1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

ヨーロッパに関する論文

ウクライナを ヤヌコビッチ大統領から救うには

2010年8月号

アレクサンダー・モティル ラトガーズ大学政治学教授

最終的に「ドタバタ劇場」と揶揄(やゆ)され、人々の期待を裏切る結果に終わった「オレンジ革命」を経て、ウクライナに誕生した新しい指導者は誰だったか。それは、皮肉にも、一度は手にしたかにみえた大統領ポストをオレンジ革命によって奪い取られたビクトル・ヤヌコビッチだった。ヤヌコビッチは、過去のマイナス・イメージを払拭する「民衆のための国、ウクライナ」という絶妙なスローガンを唱えて2010年2月の選挙でついに勝利を手にした。しかし、ヤヌコビッチは、まるでロシアへの忠誠を示すかのようなウクライナに不利な協定を結び、いまや国を裏切った指導者という烙印を押されている。しかも、適材適所とはかけ離れた政治的任命で組織されたヤヌコビッチ政権には、現在のウクライナに必要な経済改革を実行する能力も意思もない。人々の怒りと不満が行き所を失う前に、欧米、そしてロシアは、ヤヌコビッチに対して路線変更を迫り、混乱への道からウクライナを救い出さなければならない。

NATOの将来は 「域外」での活動にある
―問われる特権と義務のバランス

2010年7月号

スピーカー
マドレーン・オルブライト  元米国務長官、NATO新戦略概念・専門家グループ議長
司会
リチャード・ハース 米外交問題評議会会長

現在のNATO同盟国の多くは、有意義な対応策をとる意志も能力も持っていない。危機に対応しようとするのは、NATOに加盟する数カ国と非加盟の数カ国だ。むしろ、NATOを現状に適応させようと試みるよりも、21世紀型の同盟を新たに考えた方がいいのではないか。(R・ハース)

NATOのことを、各国が参加したいと望む類い稀な同盟関係と言うこともできる。この意味では、同盟はまだ死んでいない。改革は必要だが、非常に有意義な構造を持っている。NATOを21世紀型の同盟構造に改革していく必要がある。(M・オルブライト)

21世紀は新興市場国の世紀に
― G20、世銀、IMFの未来

2010年7月号

スピーカー
スチュワート・M・パトリック 米外交問題評議会シニアフェロー国際機関およびグローバル統治プログラム責任者
司会
デビッド・E・サンガー  ニューヨーク・タイムズ ワシントン支局長
パネリスト
ホイットニー・デベボイス 元世界銀行 理事
アルビンド・サブラマニアン ピーター・ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー
アントニー・フォン・アットマール 新興市場マネジメントLLC会長兼チーフ・インベストメントオフィサー

最終的には、アメリカ、ヨーロッパ、日本のような、すでに確立されたパワー、中国、インド、ブラジルのような新興大国、さらには新興のミドルパワーの間でタフな取引と交渉が行われ、その結果、新しい秩序が形成されていくことになる(S・パトリック)

G20は新しいG7に至る通過点にすぎない。新しいG7は、アメリカ、EU、日本、BRICs諸国で構成されることになるだろう(アットマール)

ロシアのNATO加盟を
―― 汎ヨーロッパ安全保障秩序の確立を

2010年7月号

チャールズ・クプチャン ジョージタウン大学教授(国際関係論)

欧米が、ロシアのことを「戦略的なはぐれ者」として扱い続けるのは、歴史的な間違いだ。ナポレオン戦争後や第二次世界大戦後に大国間の平和が実現したのは、かつての敵対勢力を戦後秩序に参加させたからだという歴史の教訓を思い起こす必要がある。冷戦後の現在、ロシアのNATO加盟を実現させることが、汎ヨーロッパ秩序を構築する上でも、NATOの今後に関する論理的な矛盾をなくす上でも最善の方法だろう。グローバルな課題、G20などの国際機関の改革に取り組んでいくにはロシアの協力が不可欠だし、ロシアを参加させれば、加盟国間の内なる平和を促すという、NATOのかつての機能を再確立することにもなる。平和的な汎ヨーロッパコミュニティの実現という新しい目的は、NATOの存在理由を取り戻すことにもつながる。確かに、ハードルは高い。だが、プーチン首相は、大統領になって間もない時期に「ロシアの利益が考慮され、ロシアが(欧米の)完全なパートナーになれるのなら、自分はNATOへのロシアの参加という選択肢を排除しない」と述べている。いまこそ、欧米は決意を持ってプーチンの真意を確かめるべきだろう。

