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アジアに関する論文

アメリカが対テロ戦争に気を奪われるなか、中国は経済発展による経済的影響力だけでなく、上海協力機構(SCO)などを通じた政治的影響力も拡大させている。しかも、6者協議に北朝鮮を連れ戻して、合意に持ち込んだことで、中国の政治・経済的台頭はいまや現実の東アジア秩序に影響を与えつつある。ワシントンでは、日米関係の強化を軸にアジアの民主国家連合構想が浮上しているが、アジアで孤立している日本と手を組むことが賢明なのか、疑問を表明する専門家もいる。しかも、日本が重視する拉致問題への路線をめぐって、日米間にさざ波が立ち始めている部分もある。日米中の勢力均衡を模索しつつ、多国間同盟関係の構築を唱える専門家も出てきている。それがいかなるものであれ、「今後の東アジアでの枠組みは、豊かながらも、おそらくは非民主的な中国という現実に直面していかなければならない」とみる専門家は多い。

中印の台頭と新・新世界秩序

2007年4月号

ダニエル・W・ドレズナー/タフツ大学フレッチャー・スクール助教授

すでに中国とインドの台頭によって、国際政治秩序は多極化へとシフトしつつある。ここで多国間機構の改革を進めて、こうした新興大国のパワーを枠組み内にうまく取り込んでいかない限り、多国間レジームの今後はますます不確定要因で覆い尽くされるようになる。多国間機構が妥当性を失っているのは、力と権限の不均衡、つまり、各国のパワーの実態に即した意思決定に関する権限と影響力が機構内で認められていないからだ。いかなる反対があっても、台頭するパワーを反映できるように多国間機構の改革を進めなければならない。そうしない限り、新興大国は独自の道を歩み始め、アメリカの利益と正面から衝突するような多国間機構を立ち上げようとするかもしれず、そこでわれわれが直面するのは不快な未来にほかならない。

CFRインタビュー
なぜアメリカは北朝鮮に妥協したのか

2007年2月号

ゲリー・サモア 米外交問題評議会(CFR) 上席副会長・研究部長

「ホワイトハウスにしてみれば、6者協議における交渉が進展しなければ、北朝鮮が核実験を再度試みる危険があることを憂慮したと思われる。そのような事態になれば、中東、特にイラクで数多くの問題に直面するなか、東アジアでも危機が誘発され、対応を余儀なくされる」。2月の6者協議での合意の背景をこう分析するゲリー・サモアは、核兵器のことを国の存続を保証する切り札とみなす平壌には核を解体するつもりが全くない以上、外交で状況を安定化させ、東アジアで危機を誘発するのを回避するには、今回のような曖昧で、核心部分を先送りした合意で手を打つしかなかったとみる。サモアは、今回の合意を、「賢明な路線」とブッシュ政権を評価しつつも、妥協と見返りに関する連鎖の詳細が合意で定義されていない以上、今後、非常に難しい問題を交渉していかなければならなくなると語った。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

「ブッシュ政権は、平壌がそう望むのなら、北朝鮮を改革・開放化へと向かわせるような道筋を築き、そのうえで、朝鮮半島の安全保障問題、ひいては北東アジアでの大国間関係のための枠組みをつくろうと、中国、日本、韓国、ロシアの4カ国との協調路線を試みている」。2月の6者協議での合意は、「こうした壮大な計画の序章にすぎない」と語るロバート・ゼーリック前国務副長官は、北朝鮮が開放路線を選択するかどうかは、はっきりとしないとしながらも、今回アメリカが描いた道筋は「金正日が改革と経済開放路線を推進していけば、北朝鮮がさまざまな機会を手にできるように設計されており」、これに北朝鮮への安全の保証、和平条約の締結を組み合わせれば、「改革・開放路線をとれば、体制の崩壊につながる」とみる平壌の危機感を緩和させて、北朝鮮の核問題に対処していく広範な枠組みにできると指摘した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRミーティング
次期台湾総統候補
呂秀蓮台湾副総統が語る台湾と中国

2007年1月号

スピーカー 呂秀蓮(アネッタ・ルー)  台湾副総統
司会 ジェローム・A・コーエン  米外交問題評議会(CFR) アジア担当非常勤シニア・フェロー

台湾と中国は別の存在であり、ともに独立している以上、国際社会は、もはや時代にそぐわず、とかく誤解をまねくだけの「一つの中国」政策を再検証する必要がある。こうした再検証作業を行って初めて、海峡間論争の効果的な解決策を見いだすことができる。われわれは、台湾の歴史を検証するにつけて、台湾の運命は中国によってではなく、世界情勢によって左右されていると確信している。北京にしてみれば、中国を台湾に再編するのは必然なのかもしれない。しかし、グローバルな視点でみれば、台湾が中国に帰属しないこと、台湾はむしろ世界の一部であることがわかるはずだ。(アネッタ・ルー)

