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中国に関する論文

CFRミーティング
核のない世界は幻想か?

2009年12月号

スピーカー モハメド・エルバラダイ 前IAEA事務局長
司会 リチャード・ハース 米外交問題評議会会長

残念なことだが、核を保有するか、核兵器を開発する能力を持っていればパワーと名声、そして保険策を手にできると多くの国が依然として考えている。・・・彼らが考えているのは軍備管理ではない。「核兵器を開発する必要があるか」という命題だ。・・・より状況を複雑にしているのは、・・・ウラン濃縮技術や再処理能力など、(核兵器そのものではなく)核開発に必要な能力を獲得するだけで十分だと各国が考えだしていることだ。・・・核廃絶を唱えるのは簡単だ。重要なのは、それに必要なシステムやレジームを考え、整備していくことだ。

CFRインタビュー
米中貿易摩擦を回避せよ

2009年12月号

スティーブン・ローチ  モルガン・スタンレー・アジア会長

連邦準備制度理事会のバーナンキ議長は、将来における経済危機を避けるには米中間の巨大なグローバル・インバランスの是正に直ちに取り組む必要があると警告し、米議会のメンバーの多くも、米中の不均衡は人民元が過小評価されていることが元凶だとみなし、人民元の切り上げが必要だと考えている。だが、スティーブン・ローチは、人民元が過小評価されていることを貿易問題の元凶とみなすのは間違っており、そうした見方は、政治的なまやかしの類にすぎないと言う。インバランスの是正に向けて中国の国内消費を刺激するには、社会保障制度を整備するように北京に働きかけるべきだと提言する同氏は、アメリカの失業率の上昇と低成長が続くなか、米議会が保護主義的な対中法案を成立させれば、ドル暴落のきっかけになりかねないと警告した。

CFRミーティング
中国経済は本当に成長しているのか
―――経済失速か内需拡大か

2009年12月号

スティーブン・ローチ  モルガン・スタンレー・アジア会長

中央統制経済システムにおいて政府が銀行に資金を提供するように命じ、地方政府がインフラプロジェクトを通常予算の別枠で実施するとすれば、経済が数値上成長するのは当然のことだ。減税措置が導入され、それによって得た資金の使途が個人に委ねられるアメリカとは大違いだ。国家発展改革委員会(NDRC)がGDP成長の目盛りを8に合わせれば、8%の成長を手にできる。2009年前半のGDP成長率が7・1%、後半が9%に達すると思われるので、数字は奇跡のように8%の成長ということになる。だが・・・ (S・ローチ)

CFRインタビュー
IMFのグローバル経済への
影響力は高まるのか?

2009年11月号

エドウィン・トルーマン ピーターソン国際経済研究所シニアフェロー

IMFが各国のグローバル経済再生に向けた対策の監視と評価をするとしても、すべてはトリッキーだ。なにせ相手は主権国家だ。しかも、内需と外需のバランスに焦点をあて、為替レートにさえ口出しするとなると、スムーズにいくはずはない。大きな問題は、例えば、IMFが中国に対して「貴国の経常黒字が急速に増大している以上、より迅速に為替を適正なレベルへと向かせるべきだ」と言えるかどうか、そうして、アドバイスを受けた国がそれを聞き入れるかどうかだ。・・・これから半年後に監視と評価をめぐってIMFに何か言われたからといって、アメリカの大統領や財務長官が「わかった。IMFの言うとおりだ。早速予算を見直そう」と言うはずはない。

CFRブリーフィング
グローバル・インバランスがなくならない理由

2009年11月号

マーク・レビンソン 外交問題評議会国際ビジネス担当シニア・フェロー

「グローバル・インバランスを是正していくための具体的措置を支持するような政治基盤はいかなる国にも存在しない。・・・日本の鳩山由紀夫首相にとっても、グローバル・インバランスの是正とは、外国市場の需要の落ち込みで日本の製造業が苦しんでいるときに、さらに輸出の伸びを抑えなければならないことを意味する。・・・・世界の指導者はよりバランスのとれた世界経済の構造をつくりたいと願っているかもしれない。だが、その実現に向けて早急に措置を講じることはないだろう」。

