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中国に関する論文

最悪の事態に備えるべき理由
―― 新型コロナウイルスにどう対処するか

2020年3月号

トム・イングルスビー  ジョンズ・ホプキンス 公衆衛生大学院 ヘルス・セキュリティセンター 所長

ウイルスが人類社会に与える衝撃の規模は、その感染力がどの程度で、感染した人の致死率がどの程度になるかに左右されるが、これらを的確に判断できる状況にはない。封じこめがうまくいかず、グローバルなアウトブレイク(パンデミック)になる可能性もある。これまでのところ、中国の管理措置ではウイルスを抑え込めていないようだし、ウイルスはいずれ変異し、致死率と拡散能力を変化させていく。効果的なワクチンがあれば、感染ペースを鈍化させ、感染症のインパクトを大幅に緩和できるようになるが、ワクチン開発にはかなり時間がかかる。政府と公衆衛生当局は、分かっていることと分かっていないことを区別し、正確に情報を伝え、良い知らせであれ、悪い知らせであれ、情報提供を控えてはならない。各国政府は、新型ウイルスを封じ込められず、深刻で致死性の高い感染症として世界で猛威を振るうかもしれないリスクを認識し、最悪の事態に備えた行動をとる必要がある。

鎖につながれたグローバル化
―― サプライチェーン、ネットワークと経済制裁

2020年2月号

ヘンリー・ファレル  ジョージ・ワシントン大学 教授(政治学) アブラハム・L・ニューマン  ジョージタウン大学 教授(政治学)

デジタルネットワーク、金融フロー、サプライチェーンが世界中に拡大し、アメリカを中心とする各国は、これを、他国を捕獲する蜘蛛の巣とみなすようになった。米国家安全保障局はあらゆる種類のコミュニケーションを傍受し、米財務省は国際金融ネットワークを利用して、無法な国家と金融機関に制裁を課している。一方、ファーウェイが5Gをグローバルレベルで支配すれば、北京もファーウェイをゲートウェイにして世界の通信に侵入し、これまでアメリカが中国に対して試みてきたことを、アメリカに対して実施できるようになる。日本も重要な産業用化学製品の流通を制限することで、韓国のエレクトロニクス産業を狙い撃ちにした。鎖につながれたグローバル化の現実を受け入れ、理解することが、これらのリスクを抑えるために必要不可欠な最初のステップになる。

大国間競争の時代へ
―― アジアとヨーロッパにおける連合の形成を

2020年2月号

エルブリッジ・A・コルビー 前米国防次官補代理 (ヨーロッパおよびユーラシア担当) A・ウェス・ミッチェル 前米国務次官補 (ヨーロッパおよびユーラシア担当)

未来の歴史家は、21世紀初めにワシントンが超大国間の競争に焦点を合わせるようになったことを、もっとも重要な帰結を伴ったストーリーとして解釈することになるはずだ。大国間競争のロジック、それに応じた軍事、経済、外交行動の再編は大きな流れを作り出しており、このトレンドが、今後のアメリカの外交政策を形作っていくことになる。ライバルは台頭する中国そして復讐心に燃えるロシアだ。かつて同様に、アメリカが安全保障を確保し、自由社会としての繁栄を実現していくには、アジアとヨーロッパというもっとも重要な地域で好ましいパワーバランスを確保し、アメリカの社会と経済そして同盟国を、パワフルなライバルとの長期的競争に備えさせる必要がある。

アメリカの危険な対中コンセンサス
―― チャイナスケアを回避せよ

2020年1月号

ファリード・ザカリア CNNファリード・ザカリアGPSホスト

「経済的にも戦略的にも、中国はアメリカの存続にかかわってくる脅威であり、これまでの対中政策はすでに破綻している。ワシントンは中国を封じ込めるためのよりタフな新戦略を必要としている」。これが、民主・共和両党、軍事エスタブリッシュメント、主要メディアをカバーしている新対中コンセンサスだ。しかし、このコンセンサスでは脅威が誇張されている。ソビエトの脅威を誇張したことの帰結がいかに大きかったことを思い出すべきだ。中国が突きつける課題を現状で適切に判断しないことの帰結はさらに大きなものになる。40年にわたる中国へのエンゲージメントを通じてやっと獲得したものを浪費し、中国に対決的政策をとらせ、世界の二大経済大国を経験したことのない規模と範囲の危険な紛争へ向かわせる。この場合、われわれは数十年にわたる不安定化と不安の時代に向き合うことになる。・・・

CFR Briefing
中国のイスラム教徒収容所
――なぜウイグル人を弾圧するのか

2020年1月号

リンジー・メイズランド www.cfr.org アジア担当ライター

中国政府は、100万以上のイスラム教徒を西部の「再教育施設」に拘束していると言われる。・・・人権団体によれば、多くの場合、彼らにとって唯一の罪はイスラム教徒であることだ。・・・収容所内で何が起きているかについての情報は限られているが、(施設および)中国から脱出した人物の証言によると、CCPへの忠誠とイスラム教の放棄を求められ、共産主義の賛美と標準中国語の学習を強制される。中国政府は、ウイグル人が過激化し、分離主義が高まることを恐れており、収容所は中国の領土保全、政府、広く中国市民に対する脅威をなくすための手段だと考えているようだ。「新疆ウイグルでの出来事は国内問題である」と主張する北京は、外部の調査ミッションを受け入れるように求める国際社会の圧力を退けている。多くのイスラム国家も、中国との経済的絆や戦略的関係を優先し、中国内での人権侵害に目をつむっている。