感情の衝突
―― 恐れ、屈辱、希望の文化と新世界秩序

2007年1月号

ドミニク・モイジ フランス国際関係研究所上席顧問

西洋世界は「恐れの文化」に揺れ、アラブ・イスラム世界は「屈辱の文化」にとらわれ、アジア地域の多くは「希望の文化」で覆われている。アメリカとヨーロッパは、イスラム過激派テロを前に恐れの文化を共有しながらも分裂し、一方、イスラム世界の屈辱の文化は、イスラム過激派の思想を中心に西洋に対する「憎しみの文化」へと姿を変えつつある。かたや、さまざまな問題を抱えているとはいえ、中国、インドを中心とするアジア地域の指導者と民衆は、西洋とイスラムの「感情の衝突」をよそに、今後に向けた期待を持っており、経済成長が続く限り、アジアでは希望の文化が維持されるだろう。恐れの文化、屈辱の文化、そして希望の文化のダイナミクスと相互作用が、今後長期的に世界を形づくっていくことになるだろう。

CFRインタビュー
核実験は政治的デモンストレーションだ

2006年11月号

ゲリー・サモア 米外交問題評議会副会長

北朝鮮が(交渉から離脱してミサイル実験・核実験を強行するという)より攻撃的な路線をとることを決めたのは、アメリカが2005年秋に発動したマカオの銀行の北朝鮮関連口座に関する金融制裁措置が背景にある。「核実験を行い、自分たちが核武装国家であることをはっきり知らしめれば、金融制裁を科しているアメリカを追い込めると考えたのだろう」。北朝鮮が核実験に踏み切った動機をこう分析するサモアは、今回の安保理の経済制裁決議を評価しつつも、決議の内容は「北朝鮮が生き延びていくために必要な外国からの援助や取引に直接的な影響を与えるようなものではなく、むしろ、北朝鮮は、中国と韓国が、体制の存続を脅かすような制裁から守ってくれることを依然として期待している」とコメントした。

CFRインタビュー
いまこそ平壌を外交路線に引き戻せ

2006年11月号

アラン・D・ロンバーグ ヘンリー・スチムソン・センター シニアアソシエート

「交渉路線に門戸を開いている」と表明しつつも、交渉を続けてもどうにもならないとブッシュ政権は考えており、当面、北朝鮮を締め上げるしかないとみている。北朝鮮も交渉に戻ることに利益があるとは考えておらず、核実験に踏み切ったのはこうした情勢判断をしたからかもしれない。また、核問題よりも、北朝鮮情勢の流動化を回避することを戦略的観点から重視している中国は、韓国同様にアメリカの強硬路線と歩調を合わせるとは思わない。こうした環境にある以上、2005年9月19日の原則合意を先に進めるために、アメリカが北朝鮮を交渉の場に引き戻す努力をするのかどうかで今後は左右されるとロンバーグはみる。2005年の合意は関係勢力のすべてが重視する適切な方向性を示しており、そのなかには、北朝鮮の非核化も含まれている、と。

核拡散後の世界

2006年10月号

スティーブン・ピーター・ローゼン ハーバード大学・ジョン・オリン戦略研究所所長

イランが弾道ミサイルで中東全域を射程に収め、アメリカやヨーロッパに対しても(船舶その他の方法で)核攻撃を行う力を得る。サウジアラビアとトルコも、恐怖、あるいはライバル意識に突き動かされて、核武装する。アジアでも、中国、インド、北朝鮮、パキスタン、ロシアという核保有国に加えて、日本と台湾がアジアの核保有国の仲間入りをする可能性もある。仮に現実がこのように推移するとしたら、この新しい世界における戦略的な流れはどのようなものになるだろうか。核大国の一方で、数多くの核小国が共存するようになれば、冷戦期の抑止理論、軍備管理論は陳腐化する。

米印関係は反中同盟の布石なのか
――台頭するインドとバランス・オブ・パワー

2006年9月号

C・ラジャ・モハン/インド国家安全保障諮問委員会メンバー

インドは、米中間の中立を維持しようとするだろうか、それとも現在のインドの大戦略に即してアメリカの側につくだろうか。米印原子力合意は、この設問への最終的な答えを左右しようとするアメリカの試みだった。インドはアジアやインド洋地域で、中国の2番手に甘んじることだけは避けたいと考えているし、むしろ遠く離れた超大国との協調に安定的な利益を見いだしている。ワシントンとの安全保障関係の強化を望むのは、こうした構造的な理由がある。だが、利益を共有しているからといって、それだけで同盟関係が成立するわけではない。両国間のパワーに格差があり、政治的協調の歴史がなく、より踏み込んだ米印の協調に抵抗する官僚が両国に存在する以上、米印の戦略的な協調関係の進化のペースと、規模の広がりは段階的なものになる。

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