1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

日本に関する論文

CFRブレス・ブリーフィング
最大の脅威はタミフルが
効かないウイルスへと
A(H1N1)が変異していくことだ

2009年6月号

ローリー・ギャレット CFRシニア・フェロー(グローバル・ヘルス担当)、ロバート・マクマホン www.cfr.orgのアクティング・エディター

「なぜ若年成人層がA(H1N1)のリスク・グループになっているかを考える必要がある。この場合に、免疫の弱っている人々、HIV感染者にどう作用するかを考えることも重要だ。次に、致死率を把握する必要がある。そしてウイルスの特性を突き止めなければならない。とくに、2008年9月からアメリカに姿を現し始めた豚インフルエンザとの関係を明らかにしなければならない。そしてタミフルへの耐性を持っているかどうかをつねに警戒しなければならない。すでにタミフルへの耐性を持っている季節型H1N1ウイルスと、今回の新型ウイルスが結びつけば非常に厄介なことになる」。

邦訳文は豚インフルエンザの発生直後、WHOが警戒レベルを4に引きあげるさなかの4月28日(現地27日)に開かれたCFRのプレス・ブリーフィングからの要約。現状でも関連性が高いと思われる部分だけを訳出した。全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

国家資本主義の台頭と市場経済の終わり?

2009年6月号

イアン・ブレマー ユーラシア・グループ会長

グローバルな金融危機にもかかわらず、国営石油企業が依然として世界でもっとも戦略性の高い資源の75%を支配し、国有企業そして政府の後ろ盾を持つ民間の覇権企業が、民間のライバル企業に対する競争上の優位を持っている。しかも、政府系ファンドは依然として潤沢な資金を持っている。本当に大きすぎて潰せないのはこれらの企業や組織のほうだろう。いまや市場経済の勢いは弱まり、国と政府が主要な経済アクターとして、主に政治的利益のために市場を利用しようとする「国家資本主義」が台頭し始めている。(冷戦期のような)政治的イデオロギーではなく、「市場経済」と「国家資本主義」という2つの経済モデルをめぐるグローバルな抗争という構図が生まれつつある。しかも、グローバルな金融危機とリセッションによって、「国が管理する資本主義」という強力なブランドが突きつける問題と課題はますます大きくなってきている。

日本の歴史認識と東アジアの和解を考える
――反動を誘発する謝罪路線の危うさ

2009年5月号

ジェニファー・リンド  ダートマス・カレッジ助教授

いかなる国であっても、多くの人が家族や家を失い、都市そのものが消失してしまうような凄惨な戦争の余波のなかで、自国の過去の行動を謝罪すべきだという提案が出てくると、国内で反動が起き、国論は二分される。戦後の西ドイツで謝罪路線への反動が「例外的に」小さかったのは、ドイツの統一とソビエトからの防衛という二つの外交上の大目標を実現する必要があったからだ。日本、あるいは日本と同様の立場にあるその他の国は、「謝罪」と(過去の歴史を正当化し)「謝罪を否定する反動」の間の中道路線、つまり、アデナウアーがとったように、(謝罪ではなく)、過去の間違いを認め、一方で、未来志向のビジョンを示し、これらを自国の戦後の成果に対する誇りへと結びつける路線をとるべきだろう。この路線で東アジアの緊張が緩和されれば、自国だけでなく、世界が利益を得られるようなリーダーシップを日本は発揮できるようになる。

アメリカは日本の「失われた10年」と同じ道をたどるのか
―― 日米のバブル崩壊を検証する

2009年4月号

リチャード・カッツ/オリエンタル・エコノミスト・レポート誌編集長

日本経済の「失われた10年」はその政治経済体制に深く根ざしていた。雇用を保護し、生産性の低い国内の企業と産業を守るために規制が張り巡らされ、企業間の談合がまかり通っていた。結局は、このような政治経済システムが生産性の向上と経済成長のポテンシャルを抑えこんでしまった。対照的に、2007年~2008年に起きたアメリカのサブプライム・モーゲージ・ローンをめぐる大失策は、日本のような「手に負えない構造的問題」ではなく、主に行き過ぎた(規制緩和)イデオロギーと金融ロビイストの影響力が重なり合って引き起こされた政策上の間違い、それも修正可能な間違いに派生している。もちろんアメリカの金融危機には、日本の場合よりもはるかに憂慮すべき側面が一つある。それは、アメリカの金融危機がグローバルな波及効果を持っていることだ。だが、悲観論に陥る必要はまったくないし、「アメリカの失われた10年」を懸念する必要もない。……