資本主義の衝突
―― 「民衆の資本主義」か「金権エリート資本主義」か

2020年1月号

ブランコ・ミラノヴィッチ ニューヨーク市立大学大学院 ストーンセンター シニアスカラー

グローバル経済の未来を左右するのは、資本主義と他の経済システムの競争ではなく、資本主義内の二つのモデル、つまり、「リベラルで能力主義的資本主義」と「政治的資本主義」間の競争だろう。リベラルな資本主義が「民衆の資本主義」へ進化し、拡大する格差問題にうまく対処しない限り、欧米のシステムは、社会主義ではなく、中国型の政治的資本主義に近づき、金権政治的になっていくだろう。格差を是正し、民衆の資本主義への進化を実現するには、中間層により大きな金融資産の保有を促す税インセンティブを与え、超富裕層の相続税を引き上げ、公教育の質を改善し、選挙キャンペーンを公的資金でカバーできるようにしなければならない。そうしない限り、政治的資本主義同様に、排他的な少数で構成される特権階級の家庭が、将来に向けて永遠にエリートを再生産していくようになる。

グローバル外交の新しい見取り図
―― アメリカの後退と中国の前進

2020年1月号

ボニー・ブレー
豪ローウィー研究所 リサーチフェロー

かつて鄧小平が諭した「韜光養晦(才能を隠して、力を蓄える)」への関心を失ったかのように、北京はグローバルパワーの行使に前向きになるにつれて、外交への投資に力を入れるようになった。一方、ワシントンは内向きになっている。中国の外交ネットワークは広がりだけでなく、奥行きも深くなっている。北京とワシントンは、大使館の数ではほぼ同等だが、領事館の数でみると、アメリカが88なのに対して、中国のそれは96に達している。大使館が政治力を反映するのに対して、領事館の数は経済力を映し出す。中国に限らず、ブレグジットに揺れるアイルランドであれ、地域環境の変化に対応しようとする日本であれ、ある国がどこに外交ネットワークを拡大するかの選択は明確な意図に導かれている。

メコンと東南アジアを脅かす脅威
―― ダムではなく、再生可能エネルギーの整備を

2019年12月号

サム・ギアル  チャタムハウス アソシエートフェロー

メコン川に流水の多くを供給しているヒマラヤの氷河は21世紀末までに温暖化によって消滅するかもしれない。上流の中国は下流のラオスとカンボジアにダム建設を働きかけ、いまやメコン川は中国がその利益とパワーを展開する主要な舞台と化している。しかも、流域諸国政府はメコン川の環境問題にほとんど配慮していない。要するに、流域コミュニティは気候変動の弊害、中国の地政学的野心、政府の環境問題への無関心という逆風にさらされている。流域のよりよい未来はダムによる水力発電ではなく、再生可能エネルギーを整備することで切り開けるはずだ。国内でソーラーパワー産業を育成し、貧困を緩和するという目的から再生可能エネルギーを整備してきた実績持つ中国は、ダム開発ではなく、メコン流域における脱炭素の未来を切り開くための投資を考えるべきではないか。

貿易戦争の本当の目的
―― プラスサムへの思考転換を

2019年11月号

ウェイジャン・シャン PAG最高経営責任者

米経済が力を失ったときに、貿易戦争はターニングポイントを迎えるかもしれないが、基本的に米中競争はトランプの時代を超えて続く。この衝突はシステミックだからだ。米通商代表は関税政策の目的は「ビジネスの仕方を中国が見直すのを促すことにある」と語っている。米戦略の中枢には「政府の民間経済への関与という中国のシステムはアメリカにとって脅威である」という認識が存在する。だが、中国モデルなど存在しない。問題は、むしろ、中国政府が管理する(公的経済)部門の優遇策にある。アメリカの交渉者は、中国側に国有経済部門をもっとそぎ落とすように求めるべきだ。さらに、ゼロサム志向から離れ、貿易戦争によって米中経済が切り離されるリスクを回避することが、両国にとっての最善の利益になる。米中経済を切り離そうとするいかなる試みも、米中双方そして世界にとって壊滅的な結果をもたらすことになる。

封じ込めではなく、米中の共存を目指せ
―― 競争と協調のバランスを

2019年11月号

カート・M・キャンベル  元米国務次官補(東アジア・太平洋担当)
ジェイク・サリバン カーネギー国際平和財団非常勤シニアフェロー

アメリカの対中エンゲージメント路線は、すでに競争戦略に置き換えられている。だがその目的が曖昧なままだ。エンゲージメントでは不可能だったが、競争ならば中国を変えられる。つまり、全面降伏あるいは崩壊をもたらせると、かつてと似たような見込み違いを繰り返す恐れがある。それだけに、米中が危険なエスカレーションの連鎖に陥るのを防ぐ一連の条件を確立して、安定した競争関係の構築を目指す必要がある。封じ込めも、対中グランドバーゲンも現実的な処方箋ではない。一方、「共存」はアメリカの国益を守り、避けようのない緊張が完全な対立に発展するのを防ぐ上では最善の選択肢だ。ワシントンは、軍事、経済、政治、グローバルガバナンスの4領域において、北京との好ましい共存のための条件を特定する必要がある。

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