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日本に関する論文

日本とトランプ
―― 試されるリーダーシップ

2025年1月号

マシュー・P・グッドマン 米外交問題評議会地政学研究センター ディレクター

「北朝鮮そして中国の東シナ海、南シナ海での活動に毅然とした態度をとるつもりがあるのか」。日本の指導者たちは、トランプの安全保障政策をもっとも心配していた。関税引き上げ策への懸念ももっている。日本製品に対する関税引き上げだけでなく、中国や(カナダや)メキシコで組み立てられた日本製品が打撃を受けることも警戒している。一方、中国経済のデカップリングなどに対する日本政府の意欲は限定的になるかもしれない。日本は経済大国であり、インド太平洋地域におけるもっとも重要なアメリカの同盟国だ。東京がこの先の荒波をどのように乗り切るかは、日本のリーダーシップはもとより、トランプ政権のリーダーシップの試金石にもなるだろう。

東アジアと中国の核戦力
―― 核共有と軍備管理の間

2024年9月号

エイミー・J・ネルソン ブルッキングス研究所 フェロー
アンドリュー・ヨー 米カトリック大学 教授

中国の核戦力増強は、北朝鮮のそれと同様に、東アジアを変化させている。いまや韓国市民の多くが核保有を望んでいるし、日本の古くからの核アレルギーも緩んできている。アジアはいまや、秩序を不安定化させる軍拡競争に突入していく軌道にある。ワシントンは中国に対して、(軍備管理に関する)中身のある交渉に建設的に参加するか、あるいは、東アジアでアメリカが支援する核軍備の大規模な増強という事態に直面するか、という困難な状況にあることを理解させなければならない。中国の指導者たちが軍備管理交渉を拒否するようなら、ワシントンは(核保有国が同盟国と核兵器を共有する)核共有制度について、ソウルや東京と協議を開始することもできる。

力による平和の復活
―― 二期目のトランプ外交を描く

2024年8月号

ロバート・C・オブライエン 前米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

トランプがアジアの同盟諸国に防衛にもっと貢献するように求めるのは、相手を不安にすると考える評論家もいる。だが現実には、「同盟関係は双方向の関係であるべきだ」というトランプの率直な発言の多くを、アジア諸国は歓迎し、トランプのアプローチは安全保障を強化すると考えている。トランプは(19世紀初頭に米大統領を務めた)アンドリュー・ジャクソンと彼の外交アプローチを高く評価している。「そうせざるを得ないときは、焦点を合わせた力強い行動をとるが、過剰な行動は控える」。トランプ二期目には、このジャクソン流のリアリズムが復活するだろう。ワシントンの友好国はより安全で自立的に、敵国は再びアメリカパワーを恐れるようになるだろう。

アジアとトランプの脅威
―― 不安定化リスクにどう備えるか

2024年8月号

ビクター・チャ ジョージタウン大学教授(政治学)

オーストラリア、日本、韓国という緊密な同盟国を含む、インド太平洋におけるすべての米同盟国は、トランプ二期目が新たな問題を突きつけてくる事態にもっと危機感をもつべきだ。トランプは、バイデン政権とアジア諸国がまとめた防衛、経済・貿易構想の再交渉を求めるか、解体を試みるかもしれない。同盟国をこれまで以上に貿易上の敵対国とみなし、アメリカの軍事プレゼンスの削減を試みるだろう。独裁的指導者たちと親交を深め、アジアの核不拡散環境を揺るがし、朝鮮半島の核武装化を刺激する恐れさえある。

東アジアのイノベーションモデルに学べ
―― 大企業とスタートアップの関係

2024年7月号

ラモン・パチェコ・パルド キングス・カレッジ・ロンドン 教授(国際関係論)
ロビン・クリングラー=ビドラ キングス・ビジネススクール 准教授(アントレプレナーシップ)

日韓両国は、スタートアップと大企業が協力する経済モデルを構築し、いまやハイテク分野のトップ企業を数多く抱えるようになった。ソウルと東京が模索するイノベーションモデルでは、政府や大企業が協力することで、スタートアップのポテンシャルを開花させ、広く恩恵を共有できると考えられている。一方、シリコンバレー神話の中核にあるのは、新進の起業家たちが大企業に取って代わる新しい企業を立ち上げ、既存産業を破壊するという考えだ。だが現在のシリコンバレーは、ハリウッド映画が描くような型破りな起業家たちの楽園ではない。ワシントンは、スタートアップと大企業の提携を恐れるべきではなく、東アジアに学んで、大手企業を政府やスタートアップのパートナーとして歓迎すべきだ。