CFRインタビュー
アメリカの需要に代わる
牽引車を世界は作り出せるのか

2009年11月号

スティーブン・デュナウェイ 外交問題評議会 国際経済担当非常勤フェロー

現在の経済トレンドを示す指標を見る限り、かなり、ゆっくりとしたペースの経済回復しか期待できないと思う。今回の世界経済の回復は、われわれがこれまでに知るものよりも、はるかにゆっくりとしたものになる。そして、今後10年間における最大の疑問は、「十分な需要を作り出すのが誰になるか」ということだ。これまでも長い間、グローバル・インバランスの問題は議論されてきたし、世界経済の構造を改善していくために各国がどのような政策をとればよいかが争点とされてきた。問題は、これらの政策の多くが短期的な痛みを伴う恐れがあり、それゆえに、政治的には魅力ある選択肢ではないことだ。

経済成長率だけでは国を判断できない。いまや次なる覇権国との呼び声の高い中国も、社会保障を強化して、経済成長よりも社会的安定を選ばざるを得ない状況に直面し、必然的に成長率は低下していく。何が国を偉大な存在にするのか。大規模な人口、経済力、軍事力だけでは十分ではない。・・・比類なき研究・開発への取り組みと高い高等教育のレベル、そして、他国の利益も高めるようなやり方で自国の利益を模索し、世界の公共財を高めて行く路線を取ることが必要だ。この路線を取ったがゆえに、20世紀には、アメリカの行動を待望する各国の期待が育まれていった。中国やロシア、あるいはヨーロッパや日本が、自国の利益を超えた領域での行動をとるだろうか。アメリカを世界の中枢を担う「規格外国家」としている最大の要因は、国益を国際的な公共財へと変化させるリベラルな思想を持っていることだ。

米中露トライアングルの勝者は誰か
―中国の影響力拡大は続く

2009年10月号

スティーブン・コトキン
プリンストン大学歴史学教授

ポスト・ソビエト時代における衰退からはすでに立ち直っているが、依然として地域大国のレベルに甘んじているロシアは、それでもグローバルな大国として振る舞おうとしている。その結果、ロシアはアメリカの中央アジアその他での影響力拡大を阻止することに気を奪われ、結果的に中国に足元を脅かされている。一方、中国は、すでにグローバルな大国へと変ぼうを遂げているにも関わらず、多くの場合、地域大国として振る舞うことに徹している。北京は、米ロのジュニアパートナー役を受け入れることで、利益と影響力の最大化を狙っている。ロシアは、アメリカのジュニアパートナーに甘んじることを拒絶することで、図らずも、中国のジュニアパートナーになってしまった。この枠組みは、北京がそうすることが都合がよいと判断する限り続くだろう。

Classic Selection 2009
脅かされる基軸準備通貨、ドルのジレンマ
―― ユーロ、SDR、人民元の台頭

2010年9月号

バリー・エイケングリーン カリフォルニア大学バークレー校 経済学教授

基軸準備通貨は1通貨でなければならないという考え方は、歴史を見れば間違っていることが分かる。歴史的にみても、複数準備通貨制の下では、準備資産を求める新興市場国から唯一の準備通貨供給国へと膨大な資金が流入し、これによって資産バブルが起きるという、最近、アメリカで見られたような混乱は起きていない。第二次世界大戦後のドルの地位は、アメリカ経済のグローバル市場における圧倒的なプレゼンスに支えられていたが、もはやこの例外的な状況は存在しない。短期的には、ユーロがヨーロッパ域内と近隣地域において準備通貨としてのシェアを伸ばしていくだろうし、長期的には、人民元が特にアジアにおいて影響力を拡大していくと考えられる。しかし、予見できる将来について言えば、ドルが他よりも一頭抜きんでた準備通貨であり続けるだろう。

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