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中国に関する論文

ファーウェイのリスクと魅力
―― アメリカは競争環境を整備せよ

2019年9月号

アダム・シーガル 米外交問題評議会  シニアフェロー(新興技術・国家安全保障担当)

ファーウェイのシステムを導入すれば、情報や安全保障上の安全を確保することはできなくなるとワシントンは主張している。しかし、日本とオーストラリアを別にすれば、ヨーロッパや東南アジアの多くの国が、その経済性ゆえに、ファーウェイシステムの導入に前向きになっている。米中の科学技術領域のエコシステムを分断することを重視するワシントンの姿勢は、結局は、アメリカの技術革新のペースを鈍化させることになる。ファーウェイシステムの導入を止めるように大きな圧力をかけるよりも、アメリカは価格や効率面で競合できる代替策を各国にオファーできるように対策をとり、サイバーセキュリティを強化し、5Gテクノロジーおよびその後継テクノロジーをリードできるように研究開発に投資する必要がある。

CFR Briefing
香港はどこへ向かうのか
―― 軍事介入リスクは高まっている

2019年9月号

ジェローム・コーエン ニューヨーク大学ロースクール教授

香港のデモ隊は、1984年の中英共同宣言、香港基本法が定める「一国二制度」が保証していると彼らが考える政治的自由を行使したいと考えている。これまでのところ北京は、高まる危機への対応を香港政府に任せている。しかし、北京の忍耐が限界に近づきつつあることを示す重要なシグナルもあり、人民解放軍が香港に投入されるリスクは高まっている。北京の政府機関とプロパガンダ部門は、香港のデモを「テロ活動」と呼び、混乱は香港でカラー(民主化)革命を起こそうとするアメリカの「ブラックハンド」が引き起こしていると主張している。香港を軍事的に弾圧すれば、1989年の天安門事件以上に、中国の国際関係にダメージを与えることを北京は理解している。しかし、必要であれば軍事力の行使も辞さないだろう・・・2019年10月1日に中華人民共和国建国70周年を祝った後に、北京は人民解放軍を投入するかもしれない。そうなれば、香港と香港住民だけでなく、中国の世界における立場、国際安全保障にとっても悲劇的な展開となる。

北京の香港ジレンマ
―― 中国が軍を送り込まぬ理由

2019年9月号

ビクトリア・ティンボー・ホイ ノートルダム大学准教授(政治学)

最近の世論調査では、住民の73%が香港政府は逃亡犯条例を正式に撤回すべきだと答え、79%が警察の職権乱用に対する独立調査の実施を支持すると答えている。一方、北京は抑圧を強化していくことを示唆している。これまでのところ、(警察や犯罪組織による暴力と(北京による)威嚇策は、慣れ親しんできた自由を守ろうとする香港住民の決意を逆に高めている。第2の天安門を懸念する専門家もいる。実際、北京は香港の行政長官に軍事的支援を求めさせることもできる。しかし、中国軍が香港のデモ鎮圧に介入する可能性は低い。香港はアジアの主要な金融センターであり、中国とグローバル経済との重要なつながりを提供しているからだ。北京は香港の自治という「体裁」を維持していく強いインセンティブをもっている。

CCPと天安門事件の教訓
―― 中国を変えた政治局秘密会議

2019年9月号

アンドリュー・J・ネイサン コロンビア大学教授

天安門危機で学生たちへの和解的アプローチを提唱した趙紫陽はポストを解任された上、自宅監禁処分とされ、この処分は2005年に彼が死亡するまで続けられた。天安門の弾圧から約2週間後、共産党政治局は「拡大」会議を招集する。保守派が勝利したこの会議で、「中国共産党は内外の敵の共謀によって脅かされている」という認識が確認された。(国内・党内の敵とみなされた)趙紫陽は、報道の自由を認め、学生と対話の場をもち、市民団体の活動規制を緩和すべきだと考えていた。だが、中国政府は別の選択をし、結果的に「改革と統制」の間の永続的な矛盾を抱え込んでしまった。こうして引き起こされる社会的緊張は、習近平が人々の所得レベルを向上させ、高等教育を拡充し、民衆を都市に移住させ、消費を奨励するにつれて、ますます高まっていく。政府にとって、天安門事件はいまも忌まわしい前兆を示す教訓であり続けている。

対中封じ込めは解決策にならない
―― 民主主義の後退と「中国モデル」の拡大?

2019年8月号

ジェシカ・チェン・ワイス コーネル大学准教授(政治学)

中国の対外的な行動と構想がリベラルな価値と秩序を脅かし、しかも、習近平は世界に中国的ソリューションをオファーできると明言している。しかし、民主主義が世界的に後退しているのは事実としても、そのトレンドのなかで北京が果たしている役割は過大評価されている。中国の行動は、内外で自分たちの地位を確固たるものにしたい北京の指導者たちの意向を映し出しているが、「チャイナ・モデル」の輸出はその目的ではない。当然、中国封じ込めは解決策にはならない。アメリカと同盟国が北京の行動に効果的に対処するには、もっと厳密に北京の行動を把握する必要がある。結局のところ、中国に対処していく最善の方法は、民主主義をよりよく機能させることだ。

中国は貿易戦争をどうみているか
―― 自らを追い込んだトランプの強硬策

2019年8月号

アンドリュー・J・ネーサン コロンビア大学教授(政治学)

