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中国に関する論文

強大化する中国への対抗策を

2012年9月号

アーロン・フリードバーグ プリンストン大学教授

米中が今日まで真の和解を達成できていないのは、努力が足りなかったからではない。根本的に米中の利害認識が異なるからだ。米中が安定した行動様式を維持しようにも、イデオロギーギャップと相互不信があまりに大きすぎる。アメリカの働きかけにもかかわらず、中国は現状維持を受け入れるどころか、近隣海域の資源を手に入れようと強硬な対外路線をとっている。だが対抗バランスを形成するとしても、中国が軍事力の増強を続ける一方で、アメリカは軍事予算を削減せざるを得ない状況にある。こうして、東アジアの地域バランスは、急速に中国に有利なものへと変化しつつある。中国は「接近阻止・領域拒否(A2AD)」と呼ばれる軍事能力の整備に力を入れ、これらの兵器で西太平洋におけるすべての空軍基地と港をターゲットにし、米軍の空母を含む戦艦を威嚇することもできる。北京は地域的覇権の確立を思い描いている。

CFR Interview
投資バブルの崩壊で中国経済は長期停滞へ

2012年9月号

パトリック・チョバネック
清華大学経済・マネジメント大学院准教授

この数年来の中国経済の成長は、グローバル経済危機対策として北京が実施した景気刺激策が作り出した投資ブームによって牽引されてきた。当然、これは持続可能な成長ではなかった。今や投資バブルははじけ、不良債権が増大し、中国経済の成長率は、2009年以降、最低のレベルへと抑え込まれている。・・・すでに、中国の地方政府が不動産開発業者を、そして中央政府が国有企業や地方政府をベイルアウトし始めている。・・・中国政府は成長戦略の見直し、つまり、輸出・投資主導型モデルから内需主導型モデルに向けた調整を迫られている。中国経済をリバランスするには、為替政策、金利政策、課税策を見直して、資金が家計(預金者と消費者)へと流れるようにしなければならない。・・・有意義な調整プロセスによって中国経済がよりバランスのとれたものへと進化していけば、中国により多くの輸出をしたい国や企業、中国との貿易バランスを均衡させたい国に大きな恩恵がもたらされる。問題は、この調整が痛みを伴うために、成長戦略の見直しに対する政治的抵抗が避けられないことだ。

CFR Update
なぜ日中ハッカー戦争は起きていないのか
――領有権対立とサイバー戦争

2012年9月号

アダム・シーガル 米外交問題評議会中国担当シニア・フェロー

中国とフィリピン、ベトナムの領有権をめぐる対立は、相手国のウェブサイトの改ざんなどのハッカー戦争へとエスカレートしていった。これを前提にすれば、尖閣問題をめぐって、日本との対立で中国のハッカーたちがより激しい攻撃をしてくると考えてもおかしくはなかったが、これまでのところ、大がかりな攻撃は起きていない。なぜだろうか。おそらく、二つの理由が考えられる。・・・

北朝鮮、中国、イランに対する毅然たる対応を
―― キューバミサイル危機の教訓

2012年8月号

グレアム・アリソン
ハーバード大学ケネディスクール教授

ケネディは、ソビエトがキューバに核ミサイルを配備しているという事実を前に、「長期的な戦争のリスクを低下させるには、短期的に戦争リスクを高める必要がある」と考えた。キューバ危機の教訓の一つは、戦争、そして核戦争のリスクでさえも引き受ける覚悟がなければ、巧妙な敵に対立局面において何度も裏をかかれてしまうということだ。イラン、中国、北朝鮮と相手が誰であれ、その一線を越えれば戦争も辞さないという「レッドライン」を設定しているのなら、その事実を敵対勢力に認識させ、実際に行動する決意をみせるべきだ。そうしない限り、警告は相手にされなくなる。

戦略的ビジネス外交の薦め
―― 途上国経済を支配する中国企業への対抗策を

2012年8月号

アレキサンダー・バーナード
グリフォン・パートナーズマネージング・ディレクター

中国政府は途上国政府に低利の融資その他の支援を提供し、多くの場合、その見返りに、相手国に中国国有企業の資源開発へのアクセスを与え、インフラ整備プロジェクトを受注させることを求める。このやり方を通じて、中国企業は途上国の経済に食い込み、いまや新興市場国は自国の経済的生存を中国に依存するようにさえなっている。だが、巻き返しのチャンスはある。途上国の多くが「自国の経済を中国に支配されている現実」に反発しているからだ。「中国国有企業は相手国の労働者を雇うのではなく、自国から労働者を呼び寄せ、環境的配慮をせず、開発に古い技術を用いて(資源にダメージを与える)」というネガティブなイメージが定着しつつある。一部の途上国は中国にばかり依存するのではなく、経済関係の多様化を図りたいと考えている。途上国における中国国有企業に対する不満が高まっているだけに、この重要な市場で、アメリカがイニシアティブを取り戻すチャンスが生まれている。今こそ、戦略的ビジネス外交を展開すべきタイミングだ。

