1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

ヨーロッパに関する論文

21世紀を制するのは中ロか、欧米か
――権威主義的資本主義国家の復活という虚構

2009年2月号

ダニエル・デューデニー  ジョンズ・ホプキンス大学政治学教授
G・ジョン・アイケンベリー  プリンストン大学教授

ネオコンサーバティブの理論家が提言するように、権威主義国家の復活に対して、リベラルな民主国家が団結して封じ込め、軍事競争、排他的なブロック形成という路線で対抗しても、そうした国々における非自由主義的なトレンドを強化するだけだ。対照的に、地球温暖化、エネルギー安全保障、(感染症などの)疾病などの、世界が共有するグローバルな問題に彼らと協調して取り組んでいけば、権威主義国家が現在のリベラルな秩序に見いだしている価値をさらに高めることができる。つまり、民主主義国家は、相手とのイデオロギー上の違いに注目するのではなく、現実の問題、共有する問題に実務的に協調して取り組んでいくべきなのだ。政治体制ではなく、共有する利益に基づく連帯を模索すれば、反自由主義的な権威主義国家がブロックとしてまとまっていくのを回避することもできる。何よりも、リベラルな民主主義国家は歴史の流れが依然として自らの側にあることを忘れてはならない。

金融危機を前に、世界の多くの国は歴史的な転換点にさしかかりつつある。これまでとは逆に、国の役割が大きく、民間の役割が小さくなる時代へと向かいつつあり、アメリカのグローバルなパワーも、アメリカ流の民主主義の訴求力も弱まりつつある。こうした危機の一方で、バラク・オバマが大統領になり、広く希望が持たれていることは幸運だが、それでも、「歴史の流れ」と「2008年の危機」の双方が、世界をアメリカの一極支配構造から遠ざけていくことは避けられないだろう。今回の金融危機が、世界の中枢がアメリカから離れていくという歴史的な潮流と重なり合っているからだ。中期的には、アメリカの世界における影響力は低下し、中国を中心とする他の諸国がより早いペースで台頭するチャンスを手にすることになる。

グローバルに統合された企業
―― アジアからアメリカへの貿易は停滞する

2008年12月

サミュエル・J・パルミサーノ IBM取締役会長

どこまでグローバル化できるかについての企業の認識が変化した結果、企業の関心は、どのような製品をつくるかよりも、いかにそれを生産するか、どのようなサービスを提供するかよりも、どのようにサービスを提供するかに移っていった。いまやアウトソーシングが一般的になり、企業は自らを、調達、生産、研究、販売、流通などの特定部門が並列するネットワークとみなしている。ここにおける真の技術革新とは、新しい製品を開発し、生産するための創造力だけに左右されるわけではない。いかにサービスを提供し、ビジネスプロセスを統合するか、いかに組織やシステムを管理し、知識を移転するかでその多くが左右されることになる。

CFRインタビュー
ユーシェンコ・ウクライナ大統領との対話
――ヨーロッパとの統合とロシアとの関係

2008年11月号

スピーカー
ビクトル・ユーシェンコ  ウクライナ大統領
司会
クリスティア・フリーランド  フィナンシャル・タイムズ紙米マネージング・エディター

「ウクライナが政治的混乱に陥っているのは、グルジア紛争の余波がウクライナを不安定化させた結果だとみる人もいる。大統領、議会、地方政府の選挙を実現させるために、2008年の12月までにウクライナ政治を不安定化させようとする計画の一環だとする見方もある。この計画をまとめた人物は、ウクライナの政治を不安定化させることで、これまでウクライナがとってきた戦略、外交、国内政策、EU路線とは異なる方向へとギアを入れ替えさせるための政治状況を作り出そうとしている」

