1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

中国に関する論文

覚醒した中国民衆
―― 激動の時代の幕開け

2023年1月号

イアン・ジョンソン 米外交問題評議会 シニアフェロー(中国担当)

ゼロコロナ政策が刺激した今回の抗議行動を通じて、中国民衆は北京の政策に明確に異を唱えた。普段は(政治に)無関心な人々の間で大きな変化が起きていることは間違いない。習近平は今後5―10年あるいはそれ以上の期間にわたって、市民の不安の高まりだけでなく、危機が促す抗議行動に直面することになるだろう。最高指導者になって以降の10年間、習近平が前向きの改革ではなく、統制策の強化に血道を上げてきたために、いまや普通の人々もこの国が抱える大きな問題に気づき始めている。これが反ゼロコロナデモの意味合いに他ならない。民衆デモは、人々が個人の自由を求めていることだけでなく、中国政治が激動の時代を迎えることを告げている。・・・

習近平の世界
―― イデオローグは何を考えているか

2023年1月号

ケビン・ラッド アジア・ソサエティ会長

習近平は、中国の政治をレーニン主義的な左寄りに、経済をマルクス主義的な左寄りに、そして外交をナショナリスト的な右寄りにシフトさせている。政策と民衆の生活のあらゆる領域で党の影響力を高め、国有企業を強化し、民間部門に新たな制約を加えている。そして、より強硬な外交姿勢をとることで、ナショナリズムを煽り立てている。アメリカとパートナー諸国は、現行の対中戦略を慎重に見直すべきだ。アメリカの戦略立案者は、(相手も自分と同じように考えるだろうとみなす)「ミラー・イメージング」を避け、北京は、ワシントンが考えるように合理的にあるいは国益のために行動すると思い込んではならない。

レッドチャイナの復活
―― 習近平のマルクス主義

2022年12月号

ケビン・ラッド アジア・ソサエティ会長

習近平の中国は、鄧小平路線に象徴される改革開放路線、プラグマティズム路線と完全に決別した。改革時代の終わりの儀式を司ったのが第20回党大会だった。マルクス・レーニン主義の信奉者である習の台頭はイデオロギー的指導者の世界舞台における復活を意味する。共産党による政治・社会の統制時代へ回帰し、中国における少数意見や個人の自由のための空間は小さくなっていくだろう。経済政策も市場経済路線から国家主義的アプローチへ戻され、国際的現状を変化させることを目的とする、ますます強硬な外交・安全保障政策が模索されるようになる。考えるべきは、この計画が成功するのか、それとも、このビジョンに抵抗する政治的反動が内外で引き起こされるかだろう。

対中露二正面作戦に備えよ
―― 新しい世界戦争の本質

2022年12月号

トーマス・G・マンケン 戦略予算評価センター会長

アメリカが東欧と太平洋で二つの戦争に直面すれば、米軍は長期的なコミットメントを強いられる。北京の影響圏が広がっているだけに、対中戦争の舞台が台湾と西太平洋に限定されることはなく、それは、インド洋から米本土までの複数の地域に広がっていくだろう。そのような戦闘で勝利を収めるには、アメリカの国防産業基盤を直ちに拡大・深化させなければならない。部隊をどのように動かすかなど、新しい統合作戦概念も必要になる。(第二次世界大戦期同様に)多数の戦域における戦争という戦略環境のなかで、アメリカの軍事的焦点を、どのタイミングでどこに向かわせるかも考えなければならない。そして、世界レベルでの軍事紛争を勝利に導くには、アメリカにとってその存在が不可欠な同盟諸国との調整と計画をもっと洗練していく必要がある。

ドル高の悪夢から逃れるには
―― 準備通貨を多様化すべき理由

2022年12月号

バリー・アイケングリーン カリフォルニア大学バークレー校 特別教授(経済学・政治学)

ドル高が進むと、中・低所得国のドル建て債務の重荷が増し、持続可能性が脅かされる。原材料価格もドル建てであるため、対ドルで通貨安になると資源輸入国のコストや物価が上昇し、この流れがインフレを誘発する。こうして、ドル高になると多くの国の中央銀行は為替市場に介入し、外貨準備を用いて自国通貨を買い支えようとする。だが売却された米国債の多くは、米金融市場に流れ込み、結局はドル高になる。長期的には、各国の中央銀行が外貨準備を多様化し、ドルからユーロ圏や中国あるいはより小規模な国の通貨へと取引を多様化することが解決策になる。そうすれば、各国は連邦準備制度理事会(FRB)という一国の中央銀行の決定に左右されにくくなる。