欧米のソフトパワーとハードパワーを融合させよ
―― EUとNATOの連携強化を

2010年6月号

ウィリアム・ドロズディアク ドイツ・アメリカ評議会会長

NATOは軍事同盟だが、EUは軍事力の行使には否定的で、むしろ、開発援助、教育その他の領域への支援、つまり、ソフトパワー路線に価値を見いだしている。これは、NATOのハードパワーにEUのソフトパワーをまとわせれば、地球温暖化、破綻国家、人道的悲劇といった今日的課題に米欧が協力して対処していけるようになることを意味する。そのためには、EUとNATOの連携を強化しなければならない。そうしない限りEU、NATOという欧米のもっとも重要な二つの機関も、今後、時代に取り残された凡庸な存在と化し、最終的には無力化していくだろう。この2つの機関の連携を強化して大西洋同盟を新たに再生することが、(中国とインドという)台頭するアジアパワーを前に、アメリカとヨーロッパがグローバルな影響力を強化していくためのもっとも効果的な方法だろう。

「新しいヨーロッパ」のポテンシャル
―― リスボン条約で欧州の何が変わるのか

2010年5月号

アンソニー・ルザット・ガードナー 元米国家安全保障会議ヨーロッパ担当ディレクター
スチュアート・アイゼンシュタット 元駐EUアメリカ大使

すでにEU加盟国は、国連、全欧安保協力機構その他の国際フォーラムで、同じ投票行動をとっている。この行動パターンは今後も続くだろうし、リスボン条約というEUを束ねる支えができた以上、今後ヨーロッパはますます一貫性のある外交路線をとるようになる可能性がある。だが、「ヨーロッパ」がこれまで外交的ポテンシャルをうまく生かせなかったとすれば、それは、加盟国政府がそう望んだからに他ならない。つまり、リスボン条約によって手続きと制度が改善されたと言っても、加盟国が最小公倍数的な外交政策のコンセンサスしか目指さず、国の特権にしがみつくようであれば、条約の前提は満たされぬままに終わる。だが、長期的には、リスボン条約によって、EUはより一体性、凝集力に富む国際的アクターになり、その言動は、世界の諸国により大きな影響を与えることになるだろう。

核不拡散と原子力の平和利用を両立させる道はあるか

2010年3月号

チャールズ・ファーガソン 米科学者連盟会長

非核保有国が原子力発電用の原子炉を調達すれば、その分、核不拡散のリスクは高まっていく。原子力発電に切り替えるだけでは、有効な地球温暖化対策とはなり得ないが、原子力発電を新たに試みるに適した国が、厳格な安全基準、管理体制、核不拡散のガイドラインを受け入れるのであれば、核拡散のリスクを伴うとしても、原子力の平和利用を認めざるを得ない。また、核拡散を防ぐには、核能力を獲得することが自国の安全保障問題への解決策だと考えている国の安全保障上の不安を取り除き、核兵器を保有すれば国際関係において大国と同等の立場を手に入れられるとする間違った認識を正していく必要もある。この観点から、国連安保理の常任理事国に日本のような核を保有していない地域大国を迎え入れることも考えるべきだ。国際コミュニティは地域大国が抱く不安を取り除き、核を保有することで得られる過大な名声を剥ぎ取り、原子力エネルギーに非核保有国が抱く不合理な期待を引き下げていくように努力すべきだろう。そうすることで、核廃絶のビジョンを支えていくことができる。

CFRインタビュー
トタル社CEO、ドマルジェリーが語る
エネルギーと環境のバランス

2010年2月

クリストフ・ドマルジェリー 仏トタル社CEO(最高経営責任者)

「今後がどうなるかについての予測もなしに長期投資を行うのは難しい」。したがって、「環境とエネルギーのバランス」に関する議論の結論がどのようなものになるか。「それが分かるのは早ければ早いほどよい」と考え、われわれエネルギー産業は焦りを感じている。だが一方で、「議論の結論次第では、われわれが想像さえしていないような極端な路線の修正を強いられるかもしれない以上、(長期投資の判断は)結論を待ったほうがよい」という考えももっている。「議論の結論が出るのは早いほうがいいが、・・・・環境とエネルギーの二者択一は良くない、バランスを取るべきだと考えている」。

CFRミーティング
核のない世界は幻想か?

2009年12月号

スピーカー モハメド・エルバラダイ 前IAEA事務局長
司会 リチャード・ハース 米外交問題評議会会長

残念なことだが、核を保有するか、核兵器を開発する能力を持っていればパワーと名声、そして保険策を手にできると多くの国が依然として考えている。・・・彼らが考えているのは軍備管理ではない。「核兵器を開発する必要があるか」という命題だ。・・・より状況を複雑にしているのは、・・・ウラン濃縮技術や再処理能力など、(核兵器そのものではなく)核開発に必要な能力を獲得するだけで十分だと各国が考えだしていることだ。・・・核廃絶を唱えるのは簡単だ。重要なのは、それに必要なシステムやレジームを考え、整備していくことだ。

Page Top