、考えられているよりも明るくも暗くもないことがわかるだろう。

 「カダフィを権力ポストから追放するというアメリカの政策目的」と「それを実現するために進んで何をするか」の間に大きなギャップが存在し、その結果、アメリカ政府は大きな混乱に直面している。短期的には目的を引き下げて、状況を安定化させるしかない。停戦を強く求めるべきだし、これ以上多くの人命が失われないように手をつくす必要がある。このためなら、当面、カダフィが権力ポストに居座り続けるのを認め、この間、国が短期的に二つに分断されることになっても仕方がないだろう。

トルコはイスラム、欧米のどちらを選ぶのか
―― 誤解されるトルコの新外交路線

2011年4月号

ヒュー・ポープ 国際危機グループ プロジェクト・ディレクター

フローティラ事件をめぐるイスラエルとの対立、そしてイランとの核燃料スワップ合意をめぐる欧米との確執によって、いまやトルコは西洋の一部ではなく、イスラム世界を志向し始めたのではないかと考えられている。たしかに、トルコは中東各国と緊密に接触し、中東版の超国家共同体をまとめあげる構想にさえ意欲をみせている。だが、アンカラは依然として欧米とのつながりを重視している。他の中東諸国とは違って、EUとアメリカの尊重されるパートナーであり続けていることが、トルコの繁栄と正統性を支えており、他の中東諸国はこれをうらやましく思っている。これがトルコの強みだ。中東問題の経済、安全保障面での余波を受けているのは、欧米諸国よりも、むしろ、トルコのほうが当事国だ。だからこそ、トルコは欧米とは異なる手段で問題を解決しようとしている。トルコが有する異なる手段とアプローチは、むしろ欧米に機会をもたらすことを認識すべきだ。

CFRインタビュー
原油価格ショックとグローバル経済の回復
―― 先進国の産業構造の転換が伴う問題とは

2011年4月号

マイケル・スペンス ノーベル経済学賞受賞エコノミスト

現在の原油価格高騰がいわゆる「ノーマルな状態」へ戻っていくと考えるのは正確ではない。「現在は一時的なショック状態にあるだけで、かつての状況に戻っていく」と考えるのは間違っている。危機前の状況へと戻っていくことはあり得ない。・・・さらに、マクロ経済の分析ではとかく景気循環が前提にされる傾向があるが、世界経済の構造と性格が着実に変化していることに目を向けるべきだ。・・・(今後、先進国は)貿易財部門、雇用に関して長期的に大がかりな変化を経験していく。いずれ経済成長路線に立ち返るだろうが、雇用(失業)問題が残存する。教育、・・・税制度、投資インセンティブ、公的資源を用いた投資と技術開発を見直していく必要があるし、所得再分配モデルも見直していくべきだ。

第3の石油ショックか
―― 中東の政治的混乱と原油価格高騰

2011年4月号

エドワード・モース 元国務副次官補(国際エネルギー担当)

「石油の呪縛」として知られる社会・政治構造が引き起こす産油国の絶望的な経済・社会的な停滞が、現在中東各地で起きている政治的混乱の背景にある。人々は、高い失業率、極端な所得格差、(食糧価格など)高い生活コスト、そして老人支配政治と泥棒政治などに対して怒りを表明している。つまり、産油国が「石油の呪縛」を断ち切るために、経済を多角化していかない限り、政治的争乱の原因である社会不満は解消しない。さらに、産油国国内における石油の消費も増大している。その結果、中東石油に依存する消費国は厄介な先行き見込みに直面している。現在の政治的混乱による供給の乱れだけでなく、産油国の国内消費の増大による供給の乱れを織り込まざるを得なくなっている。2011年は1971年同様に、石油をめぐる地政学の分水嶺の年になるかもしれない。

イラン核武装の脅威と封じ込めの限界
―― イラン、イスラエル、サウジによる核秩序の危うさ

2011年3月号

エリック・S・イーデルマン 前米国防次官
アンドリュー・F・クレピネビッチ 戦略予算評価センター(CSBA)会長
エバン・ブラデン・モントゴメリー CSBAリサーチフェロー

イランが核開発に成功した場合に、短期的にもっとも心配しなければならないのは、イランとイスラエルの対立が激化し、両国がともに相手に対する核の先制攻撃を試みる危険があることだ。長期的には、サウジその他の中東諸国が独自の核開発を模索するようになり、核の軍拡レースが生じ、地域秩序を大きく不安定化させるかもしれない。この場合、中東にはイラン、イスラエル、サウジという三つの核保有国が誕生する可能性が高く、この複雑で不安定な核秩序のなかで、イラン封じ込めを成功させるのは容易ではない。現状で必要なのは、外交努力を強制力で支え、拡大抑止レジームの基盤を築き、軍事キャンペーンが最後に残された妥当な選択肢となった状況でそれを選択できるように、中東に展開する空軍力と海軍力を増強しておくことだ。

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