東アジアの少子高齢化と地政学
―― 世界政治はどう変化するか

2024年6月号

ニコラス・エバースタット アメリカン・エンタープライズ研究所 政治経済チェア

東アジアのポテンシャルは、今後、人口減少によって大きく抑え込まれていくだろう。経済成長を実現することも、社会的セーフティーネットを財政的に支え、軍隊を動員することも難しくなり、日本、韓国、台湾は内向きになっていくはずだ。中国も、野心と能力の間の克服しがたいギャップの拡大に直面すると考えられる。一方で、高齢化も進む。中国に悪影響を与える東アジアの人口減少が、ワシントンの地政学的利益になるのは間違いないが、東アジアの民主主義国家にも足かせを作り出し、問題も引き起こす。これらの国家にとって、アメリカとのパートナーシップの必要性が高まる一方で、ワシントンにとって彼らは魅力的なパートナーではなくなっていくだろう。

大国間競争という幻想
―― 曖昧で変動する世界

2023年9月号

ジュード・ブランシェット 戦略国際問題研究所 フリーマンチェア(中国研究)
クリストファー・ジョンストン 戦略国際問題研究所  シニアアドバイザー

アメリカが直面しているのは、はっきりとした米中競争ではないし、二つの政治ブロックが対立しているわけでもない。緊密なパートナーや同盟国だけでなく、便宜的な二国間関係、不安定で暫定的な連合が織りなす国際環境で大戦略を展開していくには、ワシントンは、相互依存と自立、多極化とブロック化の間に位置する曖昧な世界でうまく流れを制御していく必要がある。はっきりとした反中国の立場で協調しようとする国がほとんどない以上、アメリカはパートナーにゼロサムの選択を求めることには慎重でなければならない。様々な連合を迅速に組織しなければならない世界では、パートナーの立場に配慮して、微妙な部分は口に出さない方が賢明な場合も多い。

欧米の所得二極化と社会混乱
―― ラテンアメリカ化する欧米社会

2023年9月号

ブランコ・ミラノヴィッチ ニューヨーク市立大学 シニアスカラー

産業革命から20世紀半ばまでは、世界の富は欧米先進国に集中した。このために世界的な不平等が拡大し、冷戦期にそれはピークに達した。その後、中国の経済的台頭のおかげもあって、世界レベルでの格差は低下し始めたが、いまや世界的な平等の進展はもはや必然ではなくなっている。中国はすでにかなり豊かな国になっているし、インドやアフリカにかつての中国の役割を期待するのは無理がある。しかも、世界的な不平等が縮小しても、各国の社会的・政治的混乱が緩和されるわけではない。実際、米英、日独などの世界の富裕層は世界トップレベルの所得を維持しているが、非欧米諸国の所得レベルが上昇し、欧米の貧困層や中間層に取って代われば、豊かな国々における富裕層とそうでない人々との二極化、格差はさらに大きくなる。・・・

新産業政策の恩恵とリスク
―― 建設的な国際協調か補助金競争か

2023年7月号

デビッド・カミン ニューヨーク大学ロースクール教授
レベッカ・カイザー フォーダム大学ロースクール教授

グローバルミニマム課税の成功は、大企業が利益を最大化しようと、国を競い合わせることに対して、各国が協力して「法人税引き下げによる底辺への競争」を回避できることを示した。問われているのは、国家安全保障や気候変動との闘いに不可欠な産業の生産拠点をどこに移すかをめぐっても、ワシントンが友好国や同盟諸国と協力して、解決策を見出せるかどうかだ。気候変動問題への対応、新サプライチェーンの構築、中国の脅威への対応といったわれわれと友好国が共有する目標を達成するための措置をめぐって協力できなければ、ワシントンは、同盟諸国や信頼できる貿易相手国との間で激しい競争を新たに引き起こすことになる。それを回避するには何が必要なのか。

モスクワの大いなる幻想
―― ウクライナ戦争とプーチン体制の本質

2023年4月号

フィオナ・ヒル ブルッキングス研究所 シニアフェロー
アンジェラ・ステント ジョージタウン大学名誉教授

ロシアは国際的に孤立してはいない。グローバルサウスでは、この戦争についてロシアが語るストーリーが支持を集め、多くの場合、欧米よりも、プーチンのほうが大きな影響力をもっている。しかし、今回の戦争で、ロシア側の死傷者は20万人に迫っている。戦争に反対か、徴兵を避けるためにロシアを出国した人もこの1年で推定100万人に達するとされる。それでも、プーチンが戦争を決意したら、その行動を抑止できる国やアクターはほとんど存在しない。ウクライナとウクライナを支持する国々は、ロシアがこの戦争に勝利すれば、プーチンの膨張主義がウクライナ国境を越えて拡大することを理解し、憂慮している。そしてプーチンは、いまもこの戦争に勝利できると信じている。・・・

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