追い込まれた中国経済
―― もはや低成長を受け入れるしかない

2022年11月号

マイケル・ペティス 北京大学 光華管理学院 教授

中国にとって、投資率が高いことは悪いことではなかった。かつて必要とされていたのはまさしく投資主導型の経済開発モデルだった。問題は不動産とインフラ部門での非生産的投資の時代があまりに長く続いたことだ。15年ほど前から、債務が国内総生産(GDP)成長率を上回るペースで増加し始め、肥大化していった。しかもいまや不動産バブルははじけ、新しい経済モデルへ移行するしかない状況にある。中国が消費(内需)主導型の成長へシフトできるとは考えにくい。投資を急速に減らして成長率の大幅な低下を受け入れるか、問題を先送りし、債務の急増によって路線維持が困難になるまで、現在の投資主導型路線を続けるしかないだろう。だが最終的には、経済成長は急激に減速し、その減速の仕方は、中国、中国共産党、そして世界経済に深刻な影響を与えることになるはずだ。・・・

帝国の衰退と歴史の教訓
―― 米中ロの衰退と混乱に備えよ

2022年11月号

ロバート・D・カプラン 米外交政策研究所 地政学担当チェアー

米中ロという大国は、一般に考えられる以上に脆弱な存在なのかもしれない。政策破綻を回避するために必要な「悪いシナリオに備える姿勢」、つまり、悲劇を回避するために未来を悲観的に考える能力が北京、モスクワ、ワシントンでは不十分などころか、どこにもみあたらない。実際、帝国や大国はこうして自滅的な戦争を決断し、それによって歴史を左右する大きな節目が作り出されてきた。帝国や大国が突然終わりの時を迎えると、混乱と不安定化が続く。ロシアがこの運命を避けるのは、おそらくもう手遅れだろう。中国はその運命を切り抜けられるかもしれないが、容易ではないはずだ。アメリカも、先行きを悲観して現実的なアプローチに転換する時期が遅れれば、状況はさらに悪化していく。

習近平の本質
―― 奢りとパラノイアの政治

2022年11月号

蔡霞 元中国共産党中央党校教授

習近平は中国の政治派閥のすべてから反発を買っている。彼が伝統的な権力分配構造を破壊したことに憤慨し、その「無謀な政策が党の将来を危うくしている」と考えているエリートは少なくない。民間企業を締め上げ、政策の細部にまで介入して民衆を苦しめる統治スタイルへの社会の反発も大きい。いまや、天安門事件以降初めて、中国の最高指導者は政府内部の反対意見だけでなく、激しい民衆の反発と社会騒乱の現実的リスクに直面している。今後、統治スタイルがさらに極端になれば、彼がすでに引き起こしている内紛は激化し、反発は大きくなる。習近平が脅威を感じ、大胆な行動に出れば、ますます反発が大きくなるという悪循環が生じるかもしれない。・・・

台湾防衛のための軍事能力強化を
―― 抑止力強化を急げ

2022年10月号

ミシェル・フロノイ 元米国防次官(政策担当)
マイケル・A・ブラウン 元米国防省ディレクター (防衛イノベーションユニット)

中国軍の新戦力の多くはオンラインで大規模に結ばれており、米軍の作戦上の課題をひどく複雑にしている。一方、台湾有事の際に中国軍に対抗するためのもっとも有望な米軍の能力の多くは、2030年代まで整備されず、戦力に完全に統合されることはない。このため、2024年から2027年にかけて、台湾防衛が脆弱化する危険があり、習近平はこの段階で軍事的な台湾攻略が成功する可能性がもっとも高いと判断するかもしれない。特に、台湾に対する政治的強制策や経済的封鎖策などの優先策が失敗していれば、そう考えるだろう。米中がともに相当量の核兵器を保有していることを考えると、先制的に紛争を抑止することがゲームの要諦だろう。アメリカは台湾の自衛能力の近代化と強化を支援するとともに、台湾への武力行使を抑止する米軍の能力を強化しなければならない。・・・

低成長と中国経済の課題
―― 内需主導型成長への転換は実現するか

2022年10月号

ブラッド・セッツァー 米外交問題評議会シニアフェロー

高い貯蓄率は借金頼みの経済成長を促すことで、中国の金融システムが現在抱える問題を生み出してきた。貯蓄が多いということは、消費が弱い(消費に回す資金が乏しい)ことを意味するからだ。このため過去20年間、中国経済の成長は内需ではなく、輸出または定期的な投資拡大によって支えられてきた。だが不動産デベロッパーもいまや債務問題に苦しんでいる。しかも、地方政府の歳入は、デベロッパーへの土地売却に大きく依存してきたために、現在の不動産不況で大きく圧迫されている。地方政府が誘導する投資ではなく、個人消費に牽引された、より健全な経済を築くには、政府の財政措置を拡大しなければならない。北京は、国内債務が拡大して投資主導型経済成長の時代が終焉し、歴史的な高度成長は過去のものになったという困難な現実を受け入れる必要がある。

Page Top