ナバロとライトハイザーは、「世界経済におけるアメリカの主導的役割を維持するには、中国の経済モデルを抜本的に変化させるしかない」という立場をトランプに受け入れさせ、強硬策に出た。しかし、貿易戦争は、ワシントンが考えるほど大きな痛みを中国に強いていないようだ。2019年に入って最初の5カ月で、中国の対米輸出は4・8%減少したが、同時期に、中国にとって最大の貿易相手である欧州連合(EU)への輸出は14・2%上昇し、EUからの輸入も8・3%上昇している。一方、アメリカの対中輸出は2019年に入って以降の最初の5カ月で26%以上の落ち込みをみせた。農業を含む、数多くの米セクターのダメージはかなりのレベルに達している。有利な状況を手にしているのは中国であり、北京に妥協するつもりはない。貿易戦争、米中経済の切り離しのあるなしに関わらず、中国はアメリカからの経済独立コースを着実に歩み続けている。

人口動態と未来の地政学
―― 同盟国の衰退と新パートナーの模索

2019年7月号

ニコラス・エバースタット アメリカンエンタープライズ研究所 政治経済担当議長

大国への台頭を遂げたものの、深刻な人口動態問題を抱え込みつつある中国、人口動態上の優位をもちながらも、さまざまな問題に足をとられるアメリカ。そして、人口動態上の大きな衰退途上にある日本とヨーロッパ。ここからどのような地政学の未来が導き出されるだろうか。ヨーロッパと日本の出生率は人口置換水準を下回り、生産年齢人口はかなり前から減少し始めている。ヨーロッパと東アジアにおけるアメリカの同盟国は今後数十年で自国の防衛コストを負担する意思も能力も失っていくだろう。一方、その多くがアメリカの同盟国やパートナーになるポテンシャルとポジティブな人口トレンドをもつインドネシア、フィリピン、そしてインドが台頭しつつある。国際秩序の未来が、若く、成長する途上世界における民主国家の立場に左右されることを認識し、ワシントンはグローバル戦略を見直す必要がある。・・・

一帯一路が作り出した混乱
―― 誰も分からない「世紀のプロジェクト」の実像

2019年7月号

ユェン・ユェン・アン ミシガン大学准教授(政治学)

一帯一路(BRI)はうまく進展せず、現地での反発に遭遇している。一部の専門家が言うように、この構想は莫大なローンを相手国に抱え込ませ、中国の言いなりにならざるを得ない状況に陥れる「借金漬け外交」のツール、「略奪的融資」なのか。問題は、北京を含めて、BRIが何であるかを分かっているものが誰もいないことだ。中国政府が構想の定義を示したことは一度もなく、認可されたBRIの参加国リストを発表したこともない。このために民間の企業や投資家がこの曖昧な状況につけ込み、自らのプロジェクトを促進するためにBRIを自称し、これによって混乱が作り出され、反中感情が高まっている部分がある。中国内の機を見るに敏な日和見主義者たちが、この構想を自己顕示欲や立身出世のために利用し、それがグローバルな帰結を引き起こしている。・・・

CFR Events
米中貿易戦争は続く
―― その政治的、経済的意味合い

2019年7月

エドワード・オールデン 米外交問題評議会シニアフェロー(経済・貿易担当)
エリザベス・エコノミー 米外交問題評議会シニアフェロー(中国担当)
マイルス・カーラー 米外交問題評議会シニアフェロー(グローバル統治担当)

最近の大統領のツイートは、米企業が中国を離れて、別の場所、つまり、他のアジア諸国、あるいは国内に工場を移して、アメリカに部品その他を供給させる計画を米政権がもっていることを思わせる。ファーウェイに対する攻撃も、多くの意味で米中経済の切り離しを意図している。少なくとも現状では、大統領は米中切り離し派の立場に耳を傾けている。(E・オールデン)

すべては目的が何であるか、双方が勝利をどのように定義しているか、時間枠をどうみているかに左右される。アメリカ側にも中国側にも何をもって勝利とみなすかについてのコンセンサスはない。実際、より多くの米製品の輸入、より大きな市場アクセス、IT技術の保護で由とする立場から、米中経済の切り離しを求める立場にいたるまで、アメリカ側にはさまざまな意見がある。(E・エコノミー)

中ロパートナーシップの高まる脅威
―― 手遅れになる前に行動を起こせ

2019年6月号

アンドレア・ケンドール=テイラー  新アメリカ安全保障センター  シニアフェロー
デビッド・シュルマン  国際共和研究所 シニアフェロー

中ロのパートナーシップは不自然だし、その見込みはあまりないと考えるアメリカの専門家は多い。しかし、この立場はすでに現実によって淘汰されている。両国は政府のあらゆるレベルでの交流を深め、投資、交通機関、スペースナビゲーション、軍事転用可能なテクノロジー開発などの領域で緊密に連携している。ワシントンに対抗し、グローバル統治を変化させ、リベラルな秩序を支える価値を問題にしていくことでも両国は立場を共有している。問題は、中ロパートナーシップをどうみるかをめぐって、欧米の専門家のコンセンサスがないために、ワシントンの政策決定者が、中ロ関係の有害な作用を阻止できなくなるまで、中ロ関係の本質について議論し続けるリスクを冒していることだ。

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