CFRインタビュー
カーライル・グループ、
D・ルーベンシュタインが語る
金融危機第2幕に備えよ
――強欲は鳴りをひそめ、恐怖がとって代わった

2008年11月号

デビッド・M・ルーベンシュタイン カーライル・グループ共同創設者兼マネージング・ディレクター

 アメリカの株式市場が下落し、世界中の主要株式市場も連鎖的に下落したことを受けて、専門家の多くは、2008年の金融危機はすでにパニックを引き起こしていると考えるようになった。大手プライベート・エクイティのカーライル・グループの創設者で、現在、マネージング・ディレクターを務めるデビッド・M・ルーベンシュタインは、パニックと恐怖を緩和するには、「なりふりかまわずに」あらゆる対策を打たなければならないと主張する。
 米外交問題評議会(CFR)の役員でもあるルーベンシュタインは、現在起きている株式市場の暴落と信用収縮は金融危機の「氷山の一角」にすぎないと述べ、この数十年間にわたって世界経済を牽引してきた金融および経済の原動力の徹底的なオーバーホールが行われることになると今後を見通している。さらなる混乱を回避するには、政府とビジネスの指導者の協調、そして各国政府との協調が必要になると語る。
 現在の混乱はプライベート・エクイティのビジネスにどのような影響を与えるのか。レバレッジ規制はプライベート・エクイティにとっても大きな問題となるとルーベンシュタインはみる。潤沢なキャッシュを手元に持ってはいても、ローンを組むことができなくなれば、プライベート・エクイティは、レバレッジを利用して企業を買収していく戦略を取ることができなくなり、生き残っていくには、どのようにビジネスモデルを変えていくかを考えていかなければならない、と。一方で同氏は、特定の段階になれば、千載一遇の投資チャンスをとらえようとする投資資金が流入し始め、企業が再生していくと考えられるとコメントした。聞き手は、リー・ハドソン・テスリク(www.cfr.orgのアソシエート・エディター)。

グルジア紛争を解決するには
――米専門家5人に聞く

2008年9月

ドミトリ・トレーニン  カーネギー国際平和財団モスクワ・センター副所長
ラジャン・メノン   ニュー・アメリカン財団研究員
アリエル・コーエン   ヘリテージ財団シニア・リサーチフェロー
チャールズ・A・クプチャン  米外交問題評議会ヨーロッパ担当シニア・フェロー
アラン・メンドーサ  ヘンリー・ジャクソン・ソサイエティ・エグゼクティブ・ディレクタ

グルジアとロシアはこれまでも敵対的な関係にあったが、2008年8月8日、ついに対立は紛争へとエスカレートした。これを侵略戦争と呼ぶ専門家も多い。南オセチア自治州でグルジア軍を圧倒したロシア軍は、そのままグルジア領土へと侵攻し、いくつかの都市を占拠した。
 フランスのニコラ・サルコジ大統領が8月12日にまとめた停戦合意は、ロシア、グルジアの双方に紛争前の現状へと復帰するように求めている。ロシア政府は、今回の行動は、南オセチアとアブハジアという分離地域におけるロシアの市民権を持つ人々と平和維持部隊を守るために必要だったと表明している。ブッシュ大統領は米軍に対して現地へ人道支援物資を届けるように命令し、モスクワに対して「紛争を終わらせるという約束を守るように」と要請している。以下は、「今回のグルジア紛争を経て永続的な平和が実現するか」というテーマでの5人の専門家へのインタビュー。

1990年代は中央・東ヨーロッパに民主主義を定着させることが課題とみなされていた。だが現在は、さらに東側のヨーロッパとアジアが出会うユーラシアを安定化させるというさらにむずかしい課題にわれわれは直面している。トルコ、ウクライナ、グルジア、アルメニア、アゼルバイジャンなど、バルカン半島から黒海、南コーカサスにいたる地域の安定化が問われている。南北を不安定な中東と敵対的なロシアに囲まれているこれらの国々が、ヨーロッパ大西洋コミュニティーの南方における新たな「側壁」を形成しつつあることを認識すべきだ。現在の西バルカン地域、グルジア、ウクライナなどの黒海周辺地域は、10年前の中央ヨーロッパや東ヨーロッパよりもさらに不安定で大きな危険にさらされている。

NATOの東方拡大に反発したロシア

2008年9月号

F・スティーブン・ララビー ランド研究所ヨーロッパ安全保障問題担当議長

ロシアはかねて旧ソビエト地域における影響力の低下に頭を悩ませてきた。今回のロシアのグルジア侵略は、近隣地域での民主化潮流の台頭に対するロシアの回答だったとみなすこともできる。今回のロシアの動きは、旧ソビエト地域に欧米の影響力、とりわけNATOの影響力が入り込んでくるのを押し返そうとする試みだった。とはいえ、NATOの一部メンバーは、(NATOへの加盟を望んでいる)グルジアやウクライナがヨーロッパの一部なのかどうかについて確信が持てずにおり、われわれは防衛上の確約を旧ソビエト諸国に与えることには慎重でなければならない。現在われわれにできることは、ロシアに対してグルジアからロシア軍を撤退させるように求め、それに応じるまでは、ロシアのWTO加盟を支持しないという路線をとることだ。また、今回のグルジアに対するロシアの行動は、グルジアよりも、むしろウクライナを意識した行動だったことも見落としてはならない。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

Page Top