Classic Selection 2004
起業型経済の構築を

2012年7月号

カール・シュラム ユーイング・マリオン・コーフマン財団会長

デルやシスコ・システムズなど、アメリカ経済の富と生活レベルを引き上げているのは起業によって立ち上げられた企業である。こうした新企業は経済の技術革新を誘導するだけでなく、新規雇用をつくり出し、景気循環がつくり出す困難な時期の衝撃を緩和し、経済の成長と進化を刺激する。アメリカに存在する起業と大学、大企業、政府を結ぶ「4セクターモデル」は、経済停滞に直面している先進国だけでなく、途上国も導入できる。起業にまつわる文化的な制約は取り払うことができる。

CFR Meeting
中国には法律はあっても、法の支配がない

2012年6月号

◎スピーカー
陳光誠
人権活動家
◎プレサイダー
ジェローム・コーエン
ニューヨーク大学教授

中国で社会蜂起が絶えないのは、社会が公正でないからだ。当局は、圧力をかけ弾圧して、問題を封印しようとする。このやり方で問題に蓋をしても、さらに問題は大きくなる。この6-7年の私の経験からみても、中国の法の支配はますますひどくなっている。法と秩序を担当する地方の共産党書記でさえ「法律など関係ない。われわれは超法規的な措置をとる」と発言している。法当局が法を守らなければ、他の人々が法を守ると期待することができるだろうか。・・・・だが、私が生きているうちにという時間枠でみれば、民主化が実現されると楽観できる。この数年間における情報・通信機器の発達によって、人々は情報を拡散できるようになり、社会は大きく変化している。この状況で情報を隠蔽できるだろうか。そうできる可能性は低下しつつある。役人が法律の上に自分の権限を位置づける事態を、人々が黙っていることはなくなると考えている。(陳光誠 )

Z・ブレジンスキーとの対話
――イラン抑止、ロシアの欧米化、 アジア外交の非軍事化を

2012年5月号

ズビグニュー・ブレジンスキー カーター政権大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、サム・ファイスト CNN 副会長

われわれがかつてソビエトを抑止し、現在も北朝鮮を抑止できているとすれば、イランを抑止できないと考える理由はあるだろうか。イランに対しては空爆ではなく外交と抑止路線を重視していく必要がある。・・・一方、ロシアについては、この国で市民社会が台頭していることに注目すべきだろう。帝国としての過去にこだわるプーチンも、市民社会が作り出す圧力の前に、路線を見直さざるを得なくなるはずだ。・・・・東アジアについては、中国との衝突を避けるべきで、アメリカはこの地域の軍事紛争には関与すべきではない。必要なのは、紛争を阻止するために介入することだ。もちろん、今後も維持していくべき軍事的利益も残されているが、こうした路線の前提として日本と中国の和解を促す必要がある。われわれの極東政策における軍事的色彩を弱めていく必要がある。・・・・

CFRインタビュー
中国からみた米大統領選挙

2012年5月号

賈慶国 北京大学国際関係学院副院長

「中国人の多くは、アジアシフトに象徴される米軍の戦略再編をシンボリックなもの、見せかけの行動としかみていない。たしかに250人規模の海兵隊をオーストラリアに送り込んだかもしれないが、現実には国防予算を削減している。・・・・大統領選挙中に中国がとかくやり玉に挙げられることを、中国人は理解している。そして実際には、アメリカが直面している問題のルーツのほとんどは米国内にある。アメリカ経済は多くの問題を抱え込んでおり、これを説明するためのスケープゴートを必要としており、たまたま中国が生け贄にされているだけだ。・・・・新大統領が中国への政策を大きく見直すことはない。すでに両国の関係が非常に密接で、その利益も融合しているからだ。新大統領が中国への政策を見直せば、アメリカの経済と国益に大きなダメージがでる」

中国発サイバー攻撃とサイバーセフトに どう対処するか

2012年4月号

アダム・シーガル    米外交問題評議会シニアフェロー

サイバー攻撃やそれに準じた行動によって、企業と政府は貴重な知的財産や重要な軍事機密を盗み出されている。米政府は最近まで、サイバー攻撃の黒幕を名指しすることをためらってきたが、ほとんどの専門家は、これらの攻撃の多くは中国からのものだと考えている。情報機関はアメリカを対象とする攻撃の一部については、それが誰の仕業によるものかすでに突き止めており、アメリカは特定のコンピューター、個人、金融データを攻撃のターゲットにできる状態にある。すでにサイバー空間における攻撃作戦の実施を民間企業に依頼しているかもしれない。中国政府に外交ルートで対処を求めても、米中ではインターネットへの概念がまったく違うだけに、効果があるとは考えにくい。現状では、中国人ハッカーたちの攻撃のコストを上昇させるとともに、自国のネットワークセキュリティーを向上させるしか手はない。

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