CFRミーティング
ワールド・エコノミック・アップデート
――「サブプライム後」のアメリカ経済、世界経済を分析する

2008年5月号

スピーカー
ジョイス・チャン  JPモルガン・チェース クライアントビジネス担当マネージング・ディレクター
イーサン・ハリス   リーマン・ブラザーズ アメリカ経済担当エコノミスト兼マネージング・ディレクター
ヌリエル・ルービニ  ニューヨーク大学 スターン・ビジネススクール教授
司会
ダニエル・K・タルーロ

まず金融部門が実体経済に影響を及ぼし、今度は実体経済の収縮が金融部門に悪影響を及ぼすという悪循環が今後始まることになる。(ヌリエル・ルービニ)

 ポイントは、さらに深刻な事態になれば、政府が大胆に動くと考えられることだ。この点が過小評価されている。(イーサン・ハリス)

 私はデカップリング論を支持しない。むしろ、「グローバル経済は一つのエンジンで刺激されているが、新興市場が世界経済に占めるシェアと役割も拡大している」と考えるべきだ。……大きな特徴は、新興市場経済が成長した結果、さまざまな形で経済的クッションが誕生していることだ。(ジョイス・チャン)

CFRインタビュー
分裂する中国社会と
ナショナリズムの行方
――チベット問題は氷山の一角にすぎない

2008年4月号

エドワード・フリードマン  ウィスコンシン大学政治学教授

経済開放政策が中国社会を揺るがしている。現状の開放策を維持するか、それとも中国らしさを支える伝統的な価値へと回帰するかをめぐって、地域も軍もナショナリストたちさえも内に分裂を抱えている。
 改革開放路線を導入した鄧小平は、当初から「反帝国主義スローガン」に代わる国の統合と連帯を図るツールが必要なことを理解していた。経済開放策を導入しようとしているのに、「反帝国主義スローガンではなじみが悪い。そこで、(国を束ねるツールとして)誕生したのがナショナリズム路線だった」。だが、あまりにナショナリズムを多用すれば、近隣諸国の多くをアメリカ側へと追いやってしまうことに気づいた胡錦涛は、一転、近隣諸国への柔軟外交に転じた。
 そしていまやナショナリストたちは、アメリカとの良好な関係を可能な限り維持するか、それとも、ヨーロッパや東南アジアとの貿易と投資の流れをもっと強化し、アメリカへの依存状況を軽くするかで割れている。
 邦訳文は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)のエドワード・

Classic Selection
CFRミーティング
馬英九が語る 中台関係の過去と未来

2008年2月号

スピーカー 馬英九  台北市長
司会    ジェローム・A・コーエン  米外交問題評議会非常勤シニア・フェロー

「台湾の中華民国政府は、1952年に日本に2国間会議を呼びかけ、4月28日に日華平和条約を締結した。この条約にも日本は占領していた領土への権利、権限、請求権を放棄するという条項が盛り込まれたが、やはり領土が誰のものになるかについての言及はなかった。ただ、この条約が当時、中華民国の外交部長(外相)だった叶公超が代弁する中華民国政府と日本との間で調印されたことは明らかである。日華平和条約が日本と台湾の間で調印されたことはきわめて明白であり、国際法の原則に基づき台湾は中華民国の領土に復帰したと解釈されるべきだ」

(Classic Selection とは、現在の情勢を理解するうえで有益と思われる過去の掲載論文の再録です。本文の内容、及び著者の肩書きは掲載当時のものです)

ミャンマー軍事政権への
多国間アプローチを調整せよ

2008年1月号

マイケル・グリーン 戦略国際問題研究所日本部長
デレク・ミッチェル 戦略国際問題研究所上級研究員

麻薬・武器の密輸、HIVの拡散など、ミャンマーの軍事政権は国内の人権問題や抑圧だけでなく、国境地帯を不安定化させて近隣諸国も脅かしている。これまで、アメリカはミャンマーとの外交関係を制限し、ヨーロッパも政治改革の断行を強く求めてきたが、アジア諸国の多くは、軍事政権との貿易、援助、外交関係を拡大してきた。幸い、こうした国際社会の矛盾したアプローチも変化しつつある。東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本はすでにミャンマーへの建設的関与路線を見直しつつある。内政不干渉の原則を固持し、資源調達がらみの思惑からミャンマーを支援してきた中国とインドにも再考を促す必要がある。各国がそれぞれ一定の譲歩を示し、政策を調整することによって、共通の目標に向けて状況を進めていかなければならない。ミャンマー制裁を他の関与策とバランスよく組み合わせて包括的に実行しなければならない。ミャンマーがさらに孤立して自暴自棄に陥り、失われた世代が生まれるのを傍観するわけにはいかない。人道的な理由もさることながら、ミャンマーは東南アジアの安全保障と統合を阻む未解決の深刻な課題なのだから。

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